eぶらあぼ 2017.12月号
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63アレクサンダー・クリッヒェル(ピアノ)内面から溢れるみずみずしい響き文:飯田有抄 ドイツが生んだ注目のピアニスト、アレクサンダー・クリッヒェルが3度目の来日を果たす。歌うようにピアノを奏でるクリッヒェルの音楽は、誠実さや温かさ、それと同時にどこか抑制美も感じさせる雄弁な魅力を持つ。22歳の若さでソニー・クラシカルと専属契約を結び、その2年後にはドイツ・エコー賞「ニューカマー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した彼は、その注目度を裏切ることなく着実にクラシック界での存在感を増している。最新アルバム『夜のガスパール~ラヴェル:ピアノ作品集』でも、作品への真摯なアプローチと、内面から溢れるみずみずしい響きでラヴェルの傑作を聴かせる。 三鷹でのリサイタルはガーシュウィンで幕を開ける。管弦楽とピアノの名作「ラプソディ・イン・ブルー」の作曲者によるピアノ独奏版だ。少々意外な選曲だが、ジャズ的な語法を彼がどう聴かせてくれるのか実に楽しみだ。そして新譜に収録しているラヴェルの「夜のガスパール」、さらにムソルグスキーの大作「展覧会の絵」で、ドラマティックな構成力を惜しみなく発揮してくれるだろう。 今回の来日ではクリッヒェルの室内楽にも注目したい。日本モーツァルト協会のコンサートでは、室内楽編成でモーツァルトのピアノ協奏曲第14番、第12番を、長原幸太(ヴァイオリン)、篠原智子(同)、長岡聡季(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)と共演する。アンサンブルを通じて、彼の豊かな音楽性を一層深く味わうことができそうだ。©Henning Rossクリスマス・イン・トウキョウ 2017オペラや名歌に包まれる至福の時間文:東端哲也12/22(金)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ 師走に「クリスマス」と名の付くコンサートは数多あれど、12月22日に、サントリーホールで行われる公演は別格といえるかもしれない。ラグジュアリーな雰囲気に包まれた会場に新世代を代表する若きスター歌手たちが集結し、季節イべントを超えたオペラ・ファン大注目の極上ガラ・コンサートになる予感がする。 先ずは美貌のソプラノ、マリーナ・モンツォ。スペイン生まれの彼女は昨年舞台デビューを果たしたばかりだが、今季もペーザロのロッシーニ音楽祭やナポリ・サンカルロ歌劇場などに出演。あの世界的人気テノールのJ.D.フローレスにもお墨付きをもらった美声で《リゴレット》の〈慕わしい人の名は〉を披露してくれる。続いては昨年、新国立劇場《ウェルテル》での表題役やマリインスキー・オペラ《エフゲニー・オネーギン》のレンスキー役を好演し日本でもファンを増やしたテノール、ディミトリー・コルチャック。《愛の妙薬》の甘く切ない〈人知れぬ涙〉が楽しみだ。更にはフランスが生んだバスバリトンの貴公子エドウィン・クロスリー=マーサーも登場。2015年の「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」での《ベアトリスとベネディクト》でもオペラ・ファンの注目を集めた彼。《フィガロの結婚》の〈もう飛ぶまいぞこの蝶々〉で魅せてくれるはず。もちろんソロだけでなく各種二重唱や、当然クリスマスのメロディも盛り沢山。英国ロイヤル・オペラでA.パッパーノに学んだミケーレ・ガンバの指揮と東京交響楽団の演奏も楽しみだ。ディミトリー・コルチャックリサイタル 12/2(土)15:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール問 三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122http://mitaka-sportsandculture.or.jp/geibun/日本モーツァルト協会 第594回演奏会 12/4(月)18:45 東京文化会館(小)問 日本モーツァルト協会03-5467-0626 http://www.mozart.or.jp/CD『夜のガスパール~ラヴェル:ピアノ作品集』ソニーミュージック SICC-30462¥2500+税エドウィン・クロスリー=マーサー ©Julien Benhamouマリーナ・モンツォ
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