eぶらあぼ 2018.1月号
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2017年8月に行われた第15回東京音楽コンクールの熱戦を勝ち抜き、見事優勝の栄冠に輝いた新進演奏家4人による「優勝者コンサート」が新春の東京文化会館で行われる。ピアノ・弦楽・木管部門それぞれの優勝者たちが円光寺雅彦指揮の新日本フィルをバックに得意の協奏曲を披露。今後開花するであろう、フレッシュな才能をいち早く聴くことができる特別な公演だ。新しい才能が開花する瞬間を体験!第15回 東京音楽コンクール 優勝者コンサート 「東京音楽コンクール」は、東京文化会館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、読売新聞社、花王株式会社、東京都の四者が主催し、芸術家としての自立を目指す可能性に富んだ新人音楽家を発掘し、育成・支援を行うことを目的として実施するコンクール。東京文化会館は1961年の開館当初より若手音楽家の育成に特に力を入れており、同コンクールの前身となる「東京文化会館新進音楽家デビューコンサート」を、開館4年後の1965年から2002年まで開催。03年から「東京音楽コンクール」がスタート。現在活躍している音楽家の多くが、この「デビューコンサート」に出演している。 本選では、オーケストラと共演する他、聴衆の投票により、最も多い票を得た出場者に「聴衆賞」が贈られる。また、現役演奏家を中心とした審査体制、入賞後の出演機会の提供やリサイタル支援など、手厚いサポート体制を用意している点で、他に類を見ない日本を代表するコンクールだ。 毎年3部門、先着順による定員制で第1次予選は小ホール(非公開審査)、第2次予選は小ホール、本選はオーケストラ伴奏により大ホールで開催されている。開催する3部門の内訳は、「ピアノ部門」「弦楽部門」「声楽部門」を3年に2回、「木管部門」「金管部門」を2年に1回開催。以前は音源審査を行っていたが、2015年より演奏審査のみが実施されている。 同コンクールには、以下のように現在国内外で活躍中の音楽家が多数入賞している。◎北村朋幹(ピアノ/第3回第1位)2006年第6回浜松国際ピアノコンクール第3位、2008年シドニー国際ピアノコンクール第5位◎成田達輝(ヴァイオリン/第5回第1位)2010年ロン=ティボー国際コンクール第2位、2012年エリーザベト王妃国際音楽コンクール第2位◎上野由恵(フルート/第2回第1位)2007年第76回日本音楽コンクール第1位◎市原 愛(ソプラノ/第6回第3位)◎山下牧子(メゾソプラノ/第1回第1位)第14回コンクール審査員◎村上敏明(テノール/第3回第3位) 他「東京音楽コンクール」とは コンサートの出演者は、ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ(クラリネット/木管部門第1位及び聴衆賞)、荒井里桜(ヴァイオリン/弦楽部門第1位及び聴衆賞)、アレッサンドロ・ベヴェラリ(クラリネット/木管部門第1位)、ノ・ヒソン(ピアノ部門第1位及び聴衆賞)。 第15回の応募者数はピアノ・弦楽・木管部門あわせて479人。そのうち本選に出場できたのは、わずか14人。本選は8月下旬に3日間にわたってプロ・オーケストラをバックにした協奏曲の演奏で審査され、上記の4名が有終の美を飾った。 ヴァイオリンの荒井里桜について弦楽部門審査員長・大谷康子は「深い技術を備え、美しく端正な演奏で聴衆の心を掴んだ。ヴァイオリニストとして活躍していくための素質がある」と評した。 ピアノのノ・ヒソンについてピアノ部門審査員長・野平一郎は「どこまでも広い表現のパレット。彼の指先から繰り出されるすべての意図が、しっかり音楽とはまっている抜群の安定感」と太鼓判を押す。 クラリネットの二人について木管部門審査員長・宮本文昭は「表現のレンジが広大で、同じ楽譜であるにもかかわらず世界観、立ち位置、話す内容が全く違う。これぞクラシックの醍醐味! 1位が2名で本当に喜ばしく、この決定がコンクールの誇りです」とコメントを寄せている。 コンクールで審査員の高評価と聴衆の支持を得た“強者”4人がこの晴れ舞台で個々の音楽性を存分に発揮してくれるはずだ。審査員が見た4人の魅力第15回東京音楽コンクール本選のノ・ヒソン ©堀田力丸
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