eぶらあぼ 2017.12月号
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47マルク・アンドレーエ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 「第九」初共演の新日本フィルと紡ぐ名匠の“歓喜の歌”文:林 昌英12/15(金)19:00 サントリーホール12/16(土)14:00 すみだトリフォニーホール12/17(日)14:00 Bunkamuraオーチャードホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ 各オーケストラが開催する年末の「第九」公演のなかで、意外な名前が目を引くのが、新日本フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会。同団の「第九」といえば、近年は各国の若手指揮者を起用してきたが、今年はスイスの名匠、マルク・アンドレーエを迎えるのである。 作曲家・指揮者のフォルクマール・アンドレーエを祖父に持ち、スイスの著名な音楽一家に生まれたマルク。チューリッヒ音楽大学で学び、パリでナディア・ブーランジェ、ローマとシエナでフランコ・フェラーラといった名教師たちに師事し、1966年にはルドルフ・ケンぺ/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団主催の指揮者コンクールで優勝、68年にはフィレンツェのAIDEM作曲コンクールで優勝。69~91年にはスイス・イタリア語放送管弦楽団の音楽監督を務めるなど、ヨーロッパ楽団のポストを歴任している。ミュンヘン・フィルやライプツィヒ・ゲヴァントハウス管など名門楽団にも定期的な客演を重ね、日本ではN響や読響との共演歴があるが、新日本フィルには初登場となる。名声に比して録音が少ない指揮者だが、2015年リリースのバンベルク響とのシューマンとメンデルスゾーンでは生命力と滋味あふれる演奏を聴かせていて、「第九」の実演で名匠の真価を再発見できる喜びは大きい。 ソリストは、東京二期会の舞台での大活躍が続くソプラノの森谷真理をはじめ、アルト山下牧子、テノール大槻孝志、バリトン久保和範と名歌手が並び、栗友会合唱団と共に、豊かな声の饗宴を楽しませてくれる。なお、12月15日のみ、「第九」に先立ち椎名雄一郎によるオルガン演奏が行われる。マルク・アンドレーエ東京文化会館《響の森》vol.41 ニューイヤーコンサート2018新春のコンサートホールで名曲を存分に満喫文:林 昌英2018.1/3(水)15:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ 新春恒例となった、1月3日のニューイヤーコンサート。東京文化会館《響の森》シリーズの一環として、年明け早々に本格的なクラシックコンサートを東京都交響楽団の演奏で聴かせてくれる、毎年大好評の公演である。2018年は指揮者・藤岡幸夫とヴァイオリニスト・神尾真由子が登場。J.シュトラウスⅡのワルツ「南国のバラ」、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)の「展覧会の絵」と、楽しさ抜群の人気名作を取り上げる。 藤岡は現在、関西フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務める一方、テレビのレギュラー番組でも司会と指揮を担当するなどメディア出演にも積極的で、クラシック音楽の魅力を様々な角度で広めることに尽力している。そんな藤岡にとって、色彩的で華やかな演目で会場を盛り上げることはお手のもの。常に真摯かつ高水準なパフォーマンスを維持する都響と共に、楽しさの中に手応えのある好演で新春を祝ってくれるはず。 10年前のチャイコフスキー国際コンクール優勝以来の、神尾の世界的な活躍は周知の通り。協奏曲のソリストやリサイタルのほか、近年は室内楽にも積極的で、活動の幅が広がり続ける神尾だが、その活躍の原点となるチャイコフスキーはやはり聴きものであり、熱い名演を期待したい。 年明けから歴史ある東京文化会館の空気を感じ、すてきな演奏を味わう。華やぎと共に、明日への活力が生まれてくるに違いない。神尾真由子 ©Shion Isaka藤岡幸夫 ©Shin Yamagishi

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