eぶらあぼ 2017.12月号
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164SACDCDCDCDJ.S.バッハ:インヴェンションとシンフォニア/野平一郎ブルックナー:交響曲第5番/ノット&東響バッハ×ヴィオラ・ダ・ガンバ/小池香織メシアン:ピアノ作品全集2「鳥のカタログ第4・6・7巻」/宮崎明はるか香J.S.バッハ:インヴェンション BWV772-786、シンフォニア BWV787-801、4つのデュエット BWV802-805、ソナタ ニ短調 BWV964野平一郎(ピアノ)ブルックナー:交響曲第5番(ノーヴァク版)ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団J.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ第1番~第3番、「マタイ受難曲」より第56曲「もちろん私たちが十字架を」・第57曲「来たれ、心地よい十字架よ」小池香織(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 宮崎賀乃子(チェンバロ/オルガン) 近野賢一(バス) 新井道代 相川郁子(以上フラウト・トラヴェルソ)メシアン:鳥のカタログ第7番・第10番・第11番~第13番宮崎明香(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-7848 ¥2500+税収録:2017年5月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00637 ¥3200+税コジマ録音ALCD-1158 ¥2800+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9012 ¥2800+税ピアニスト・作曲家・指導者としてますます精力的な活動を続ける野平一郎。近年は指揮者としての活動も目覚ましい彼の新譜は、教育的作品というイメージが強いバッハの「インヴェンションとシンフォニア」を中心に「4つのデュエット」やヴァイオリン曲の編曲作品を収めている。野平の演奏は一つの旋律の中から、より細かなモティーフを鮮やかに浮かび上がらせ、関連性を浮き彫りにし、多彩な声の重なりを聴かせるものであり、オーケストラや合唱のような劇的表現すら導き出し、完全なる芸術作品として作品に新しい表情を与えている。 (長井進之介)ブルックナー演奏も時代によって変わっていくが、これは現代の一つの方向を代表すると言えるかもしれない。ゆっくりめのテンポでオーケストラを鳴らし切っているが(特に第1、4楽章)、単なる重厚感とは違う。ぱりっとした折り目正しさ。これは横の線についても言え、音楽を流してうねりを作るのではなく、ターゲットの速度までなめらかに移行していく。第2楽章は磨き上げられた美しさ。ブロック構造の第3楽章も整理整頓をいきとどかせ、構築的に積み上げていく。淡麗辛口とでも言ったらいいのか、音を即物的に考え抜いた真面目な職人芸は日本の楽団の気質にも合っているようにも思う。 (江藤光紀)小池香織はブレーメン芸大で名手ヒレ・パールらの薫陶を受け、国際的に活躍する俊英ガンビスト。彼女は、まるで霧の中をさ迷うような発音のガンバ弾きとは一線を画す。常に芯のある音で楽器を鳴らし切り、確固たる拍節感の中にあって、ごく自然で流れの良いフレージングを現出。だからこそ、バッハがしたためた楽曲の構造が、はっきりと示される。ソナタ全曲に加えて、「マタイ受難曲」から、ガンバ・ソロが印象的な役割を果たすレチタティーヴォとアリア(第56、57曲)を併録。作曲家がこの楽器に託した、特別な想いを浮き彫りに。共演陣も、小池の思い入れを受け止める好演だ。 (笹田和人)昨年夏にリリースされた「鳥のカタログ」第1弾に続く完結編。前アルバムで30分以上を要する大作「ヨーロッパヨシキリ」(第7番)を飛ばし、第2集の冒頭に持ってきたのは戦略的なものか。色とりどりの鳥たちが狂おしいさえずりの饗宴を繰り広げ、移り変わりの早い自然界の厳しさが、ごろごろと地響きを立てる低音、空間を引き裂く激しいアタックで表現される。前アルバムでは、宮崎はメシアンの音楽に美しいポエジーを読み取っているように感じたが、それだけにこの曲の振り切った身振りは新鮮かつエキサイティング、聴き応えがあった。ピアノ作品全集と銘打っているので、今後のリリースも楽しみ。 (江藤光紀)
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