eぶらあぼ 2017.11月号
66/203

63松本和将の世界音楽遺産シリーズ第2回 ロシア編~恐るべき底なしの響き~11/26(日)14:00 東京文化会館(小)問 タッシ・アーツ・チケッツ!050-1278-6816 http://www.kaz-matsumoto.com/他公演(同プログラム)12/23(土・祝)サザンクロスホール(宇都宮市立南図書館内)(松本和将さんのピアノを聴く会 事務局028-645-1904)松本和将(ピアノ)往年の巨匠たちが愛したピアノで奏でるロシアの名曲取材・文:飯田有抄Interview 「遺産と呼ぶに相応しい傑作がこの世には多く、自分でも収拾がつかないほど弾きたい曲もたくさんあります。リサイタルのテーマを『世界音楽遺産』としてシリーズ化することで、明快なコンセプトでまとめていけると考え、この企画をスタートさせました」 幅広いレパートリーを持つピアニスト、松本和将の「世界音楽遺産」。昨年のドイツ・オーストリア編に続いて第2回はロシア編と銘打った。サブタイトルは「恐るべき底なしの響き」。ロシア音楽の魅力を見事に示す副題だ。 「ロシア音楽にはどこまでも深い響きがあります。個人的にもっともロシアを感じさせてくれる作曲家はラフマニノフです。延々と沈み込んでいく響き。喜びも明るさもあるけれど、常に雲がたれ込めている。あの音楽美にこそ、ロシアの魅力を感じますね」 そのラフマニノフがカーネギーホールで愛奏したと言われるピアノ、ニューヨーク・スタインウェイCD368を用いてリサイタルは行われる。ラフマニノフの名曲、前奏曲「鐘」で幕開けし、延々と歌い続けるような「ヴォカリーズ」が続く。ロシアといえば欠かせないチャイコフスキーの作品は、「四季」の中でも明るく祝祭的な3曲(7月・11月・4月)を取り上げる。スクリャービンの作品からはソナタの5番を選んだ。神秘和音により独自の世界を切り開いた傑作だ。 「スクリャービンの音楽は、突き抜けた世界を緻密にまとめあげていくところがあまりに面白く、弾いていてニヤリとしてしまいます(笑)。彼の世界観では宇宙と人間の体内とが一体化しています。こう説明すると分かりにくいですが、音楽になると伝わりやすくなるから不思議です」 後半はムソルグスキーの「展覧会の絵」。これまで17枚のCDをリリースしてきた松本が、3枚目のアルバムで録音した作品だ。 「若い頃は、ラヴェルのオーケストラ版の呪縛から逃れられなかったのが、最近ようやく抜け出せました。冒頭のプロムナードはトランペットの音色をイメージしなくてもいいはず。今は具体的な楽器の音色にこだわらずに、自由に全体的な響きを感じ取るようにしています」 自分の考えを「言葉や文章でも伝えたい」と語る松本は、公演1ヵ月前には曲目についてのプレレクチャー(10/25 タカギクラヴィア松濤サロン 要申込)を行う。また自らの「本番でしか出せないテンション」を強みと捉え、ライヴ録音を行う予定だ。レクチャー、本番、ライヴ録音CDと、3段階で楽しめる“世界遺産”に注目だ。文:長井進之介ぎふ秋の音楽祭2017 “鍵盤の日” 横山幸雄 10時間ショパン連続演奏 LIFE 人生に似たピアノショパンの生涯を一日で辿る驚異のプログラム 岐阜県のサラマンカホールは、県民に良質な音楽文化に触れる機会を様々なかたちで提供し、音楽文化の活性化を図っているが、特に主催事業の「ぎふ秋の音楽祭」は、毎回多くの著名演奏家を招き、バラエティ豊かな演奏会が行われる一大イベントである。その中で“鍵盤の日”と題されたシリーズは日本を代表するピアニストたちが趣向を凝らしたコンサートを展開。 11月18日には横山幸雄が、ショパン・ピアノ・ソロ全166曲を1日で演奏し、ギネスに世界記録として認証された、あの伝説的な公演を再現するかのよう11/18(土)11:00 岐阜/サラマンカホール問 サラマンカホール チケットセンター058-277-1110http://salamanca.gifu-fureai.jp/ ©ミューズエンターテインメントな10時間連続の全曲ショパンリサイタルを行う。コンサートは全6部。朝11時からピアノ協奏曲2曲(ソロ・ピアノ版)という驚きのスタートを切り、第2~6部は練習曲やポロネーズにマズルカ、夜想曲などを織り交ぜつつバラードやスケルツォ、幻想曲などの大曲をバランスよく構成したプログラムとなっている。極上の演奏でショパンのあらゆる作品を網羅的に堪能できるこの機会、見逃す手はない。

元のページ  ../index.html#66

このブックを見る