eぶらあぼ 2017.12月号
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43ウィーン・リング・アンサンブル ニューイヤー・コンサート2018年明けにはウィーンの香りとロッシーニのユーモアを文:飯尾洋一2018.1/6(土)14:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com/ お正月の風物詩といってもよいだろう。2018年もウィーン・リング・アンサンブルが来日し、ニューイヤー・コンサートを開く。ウィーン・フィルの首席奏者たちを中心とした9人のアンサンブルは、まさにプチ・ウィーン・フィル。ウィーンでのニューイヤー・コンサートの直後に来日してくれるのだから、なんともぜいたくなことである。プログラムの中心となるのは、もちろん、シュトラウス・ファミリーによるウィンナ・ワルツやポルカ。本場ウィーンの香りを日本に届けてくれる。加えて、没後150年記念となるロッシーニ・メドレーも演奏される。なるほど、ロッシーニはウィーンに大旋風を巻き起こした作曲家であるのだから、彼らが演奏しても不思議はない。 アンサンブルを率いるのは元ウィーン・フィル・コンサートマスターのライナー・キュッヒル。長年にわたって務めたウィーン・フィルを退職後、このアンサンブルとしては初来日ということになる。といってもNHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターとしても活躍するキュッヒルだけに、日本の聴衆にとってはますますなじみ深い存在となっているのではないだろうか。ホルンのヴォルフガング・トムベック、フルートのカール=ハインツ・シュッツ、クラリネットのペーター・シュミードル、チェロのロベルト・ナジ他の腕利きたちとともに、親密で味わい深いアンサンブルを披露してくれることだろう。ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)鬼才と精鋭たちの熱き共演文:江藤光紀リュカ・ドゥバルグ&クレメラータ・バルティカとの共演 2018.2/14(水)19:00デュオ・リサイタル 2018.2/18(日)14:00サントリーホール問 ミュージックプラント03-3466-2258 http://www.mplant.co.jp/ クレーメルは“型通り”を好まない。演奏を通じて何か新しいものを創造したいと常に考えているのだ。20年前にバルト三国の若手奏者たちを集めて室内合奏団クレメラータ・バルティカを立ち上げたのも、外からの求めに応じるだけではなく、若手から刺激を受けつつ自らの音楽を追求し、発信したいと考えたからだろう。 クレーメルは最近、リュカ・ドゥバルグという新たなインスピレーションの源を発見したようだ。11歳でピアノを始め、その後ピアノから離れていた時期があったにもかかわらず、アディリア・アリエヴァ国際ピアノ・コンクール優勝(2014年)、チャイコフスキー国際コンクール入賞(15年)とメキメキと頭角を現している。演奏スタイルは極めて個性的。自由な解釈を奔放な技巧で実現していく姿には、未だ飼いならされていないような野性味を感じる。クレーメルといえば、火花を散らす掛け合いでエキサイトするアルゲリッチとのデュオが有名だ。ドゥバルグともすでに共演を重ねているが、また違った丁々発止が楽しめることだろう。 公演は2日。2月14日はクレメラータ・バルティカが入り、「セレナータ・ノットゥルナ」、ヴァイオリン協奏曲第3番、ピアノ協奏曲第12番とそれぞれがモーツァルトを披露するほか、ベートーヴェン「セリオーソ」も聴ける。2月18日はドゥバルグがバッハ「トッカータ ハ短調 BWV911」、クレーメルがヴァインベルクの無伴奏曲を弾いた後、シューベルト「ソナチネ第3番 D408」「幻想曲ハ長調 D934」の2曲で二人が“一騎打ち”する。左より:ギドン・クレーメル ©Giedre Dirvanauskaite/リュカ・ドゥバルグ ©Felix Broede/Sony classical/クレメラータ・バルティカ ©Giedre Dirvanauskaite©Shumpei Ohsugi

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