eぶらあぼ 2018.1月号
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151アフター・コンサートの食事問題 先日、あるオケの来日公演に同行したのだが、毎晩困ったのは、「コンサートの後にどこに食事に行くか」ということである。東京のような大都市でさえ、終演後にまともに食べられる場所は、あまりない(少なくともそう感じられた)。長くやっているところでも、10時でラストオーダー、11時に閉店。音楽を楽しんだ後、一緒に行った人とそれについて語り合いたい、と思うものだが、バーはともかく、食事は予想以上に場所を選ぶ。 実はそれは、ヨーロッパでも同じである。ベルリンでは、コンサート後に食事ができるところは、非常に限られる。フリードリヒ通り付近の有名店は、ひと晩じゅう開いているところもあるが、それはむしろ例外。大抵は、遅くとも10時半過ぎにはラストオーダーとなる。雰囲気も良くて味も水準以上、というところになると、前もっての調査が必須。もちろん地元の人間ならば、どこが遅くまでやっているか知っているが、旅行者にとっては辛いだろう。かつてはどこでも真夜中くらいまでは食事ができた気がするのだが、ここ5、6年は、閉店時間は早まっている。タクシーで乗り付けたが、すでに閉まっていた、というのではシャレにならない。 さらに困ったのは、フランスやイタリアだろう。というのは、これらの国では食文化が重要なので、「外食はその日のメインイベント」という位置付けになっている。ほかのイベントを時間的に考慮していないだけでなく、内容的にも「コースをしっかり食Profile城所孝吉(きどころ たかよし)1970年生まれ。早稲田大学第一文学部独文専修卒。90年代よりドイツ・ベルリンを拠点に音楽評論家として活躍し、『音楽の友』、『レコード芸術』等の雑誌・新聞で執筆する。近年は、音楽関係のコーディネーター、パブリシストとしても活動。べる」ことが前提になる。ドイツのように、「ちょっとスープをひと皿だけ」というわけにはいかないのである。幸い、イタリアの多くの劇場・ホールでは、「土曜夕方公演」を用意している。つまり6時頃に始まって8時過ぎに終わり、9時から食事ができる、という時間設定。これは本当に便利だ。また日曜には、日本のように昼間公演がある。こちらも終演後、早い夕食がとれて効率的である。 終演後のレストラン探しで迷ったら、ホテルのフロントで聞くのが一番だろう。宿のクラスにもよるが、大抵のところではオススメを教えてくれる。その際重要なのは、①お店への到着時間、②カジュアルかフォーマルか、あるいはその中間か、③期待する食事内容の3点を伝えること。①は当然だが、②と③は、「さらっと食事したいだけなのに、コース料理しか食べられない店を紹介される」といった誤解を避けるためである。「オペラの後、10時半頃からXX地区で軽い食事がしたい。カジュアルというよりは、ちょっと素敵なところ」と質問。さらに予約をしてもらえば、後はタクシーに乗って現地に向かうだけで、安心である。城所孝吉 No.18連載
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