eぶらあぼ 2017.12月号
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68アレクサンダー・ガヴリリュク(ピアノ)深い詩情と精彩に満ちたピアニズム文:飯田有抄2018.1/8(月・祝)14:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/他公演2018.1/16(火) 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080) アレクサンダー・ガヴリリュクは国際的な活躍もさることながら、2000年に浜松国際ピアノコンクールで優勝して以来、日本でも着実に知名度を上げながら人気を獲得し続けている。その精緻な音楽づくり、躍動的かつ深みあるタッチで、爽やかに響かせる古典派の語法から、ピアニズムが最高潮に達した後期ロマン派の表現まで、説得力のあるパフォーマンスで聴き手を魅了する。そんなガヴリリュクが、彼の魅力をたっぷりと堪能できるプログラムを用意して新春の紀尾井ホールに登場する。 前半はなんとも愛らしい選曲で。ガヴリリュクの奏でる澄んだ音色で聴くハ長調のモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番は、新しい一年を迎えるにふさわしい。それに続くのはシューマンの「子供の情景」。ガヴリリュクといえば超絶技巧を要する難曲・大曲を弾きこなすイメージが強いかもしれないが、シューマンの詩的な小品世界を、幅広い表現力によって丹念に描いてくれることだろう。 後半は雰囲気をガラリと変えて、彼が得意とするロシアものだ。スクリャービンが独自のハーモニーを追求し始めた時期の傑作ピアノ・ソナタ第5番、ラフマニノフの前奏曲集op.23から第1、5、2番をこの曲順で披露する予定。そして最後はラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番(第2稿)。シリアスでドラマティックな3つの楽章を通じて、ガヴリリュクの誇る精彩に満ちたピアニズムをたっぷり堪能したい。曽我大介(指揮) ルーマニア・ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団四半世紀ぶりにルーマニアの名門楽団が再来日!文:笹田和人「第九」 11/23(木・祝)14:00 武蔵野市民文化会館問 武蔵野市文化事業団0422-54-2011「スターバト・マーテル」他11/29(水)19:00 たましんRISURUホール(立川市市民会館)問 たましんRISURUホール042-526-1311交響曲第5番「運命」他 12/2(土)14:00 松戸/森のホール21問 森のホール21 047-384-3331 約140年という長い歴史と独特の豊饒なサウンドを併せ持ち、リヒャルト・シュトラウスら数々の名匠が指揮台に立ってきた東欧の名門オーケストラ、ルーマニア・ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団が来日。彼らとゆかりが深い曽我大介のタクトのもと、ベートーヴェンやモーツァルト、ドヴォルザークなどの傑作を披露する。 同交響楽団は、ルーマニア第2の都市ブラショフが拠点。1878年のブラショフ・フィルハーモニー協会の第1回演奏会を機に設立され、多くの巨匠たちが客演を重ねてきた。来日公演を振る曽我は、ルーマニア国立音楽院在学中に同国で指揮者デビューし、現在は東京ニューシティ管弦楽団正指揮者。実は革命直後の1991年に困窮したブラショフ・フィルの支援にも尽力し、「生身の人間が心をひとつにするからこそ、心が震え、思いが通う」と、四半世紀に及ぶ彼らとの交流を振り返る。 まず11月29日には、立川の市民合唱団と、ドヴォルザークの宗教声楽作品の佳品「スターバト・マーテル」で共演。ソプラノ髙橋絵理、メゾソプラノ清水華澄、テノール望月哲也、バリトン加藤宏隆という実力派ソリスト陣で臨み、曽我の自作「ルーマニアのメロディによる幻想曲」も添えられる。 また、松戸公演では、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」がメインに。人気ピアニストのモナ=飛鳥・オットをソロに迎えて、モーツァルトの協奏曲第20番、ロッシーニの《セビリアの理髪師》序曲を披露する(12/2)。さらに、武蔵野市の市制施行70周年と、ブラショフ市との友好交流25周年を記念する「第九」(11/23)公演もある。晩秋は様々なプログラムでブラショフ・フィルの魅力を体験できるだろう。左より:曽我大介/モナ=飛鳥・オット ©Marie Staggat/ルーマニア・ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団
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