eぶらあぼ 2018.1月号
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158CDCDSACDSACD4つの街~チェロ・ソナタ集/ファジル・サイ&ニコラ・アルトシュテット近藤 譲:合唱作品集/西川竜太&混声合唱団 空くう、ヴォクスマーナ、女声合唱団 暁アダージョ パイプオルガンで聴く名曲/紙屋信義ザ・ロマンティック/伊藤悠貴サイ:チェロ・ソナタ「4つの街」/ドビュッシー:同 ニ短調/ショスタコーヴィチ:同 ニ短調/ヤナーチェク:おとぎ話、プレストニコラ・アルトシュテット(チェロ)ファジル・サイ(ピアノ)近藤 譲:二つの小品、雪が降ってゐる、サッフォーの三つの詩片、薔薇の下のモテット、女声合唱のための歌二篇、嗟嘆(といき)西川竜太(指揮)混声合唱団 空、ヴォクスマーナ、女声合唱団 暁多久潤一朗(フルート) 他アルビノーニ:アダージョ/J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ムソルグスキー:プロムナード~「展覧会の絵」より/ワーグナー:巡礼の合唱/ホルスト:ジュピター~組曲「惑星」より/バーバー:弦楽のためのアダージョ 他紙屋信義(オルガン)ラフマニノフ(伊藤悠貴編):夜のしじま/ディーリアス:ロマンス/ブリッジ:春の歌/リル:記憶/エルガー:愛の挨拶/アイアランド(伊藤悠貴編):聖なる少年/ポッパー:ハンガリー狂詩曲 他伊藤悠貴(チェロ)ダニエル・キング・スミス ジェイムズ・リル(以上ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25945 ¥3000+税コジマ録音ALCD-115 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-4021 ¥3000+税アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1045 ¥3000+税破天荒でボーダーレス、鮮烈な演奏で若くして“鬼才”と称されたピアノのサイ。そして、やはり先鋭的な活動で、チェロの未来を担うと目されるアルトシュテット。2人の天才の、幸せな出逢いだ。世界初録音となるサイの自作に、ドビュッシーとショスタコーヴィチの名ソナタ、ヤナーチェクの個性的な楽曲を配する構成。全ての楽想やフレーズが、いったん2人の血肉となり、音として昇華される。特にサイが故郷アンカラをはじめ、音で描く「4つの街」は、ジャズのグルーヴ感や街のノイズまで採り込み、彼の人生それ自体を投影。強烈な余韻は、続く近現代の佳品とも、不思議と共鳴する。(寺西 肇)幽玄な響き、変幻自在な声の饗宴。近藤譲の合唱曲6作品のすぐれた録音が登場した。合唱指揮では今や日本を代表する存在である西川竜太率いる3つの団体、空、ヴォクスマーナ、暁は驚くべきアンサンブルの精度を誇り、「線の音楽」を標榜する近藤の知的かつ精緻な構造を練り上げられた歌唱で披露してくれる。混声合唱のための「サッフォーの三つの詩片」は、上田敏の訳詩、フルート(多久潤一朗)、そしてタムタムの打音とがあいまって独特な抒情味をかもしだしている。「薔薇の下のモテット」では、12人の声が織りなす細やかな線の遊びを堪能したい。 (伊藤制子)主に日本とドイツで演奏と教育に熱意を傾けるオルガンの名奏者、紙屋信義による、マイスター・ミュージックでの3枚目のアルバム。先の2枚はJ.S.バッハ中心にドイツのオリジナル作品集だったが、当盤は一転、楽器の魅力を改めて知ってほしいという思いから、バロックから近代までクラシック名旋律のオルガン・アレンジを集めた。初心者には嬉しい名曲集だし、文芸セミナリヨの楽器の伸びやかな音色と共に、匠の手で有名作が新たな表情を得ていて味わい深い。とくに最後のバーバーのアダージョは、淡々とした歩みから、かえって聖歌のような一面が浮き彫りになって胸に迫る。 (林 昌英)一見、よくある小品集に思えるかもしれない。しかし、第1音の歌い出しを聴くだけで、高い理想と技術、骨太な音楽性に裏打ちされた質の高さに気づいていただけよう。21歳にしてブラームス国際とウィンザー祝祭国際弦楽、2つの名門コンクールを制したチェロの俊英、伊藤悠貴。ロマン派から近代にかけての歌曲を題材に、自らチェロとピアノのために編曲。さらに、親友の作曲家ジェイムズ・リルが、伊藤のためにしたため、自らピアノ伴奏を務めた「記憶」の、どこか郷愁を呼ぶ調べも。決して力で押し切ることなく、常にチェロで心を“独白”する。だからこそ、聴く者の心を揺らすのだ。 (笹田和人)
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