eぶらあぼ 2017.11月号
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74田尾下 哲(プロデュース) & 加藤昌則(音楽監督/ピアノ)作曲法でつながる!? バロック・オペラとミュージカル取材・文:山田治生中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行 バロック・オペラからミュージカルへ~音楽劇の歴史を追う第四夜 ロマン派オペラⅡ~フランス&ドイツ・オペラ12/6(水)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp/ 昨年5月に始まった、Hakuju Hallの『中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行』。その第四夜がこの12月に開催される。「バロック・オペラからミュージカルへ~音楽劇の歴史を追う」という副題がつけられ、今回は、フランスとドイツのロマン派オペラが中心的に取り上げられる。中嶋朋子が案内人を務め、中村恵理(ソプラノ)、城宏憲(テノール)、青山貴(バリトン)、沼尾みゆき(ミュージカル女優)が出演する。 公演の総合プロデューサーである田尾下哲と音楽監督でピアノ演奏も担う加藤昌則に話を聞いた。ドイツとフランスオペラの違いとは?田尾下(以下、T)「今回は、フランスとドイツのオペラの違いを聴いて感じてほしいと思います。スタイルの違いを理屈ではなく音楽そのもので体感してほしいですね」加藤(以下、K)「ロマン派の時代、ドイツとフランスのオペラでは考え方がまったく違っていました。作曲的には、ドイツの方が緻密に構成されていますが、聴く人にとっては、ドイツのこむずかしさよりも、フランスの楽観的で娯楽性のあるものの方が好まれるかもしれません。ですから、その違いを比較するのも面白いと思ったのです」T「中村さん、城さん、青山さんら、優れた歌手に良い演奏をしてもらって、お客様に作品を紹介したいですね。そして曲にも興味を持っていただきたい」K「歌手の方には、自分のレパートリーの作品を歌ってもらうだけでなく、レパートリー外のものもやってもらえたら、その人の新しい可能性が広がるかもしれません」 中村がグノー《ロメオとジュリエット》の〈私は夢に生きたい〉を、青山がワーグナー《さまよえるオランダ人》のオランダ人のモノローグ〈期限は切れた〉を取り上げるなど、十八番のレパートリーを披露。また、それぞれが加藤の編曲したフランス・オペラ・メドレーとドイツ・オペラ・メドレーを歌うのも楽しみだ。オペラの歴史を1公演で概観できる 今回のメイン・テーマは「フランスとドイツのロマン派オペラ」であるが、この音楽劇紀行では、毎回、バロック、古典派、ロマン派、オペレッタ、ミュージカルから作品を取り上げ、オペラの歴史が概観できるようになっているのが特長だ。T「もともと、バロック・オペラを学びたい、音楽劇の歴史をきちんと勉強したいという気持ちからこの企画を始めました」K「バロックのオペラはコードにメロディや伴奏を“縦”にはめていくという作り方でしたので、例えば19世紀イタリアのロッシーニのコード的な書き方はバロックに近いと思います。ドイツ音楽はバッハ以来の“横の流れ”の発想があり、ワーグナーはライトモティーフを使ってオペラを書きました。そして現代のミュージカルはコードで作曲されます。ですから、バロックからミュージカルへ、ある意味、作曲の方法がコードからコードに戻ったともいえます。作品は歴史の中で生まれます。“今”という時代もまた歴史の流れの一部ですから、今、生まれるものにもっと関心を払ってほしいですね」アンコールには何と新作を発表!? そして最後に目指すのは新しいオペラの創作である。T「最近のこのシリーズでは、加藤さんに出演者全員が参加する新作を書いてもらいアンコールで発表しているのですが、これがかなり好評なのです。また、最終的には未来に向けて新しいオペラを生み出したいです」K「これまでにオペラを2本書きましたが、今回、この音楽劇紀行に触れて、刺激を受け、新しいものができるんじゃないかと思っています」左:田尾下 哲 右:加藤昌則 Photo:M.Otsuka/Tokyo MDE

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