eぶらあぼ 2018.1月号
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162CDSACDCDCD故 入野義朗生誕95年記念コンサート 12音技法のマイルストーンバルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番 他/郷古 廉アマリッリ麗し/福井 敬&アントネッロ曼珠沙華幻想/和谷泰やすお扶入野義朗:変奏曲、管楽五重奏のためのパルティータ、ヴァイオリンとピアノのための音楽、凍る庭、三つの即興曲、四大田中一結 佐々木絵理(以上ピアノ) 鷹羽弘晃(指揮) 下村祐輔(フルート) 鈴木かなで(オーボエ) 前山佑太(クラリネット) 河野陽子(ホルン) 木村卓巳(ファゴット) 中澤沙央里(ヴァイオリン) 他バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番郷古 廉(ヴァイオリン)加藤洋之(ピアノ)フレスコバルディ:こんなふうに僕を軽蔑して/カッチーニ:アマリッリ、美しいひと/モンテヴェルディ:天上の薔薇~音楽寓話劇《オルフェオ》より、胸のうちにある苦しみが/サンチェス:きみの自由を奪った男、悲しみの聖母/ロータ:若者とは? 他福井 敬(テノール)アントネッロ【濱田芳通(リコーダー/コルネット) 石川かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 西山まりえ(チェンバロ/バロック・ハープ)】山田耕筰(十河陽一編):曼珠沙華幻想、「あわて床屋」変奏曲、ペチカ/滝 廉太郎(野平多美編):荒城の月/普久原恒勇(荒尾岳児編):芭蕉布/岡野貞一(荒尾岳児編):故郷 他和谷泰扶(ハーモニカ)荒尾岳児(ピアノ)菊地知也(チェロ)収録:2016年11月、東京オペラシティ リサイタルホール(ライヴ)コジマ録音ALCD-9176 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCL-00632 ¥3200+税OMFKCD-2058 ¥2780+税ナミ・レコードWWCC-7851 ¥2500+税12音技法というと抽象的で無味無臭と思っている人も多いだろうが、日本におけるこの技法の開拓者・入野義朗は、楽器や編成ごとにバラエティー豊かな楽想を引き出している。管楽五重奏ではまろみのあるユーモラスな響きを、一転してヴァイオリンとピアノではシャープで厳しい造形を、混声合唱では言葉の意味とシラブル、そして音の論理性の絡み合いを、と各曲のコンセプトが明快。フルート独奏では息のコントロールが陰影を加え、続く邦楽四重奏曲へと一つの流れを作る。戦前に書かれたピアノのための習作を含め、これまであまり知られてこなかった入野の創作の全体像をコンパクトかつ的確に伝える。(江藤光紀)郷古廉、オクタヴィアでのバッハ&バルトーク・アルバム第3弾(完結篇)。第1弾から約3年後の録音だが、その演奏には明確に飛躍が見て取れる。難曲バルトークをこれほど美しい音で弾き切った演奏は稀ではないか。勿論それだけではなく第2楽章での楽想の掘り下げと深遠さも十分で、この曲の1つのリファレンス的演奏と言っても過言ではない。対するバッハは基本的にカッチリとした楷書的演奏で遊びが少ないが、それゆえソナタ第3番のフーガでは言葉の最良の意味で“模範的”な演奏を聴かせてくれる。そして、ここでも音の美しさは惚れ惚れするばかり。(藤原 聡)日本を代表するテノールの福井敬が、先鋭的かつ刺激的な活動が光る古楽の精鋭集団「アントネッロ」とコラボレート、イタリア初期バロックの名旋律に対峙した。持ち味の明瞭な美声は、言葉の韻律や楽想と絶妙にマッチする一方、ロマン派とは異なる拍節感覚やアーティキュレーションなど初期バロック特有の歌い回しも、きっちりとクリア。時に推進力に、時に豊かな情感に満ちた、器楽の変幻自在な妙技も後押しし、名手が“新境地”を拓いた。締め括りに、映画『ロミオとジュリエット』の主題歌として知られるロータ「若者とは?」が、違和感なく添えられるのも洒落ている。(寺西 肇)山田耕筰を中心に長きにわたって親しまれてきた日本の名旋律を、ハーモニカとピアノ、時にはチェロを交えて近年編曲し直した17曲を収録。大正・昭和の下町の郷愁漂うこの楽器の特性を活かしたストレートなアレンジもいいけれど、モダンな和声で色付けしたり、変奏曲にしてみたり、ジャズのテイストに塗り替えたり、技巧を凝らして装飾してみたりと、アレンジャーによってアプローチも千変万化で飽きがこない。和谷のハーモニカには温かみがあり、また透きとおった高音域やおしゃれなベンド、分散和音で見せる滑らかなレガートなど、さりげないけれど高度なテクニックを随所で発揮している。(江藤光紀)

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