eぶらあぼ 2017.12月号
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166CDCD六ろっきゅう騎~こころを歌う。/福井 敬メンデルスゾーン:ピアノ・トリオ第1番・第2番/大森智子&塚原るり子&河野文昭木下牧子:おんがく/さだまさし:秋桜/山田耕筰:六騎/中田喜直:サルビア/時雨音羽:鉾をおさめて/伊藤康英:このみち/寺島尚彦:さとうきび畑/三善 晃:ほおずき/坂本浩美:旅立ちの日に 他福井 敬(テノール)谷池重紬子(ピアノ)メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番・第2番大森智子(ピアノ)塚原るり子(ヴァイオリン)河野文昭(チェロ)ディスク クラシカ ジャパンDCJA-21040 ¥3000+税11/22(水)発売ナミ・レコードWWCC-7850 ¥2500+税日本のテノールのエースによる日本歌曲第3弾。山田耕筰、中田喜直から、三善晃、木下牧子、山口百恵が歌った〈秋桜〉まで、20世紀のさまざまな日本の歌の風景を切り取った選曲そのものに、すでに福井の思いが映っている(男性歌手の〈サルビア〉を初めて聴いた!)。言葉の一語ごとにふさわしいテンションを丁寧に操る歌からは、オペラやコンサートで聴かせるヒロイックなテノールの輝きとはまた別の、深く象られた抒情が浮かび上がる。一方でどの歌にも、安易にティピカルなスタイルに落とし込んだ“日本歌曲”ではなく、“福井敬”が刻まれているのがさすが。 (宮本 明)デビュー40年を迎えたピアノの大森智子を中心に、ベテラン奏者3人がメンデルスゾーンのトリオ2作で誠実かつ骨太な演奏を聴かせる。端正なだけの演奏とは一線を画す、気持ちのこもった響きは聴き応えがある。バッハを演奏活動の軸としてきた大森は、メンデルスゾーン作品にもバッハ以来のドイツの伝統と敬虔な宗教性を見出す。それだけに、作曲者晩年近くの暗い情念と宗教観が反映された第2番への思いはより厚いようで、第1番の陰に隠れがちな佳品の真価に迫っている。とくに最終楽章途中と結尾部に現れるコラールの深い感動は印象的。河野のチェロもいぶし銀の仕事ぶり。(林 昌英)CDグノー:ピアノ作品集Vol.1/広瀬美紀子グノー:アヴェ・マリア、操り人形の葬送行進曲、5月の朝(遺作)、バルカローレ(ベネチアの女)、セレナーデ、ピッフェラーリ(ピッファロ吹き達)、歌劇《ファウスト》第5幕より、交響曲第2番第2楽章 他広瀬美紀子(ピアノ)クァッドリーガQR-09004 ¥2315+税広瀬美紀子は東京芸大・同大学院に学び、フランスでの活動経験もある実力派ピアニスト。今回は、シャルル・グノーのピアノ作品に焦点を当てた。歌曲として演奏機会の多い「アヴェ・マリア」の作曲家本人によるピアノ独奏版や往年のテレビ番組「ヒッチコック劇場」のテーマとして知られる「操り人形の葬送行進曲」など聞き覚えのある旋律から、歌劇や交響曲からの編曲、遺作となる「5月の朝」など知られざる作品まで、その作風は変幻自在。広瀬は真正面から向き合い、楽器を大胆にならすダイナミックな書法から、襞のような繊細な部分まで、つぶさに掬い取っていく。 (笹田和人)CDパルティータ 無伴奏オーボエ作品集/池田昭子J.S.バッハ:パルティータ ト短調(原曲:イ短調)BWV1013/テレマン:「12のファンタジー」より第1番・第2番・第4番・第6番・第7番・第9番/C.P.E.バッハ:無伴奏ソナタ ト短調(原曲:イ短調)Wq.132池田昭子(オーボエ)マイスター・ミュージックMM-4020 ¥3000+税N響オーボエ奏者・池田昭子の当レーベル7枚目のCD。バッハ親子とテレマンの作品を収めた、初の無伴奏アルバムである。1曲目のJ.S.バッハのパルティータの冒頭から耳を引きつけ、その後も終始緊張感が持続。全てフルートの楽曲だが、知らずに聴けばオリジナルと信じてしまうほど自然かつ巧みな演奏が展開されている。中でもテレマンのファンタジーの、息詰まる自己対話ともいうべき表現は聴き応え十分。エコー的な強弱も効果を発揮する。ヴィルトゥオーゾ的な方向性とは異なるシリアスな曲種に挑み、高い集中力で成功を収めた池田に拍手を送りたい。 (柴田克彦)
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