eぶらあぼ 2017.11月号
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51 ©T.Kaneiwaバルトルド・クイケン(フルート)&渡邊順生(チェンバロ)11/27(月)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/※18:00~18:20 クイケン著『楽譜から音楽へ—バロック音楽の演奏法』(道和書院)の刊行を記念した、クイケンと渡邊によるスペシャル・プレ・トークあり。渡邊順生(チェンバロ)旧知の仲の名匠2人がバッハで共演取材・文:宮本 明Interview 現代日本を代表するチェンバロ奏者・渡邊順生が11月、バルトルド・クイケンとともに、J.S.バッハのフルート作品全曲演奏会を開く。クイケン兄弟との交流は、1970年代にアムステルダムのグスタフ・レオンハルトのもとで学んでいた頃からだそう。 「だからもう40年以上。私のオランダ留学と同じ時期に、友人の有田正広さんがブリュッセルでバルトルドについていたので、僕もしょっちゅう遊びに行ってたんです。でも、共演するのは実は今回が初めて。バッハについてはバルトルドは自分の校訂楽譜も出版するぐらい非常に熱心に研究していますから、まずバッハの作品があって、あとは言葉の要らない、音と音との対話ができると思います」 今回演奏する5曲はバッハの真作と判定されているフルート作品のすべて。この5曲がバッハの室内楽作品の非常に重要なグループを形成していると語る。 「ヴァイオリンで言えば、まず無伴奏の6曲があって、研究者の関心はともするとこちらに向きやすいのですが、一方でヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタが6曲あります。バッハは通奏低音ではなく、チェンバロの両手のパートとヴァイオリンのパートを3段譜で書いている——つまりこれは2人で演奏するトリオ・ソナタという形式であるわけで、それがひとつの重要なカテゴリーを形成していると言えます。もう一つ、旋律楽器と通奏低音のためのソナタというものがある(ヴァイオリンのソナタは2曲)。これはバロック期の最も一般的な室内楽の形式ですが、バッハのものはとてもユニークです。それは、旋律とハーモニーとバスの関係性が非常に独特だから。他の作曲家の作品では、バスがハーモニーの領域に属している。ところがバッハの音楽というのは、ハーモニーに対して、旋律はもちろん、バスも独立している。そこが他の人にはまったく真似のできなかったところだと思います。 フルートの場合は、無伴奏が1曲、オブリガート・チェンバロの曲が2曲、通奏低音の曲が2曲。ちょうど70分ぐらいなので、この3種類を全部、一回のコンサートで演奏できる。バッハの室内楽の縮図がいちどきに体験できるのだから、非常に面白い。にも関わらず、そういう企画はあまりなかったのです」 さらに今回は横浜で、「音楽の捧げもの」と「管弦楽組曲第2番」を演奏するコンサート(11/19 横浜みなとみらい小ホール)もあるのでこちらも楽しみだ。 出会いから40年以上で初めて実現する二人の巨匠の共演によるバッハ。もしこれを聴き逃したら…、痛すぎる!?エクス・ノーヴォ室内合唱団演奏会 vol.8モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」初期バロックの巨匠が目指した響きに迫る文:笹田和人 メモリアル・イヤーに相応しい名演と出逢えそう。指揮者でテノール歌手、作曲家の福島康晴が主宰する「エクス・ノーヴォ室内合唱団」が、クラウディオ・モンテヴェルディにより、1610年に出版された教会音楽の名品「聖母マリアの夕べの祈り」に対峙する。 ミラノ市立音楽院古楽科などに学び、モンテヴェルディの生誕地クレモナでも研鑽を積んだ福島により、2014年に設立された同合唱団。1パート1~3人の小編成でハーモニーを磨き上げ、後期ルネサンスからバロックの宗教作11/15(水)19:00 東京文化会館(小)問 ムジカキアラ03-6431-8186http://exnovochamberchoir.com/福島康晴 ©Izumi Saito品の美を追究して来た彼らは、モンテヴェルディ生誕450年の今年を、ひとつの目標に置いてきた。 福島の指揮で臨む今回は、ソプラノの阿部早希子ほか中堅と若手の実力派歌手を揃え、一次資料に基づき、1パート1人に限定。やはり最小人数の一方、通奏低音にテオルボ(大型リュート)3本を含めた珍しい編成をとる器楽陣も、時代特有の語法を知り尽くした名手で固める。さらに、福島の資料研究によって、テンポ設定も大幅に見直し。「初演を耳にした聴衆もかくや」という鮮烈な感動を蘇らせる。

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