eぶらあぼ 2017.11月号
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61エマニュエル・パユ(フルート) SOLOスーパースターの“一人舞台”文:江藤光紀11/28(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/ ベルリン・フィルの顔として、またスター木管奏者からなるレ・ヴァン・フランセのメンバーとして、オーケストラからアンサンブルへと縦横無尽の活躍を見せるフルーティスト、エマニュエル・パユ。 11月に東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアルで披露するのは全曲無伴奏、70分間休憩なしの正真正銘の一人舞台。気力・体力・技術力だけでなく大ホールでの開催には人気も必須要件だが、全力投球の姿勢に早くも残席僅少だとか。 プログラムにもパユなりの思いが詰まっている。最初と最後に武満徹の作品「ヴォイス」と「エア」が置かれているが、これらはパユの師匠オーレル・ニコレとのコラボを通じて出来上がった作品。そのニコレも昨年亡くなり、選曲には作曲家の名を冠するホールで演奏することに加え師匠への追悼の意味も込められている。 両端の武満のみならず、プログラムが時代を交錯させながらシンメトリカルに組み立てられているのも面白い。バロックのマラン・マレ「スペインのフォリア」と呼応するのは古典派のC.P.Eバッハ「無伴奏ソナタ イ短調」。特に後者は昨年協奏曲のCDをリリースしたばかりで、お気に入りの作曲家のようだ。現代作曲家とのコラボもパユが重視している活動の一つだが、ここではピンチャー「Beyond」とヴィトマン「小組曲」というドイツの代表的中堅の2作をチョイス。後者はやはりニコレを追悼した作品という。そしてシンメトリーの中心に来るのはパユと同国人ピエール=オクターヴ・フェルーの「3つの小品」。フランス風の洒脱なセンスの中にエキゾチシズムが香る佳作だ。 ©Fabien Monthubert柴田智子プロデュース AMERICAN THEATER SERIES VOL.3AMERICAN COMPOSERS GALA ~アメリカ作曲家の祝典11人のシンガーが届けるアメリカ劇場音楽の魅力文:東端哲也12/22(金)18:30 豊洲シビックセンターホール問 TSPI 03-3723-1723 http://www.tspi.co.jp/ ニューヨーク在住の経験が長く、オペラはもとよりポップス曲やミュージカル曲などにも新たな生命を吹き込むクロスオーヴァー・シンガーとして活躍中のソプラノ、柴田智子。 11月12日には新国立劇場でドニゼッティ作曲の知られざる“バックステージもの”喜劇オペラ《ビバ! ラ・マンマ》に自己中なプリマドンナ役で出演することでも話題を集めているが、12月に開催する、彼女のライフワークである「米国の劇場音楽を日本の聴衆に紹介する」アメリカン・シアター・シリーズの第3弾にも注目したい。 この公演で紹介されるのは6人のアメリカ人作曲家による作品の数々。コンサートの前半は、どちらかといえばクラシック寄りの作曲家のもの。まずは、ガーシュウィンより5歳上のD.ムーアが西部開拓時代の史実を素材に1956年に書き上げた純愛オペラ《ベイビー・ドウ(子鹿)のバラード》の抜粋。プッチーニやワーグナーを思わせる旋律がアメリカならではの超絶リズムで埋め尽くされる。加えてオペレッタで人気を博したV.ハーバートの作品も。さらに20世紀のバーバーの代表作《アントニーとクレオパトラ》より〈Oh, Give me my robe〉なども演奏される。 後半はエンターテインメント性が強い作品が選ばれた。ガーシュウィン《ポーギーとベス》より〈サマータイム〉、バーンスタイン《キャンディード》からはコロラトゥーラ・ソプラノの超絶技巧アリアとして知られる〈Glitter and be Gay〉。存命している巨匠S.ソンドハイム作品は《カンパニー》や《リトル・ナイト・ミュージック》といったミュージカルからのナンバーが取り上げられる。前後半あわせて実に30曲以上が披露されるのだ。 公演監修は広渡勲が務め、林田直樹がナビゲート、そして柴田は企画、構成、ステージングを担当する。歌手は柴田のほか、浅川荘子、安陪恵美子、大津佐知子、富永美樹、中島佳代子(以上ソプラノ)、勝倉小百合、田辺いづみ(以上メゾソプラノ)、蛭牟田実里(ヴォーカル)、杉野正隆(バリトン)、河野鉄平(バス)と総勢11人が出演。英語のリズムの楽しさを体感できるコンサートになるに違いない。柴田智子

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