eぶらあぼ 2018.1月号
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42左:阪田知樹 右:上野耕平〈アフタヌーンコンサート〉2017/18 シリーズ 若き才能のきらめき Vol.3上野耕平(サクソフォン) × 阪田知樹(ピアノ) デュオ・リサイタル1/11(木)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/上野耕平(サクソフォン)& 阪田知樹(ピアノ)精鋭2人が丁々発止の競演!取材・文:高坂はる香Interview 「サクソフォンは、管楽器の中で一番機動性が高いんです。低音で動きが遅くなることもありませんし、特殊奏法もある。開発されたのが他の多くの楽器より後なので、現代のピアノとも充分渡り合える豊かな音量を持っています。ほとんど問題が見当たらない、すばらしい楽器なんです!」 そう熱く語るのは、ピアノの阪田知樹のほうだ。サクソフォンの上野耕平は、その横で「よくわかってらっしゃる!」と嬉しそうにしている。 二人とも東京藝大出身だが、学年が違うため接点はなく、意外にも今回が初共演。しかし、そうとは思えないほどすでに意気投合している。 演目は、それぞれのソロによるバッハや、上野が大好きな曲だというドビュッシーの「アルト・サクソフォンのためのラプソディ」、シュルホフの「ホット・ソナタ」など。上野「この曲目、阪田君から提案してくれたんです。ピアニストがこんなにサクソフォンの曲や楽器の良さをよく知っているなんて、びっくりしました」 というのも、もともとサクソフォンという楽器に興味があった阪田は、今回上野のために「アルト・サクソフォンとピアノのためのソナチネ」を作曲。この公演で世界初演することになるので、楽器について研究を重ねているのだ。阪田「知られざる名曲を探すことや、何かを調べることが好きなんです。子どもの頃先生に“人間百科事典”と言われたくらいで(笑)。今回、サクソフォンの曲を書いてはどうかと提案されたとき、留学先のハノーファーで散歩中にインスピレーションが湧いたので、これは書けそうだとスケッチをためていきました。作品には、上野君の技巧が生かされるモダンなテクニックやジャズの要素も取り入れています。また、実際彼の演奏を聴き、サクソフォンでこんな風に歌える人がいるのかと思ったので、そこを存分に聴かせられる曲にしたいと思いました」 そして後半には、両者の超絶技巧を聴ける曲も。上野「『熊蜂の飛行』は、網守将平さんが僕のためにアレンジしてくれた作品です。結構大変な曲なのですが、ぜひ阪田君とチャレンジしてみたいと思って。ぱっと合わせられる曲だけやっても、つまらないですから!」阪田「上野君がけっこう攻めた選曲をしていたので、それじゃあと思って、僕もシフラ編の『ハンガリー舞曲第5番』を入れました(ピアノ・ソロ)。選曲の時点から、丁々発止のやり取りが始まっています(笑)」 とにかく、出演者自身のワクワクぶりがすごい。「予定調和はすぐ飽きる。ライヴ感を大切にしたい。普通じゃない、濃い演奏会になりますから、絶対に聴きに来てください」(上野)とのこと。平日午後、刺激的なひとときが訪れそうだ。PIANO EPOCH 佐藤祐介 新ピアノリサイタルシリーズVol.3 バッハ一族とBACHへのオマージュ“バッハ家”の遺産とトリビュート作品と文:笹田和人 大胆かつ繊細、時空を超えた先鋭的なアプローチを続けるピアノの佐藤祐介。リサイタル・シリーズ「PIANO EPOCH」の第3弾で、バッハ一族の作品に、現代の邦人作曲家3人を含めた、後世の作曲家によるオマージュを交錯させ、「現在(いま)の音」としての再構築を目指す。15歳でバッハの「フーガの技法」などを取り上げたステージでデビュー、演奏のみならず、作曲分野でも活躍する佐藤。 今回は、「フーガの技法」から「コントラプンクトゥス第14番」を幕開けに据え、長男フリーデマンの「幻想曲ホ短1/9(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 カメラータ・トウキョウ03-5790-5560 http://www.camerata.co.jp/調」、二男エマヌエルの「ヴィルテンベルク・ソナタ第3番」、末息子クリスティアンの「ソナタ ハ短調」と、バッハ一族の作品を配した。ここへ、リストとオネゲル、イタリアのアルフレード・カセッラによる3つの「BACHの名による」作品、さらには伊藤巧真と窪田隆二への委嘱作の世界初演、湯浅譲二の佳品を交えて、多彩な響きの世界を現出。現代に生きる存在として「バッハ一族」を昇華する、知的で野心的な試みだ。

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