eぶらあぼ 2017.12月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロも披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/文:横原千史親密な空間でじっくり味わう3つのコンサートびわ湖の午後シリーズ50 鈴木秀美(チェロ) 円熟のバッハ 2017.12/9(土)14:0051 萩原麻未(ピアノ)×成田達輝(ヴァイオリン)×横坂 源(チェロ) 輝ける未来への源流 2018.2/17(土)14:00スタインウェイ“ピノ”シリーズ vol.4 イタリア歌曲はこんなに面白い! 2018.1/20(土)14:00 びわ湖ホール 小ホール びわ湖ホール初代芸術監督・若杉弘の自宅で愛用されていたスタインウェイ“ピノ”を使ってイタリア歌曲の名作を披露する魅力的なコンサート。ピアノ・構成を務める指揮者の園田隆一郎は、「びわ湖ホール オペラへの招待」シリーズで優れた指揮者の才能を発揮し、今夏の《ミカド》も名演で、新国立劇場でも好評のうちに再演されたことは記憶に新しい。モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》終曲の二重唱で始まり、スカルラッティの古典歌曲はなんと現代作曲家のダッラピッコラの編曲である。この辺りにも園田のこだわりが窺える。後半は《トロヴァトーレ》《ボエーム》《ワリー》など名作オペラと同じ旋律をもつ歌曲を並べるという珍しくも面白い構成。ピッツェッティ、アルファーノ、ベリオといった滅多に聴けない歌曲も聴きのがせない。びわ湖ホール声楽アンサンブルから巣立った佐藤路子、小林久美子、山本康寛、砂場拓也の独唱と重唱で美声を遺憾なく聴かせてくれる。大いに楽しみだ。 びわ湖ホール小ホールを舞台に第一線のアーティストを迎え、優れた室内楽で多くの聴衆を楽しませてきた「びわ湖の午後」シリーズが50回を迎える。記念すべき第50回は現代最高峰のバッハ解釈を聴かせるチェリスト鈴木秀美が登場する。51回は萩原麻未を中心に生きのいい若手を集めたピアノ・トリオが続く。なんとも楽しみなラインアップではないか。 鈴木秀美は単にチェリストというだけでなく、今や日本の古楽界で欠かせぬ重鎮である。1980年代半ばからオランダに留学し、バロック・チェロのカリスマであるビルスマに師事し、クイケンらが設立したラ・プティット・バンドの首席チェロ奏者となり、ブリュッセル王立音楽院教授も務めた。今回とりあげるバッハの無伴奏チェロ組曲は彼の十八番。95年には全曲録音のCDで文化庁芸術作品賞を受賞している。数年前にいずみホールでも2夜連続の全曲演奏会があり、滋味豊かで奥行きのある見事な演奏だった。最近は指揮活動も盛んで、山形交響楽団を振った名演の記憶も新しい。芸域を広げた鈴木のバッハ演奏がどんな新境地を聴かせてくれることか。響きの良い親密な空間でのバロック・チェロの繊細な音も期待できる。 最近進境著しいピアノの萩原麻未。ジュネーヴ国際音楽コンクール優勝以来、毎年のように在阪オケのソリストとして協奏曲を聴いてきたが、今年の兵庫芸術文化センター管弦楽団とのラヴェルのピアノ協奏曲は特に素晴らしかった。また今年は3年ぶりにリサイタル・ツアーを開くという。そんな萩原がヴァイオリンの成田達輝、チェロの横坂源とピアノ・トリオを組むのも話題だ。成田は萩原との共演が数多く、横坂はジャン=ギアン・ケラスの弟子でNHK-BSで放映された師匠とのデュオでその才能を見せつけた。取り上げるのはベートーヴェンのピアノ三重奏曲「幽霊」とチャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出に」で、いずれもこのジャンルの偉大な最高傑作である。若きヴィルトゥオーゾたちの丁々発止が目に見えるようではないか。びわ湖の午後50・鈴木秀美 円熟のバッハびわ湖の午後51・輝ける未来の源流スタインウェイ“ピノ”シリーズイタリア歌曲はこんなに面白い!上段左より:鈴木秀美 ©K.Miura/萩原麻未 ©Akira Muto/成田達輝 ©Hiroki Sugiura中段左より:横坂 源/佐藤路子/小林久美子下段左より:山本康寛/砂場拓也/園田隆一郎 ©Fabio Parenzan

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