eぶらあぼ 2018.1月号
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40第697回 東京定期演奏会1/26(金)19:00、1/27(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団喜寿にちなむコバケンの重量級プログラム文:江藤光紀 炎のマエストロこと小林研一郎が2017年4月に77歳、喜寿を迎えた。ハンガリー、オランダ、チェコなどの楽団ポストを歴任し欧州でも長いキャリアを誇るが、首都圏の音楽愛好家にとってコバケンは、振り返ると常にそこにいて、いつも熱い演奏を繰り広げる指揮者であったように思う。うんうんうなりながらの気迫の指揮が、深々とした節回しを導く。堂々とした彼らしい芸風にスカっとくるファンも多いはずで、東京に世界のトップ指揮者が続々と進出し若手の台頭も激しいこの時代に、依然としてバリバリの現役で振り続けている事実が、根強い支持を裏書きしている。どこか昭和の香りを湛えた音楽の、ホームグラウンドにいるような安心感は、もはや世代を越えた共通体験と言ってよい。 音楽監督や常任指揮者として長年にわたり共演を重ねてきた日本フィルが、1月定期でこの桂冠名誉指揮者の喜寿をことほぐ。曲目は77歳にちなみブルックナー「交響曲第7番」だ。息の長い旋律を積み上げながら神の世界に至るこの作曲家の創造にあって、とりわけ大自然の雄大さを持つ曲だが、旧知のオケとともにコバケン色に染め上げていくプロセスを愉しみたい。 前半には美貌のヴァイオリニスト、アレクサンドラ・スムが登場し、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」を披露。モスクワ生まれ、オーストリアで学び、パリを拠点に活躍する国際派で、音楽を通じた社会活動にも積極的だ。来日も多く、マエストロとはすでに強い信頼関係で結ばれているという。近年は音楽的にもますます充実し、今後さらに人気が出そうな才媛だ。飯森範親(指揮) 東京交響楽団才気が漲る近代管弦楽法の精髄文:柴田克彦 東京交響楽団は、音楽監督ジョナサン・ノットのみならず、桂冠指揮者の秋山和慶やユベール・スダーンなど、楽団を熟知した名匠が継続的に定期演奏会を振っている点が、良き特徴をなしている。1994年から東響に関わる正指揮者の飯森範親もその一人。彼は、山響のモーツァルト、日本センチュリー響のハイドンの各シリーズなど、シェフを務める楽団を独自の視点で活性化させているが、東響では、絶賛を博した「ローマ三部作」などロマン派以降の華麗な作品を主軸に活動し、新味を加えている。 そこで1月に聴かせるのは、プロコフィエフとラヴェルの管弦楽法が冴えた作品。まずハイドンを模したプロコフィエフの交響曲第1番「古典交響曲」では、古典派演奏で耳目を集める飯森の料理法が興味深い。メインのムソルグスキー「展覧会の絵」(ラヴェル編)は、言わずと知れた管弦楽の醍醐味満載の名曲。飯森の的確なタクトと、充実顕著な管楽器陣をはじめとする東響第657回 定期演奏会1/12(金)19:00 サントリーホール第133回 名曲全集1/13(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/第105回 新潟定期演奏会1/14(日)17:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館コンサートホール問 りゅーとぴあ025-224-5521 http://www.ryutopia.or.jp/の妙技に浸れれば十分だろう。 もう1つはプロコフィエフ20歳過ぎの野心作、ピアノ協奏曲第1番。明快さとモダニズムが同居した面白い音楽ながら、生演奏の機会が少なく、これだけでも足を運ぶ価値がある。しかもソリストはアレクサンダー・ガヴリリュクだ。2000年浜松、05年ルービンシュタイン両コンクールで優勝した彼は、超絶技巧とモダン性が持ち味。アシュケナージ指揮のプロコフィアレクサンドラ・スム ©Béatrice Cruveiller小林研一郎 ©山口 敦エフ協奏曲シリーズの第1番の録音でも鮮烈な快奏を披露しているので期待値は高い。 17年1月の「アレクサンドル・ネフスキー」に続く、飯森のプロコフィエフ(&ロシアもの)を、こぞって堪能しよう。飯森範親 ©山岸 伸アレクサンダー・ガヴリリュク ©Mika Bovan

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