eぶらあぼ 2017.12月号
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56青柳 晋 自主企画リサイタルシリーズ リストのいる部屋 Vol.1212/22(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530 http://www.susumuaoyagi.com/青柳 晋(ピアノ)マズルカはまるでショパンの日記のようです取材・文:高坂はる香Interview ピアニストの青柳晋がライフワークとして取り組む自主企画リサイタルシリーズ「リストのいる部屋」。12年目となる今年は、青柳が以前から構想していたという、リストとショパンのマズルカを合わせたプログラムを取り上げる。 「ショパンが若き日から死の直前まで書き続けたマズルカのうち、人生の節目に書かれた作品を選びました。散文詩的なやわらかさのあるマズルカの間に、リストの『超絶技巧練習曲集』の終わりの4曲を、“ブックエンド”のように置いてあります」 遺作を集めた最後の「マズルカ集op.68」の1曲目で、実際には初期作品であるop.68-1で始め、op.30、op.56、絶筆となったop.68-4他を年代順に並べて生涯を追う。 「ショパン晩年のマズルカからは、何かが朽ち果て、息絶えていく気配を感じます。一方のリスト『超絶技巧練習曲集』には華やかなイメージがあるかもしれませんが、最後のほうの作品にはダークな要素が漂い、後期作品に通じるものを感じるのです」 青柳がショパンの魅力に目覚めたのは、1980年ショパン国際ピアノコンクールのドキュメンタリー番組を観て、ライヴ録音のレコードを買ってもらったとき。 「当時の入賞者だったシェバノワさんや海老彰子さんなどの演奏が入っていました。中でも優勝したダン・タイ・ソンさんの『エチュードop.25-4』がすばらしくて。彼の演奏を聴くと、ショパンが生きていたら喜ぶだろうと感じます。この頃、ショパンへの意識が変わりました。毎晩寝るときにソナタ3番の3楽章を聴いて、昔の思い出ってなんだろう…と考え、切ない気持ちになりました。まだ9歳の子どもだったのですが(笑)。ショパンは、例えばベートーヴェンのように前に向かって突き進むというより、“後ろに置いてきたものを慈しむ”ような、過去を大切にするタイプの音楽家だと思います」 こうしてショパンは特別な作曲家となったが、「子どもの頃は何も考えずに弾けていたのに、難しさを知って、逆に一番遠い存在になった」時期もあった。そんなショパンのマズルカに改めて取り組もうと思ったのは、畏れを感じていた作品に対して、「肩の力を抜いてアプローチできるようになった」ことが大きい。 「ポーランドらしい本物のリズムとは何かということは大切ですが、そこに固執しすぎず、自分になじむ感覚で弾くショパンがあっても良いのではと思えるようになったのです。ショパンはまるで日記のように、マズルカでその時々の想いを綴りました。その側面にフォーカスした表現を求めていきたいですね」 今の青柳が見出したマズルカの表現はもちろん、リストの作品に支えられた曲順で聴くことで、そこから何が見えてくるのかも楽しみなところだ。石井啓子アンサンブルシリーズ ⅩⅩⅧメンデルスゾーンの記念年に贈るユニークなプログラム文:笹田和人 豊かな表現力と優しく明るい音色で音楽ファンを魅了するピアニストの石井啓子が、1987年から毎年開催している「アンサンブルシリーズ」。28回目となるステージでは、今年没後170年を迎えたメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第1番」を軸に、ひと捻りしたプログラムで、アンサンブルの妙味を披露する。 ミュンヘン音大に学び、現地での音楽活動を経て帰国した石井。幅広いレパートリーでソリストとして活動する一方、特に夫でヴァイオリニストの啓一郎とはデュオ・リサイタルを全国で開催し、99年にはアルバム『風の楽士の万12/26(火)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp/石井啓子華鏡』も発表している。 今回は、啓一郎と桜庭茂樹(チェロ)とのメンデルスゾーンのほか、娘の陽子(フルート)を交えてベーム「メンデルスゾーンとラハナーの歌による3つの二重奏曲」やディーリアス「ヴァイオリン・ソナタ第2番」(フルート編曲版)、石突美奈(ヴァイオリン)とのベートーヴェン「ピアノ三重奏曲op.70-1」、ショスタコーヴィチ「2本のヴァイオリンのための5つの小品」と、興味深い選曲で臨む。
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