eぶらあぼ 2017.11月号
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45日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会2017 第九交響曲全力投球の“歓喜”に浸る熱い年末文:柴田克彦大井剛史(指揮)12/17(日)18:00 サントリーホール12/21(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール小林研一郎(指揮)12/23(土・祝)18:00、12/26(火)19:00 横浜みなとみらいホール12/25(月)19:00 サントリーホール12/27(水)、12/28(木)各日19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ 日本フィルの年末「第九」は常にホットだ。まずはおなじみ小林研一郎の公演。ハイテンションで振幅の大きな表現に、日本フィルとその合唱団等々が全力で呼応した「第九」は、圧倒的な高揚感と感動を求める人の期待に、必ずや応えてくれる。コバケンは今年77歳だが、驚いたのは昨年大晦日の「ベートーヴェン全交響曲連続演奏会」(オケは別団体)。8つの交響曲を振った後にパワフルな熱演を披露し、「第九」が“炎のマエストロ”の炎を最大限に燃焼させる事実を改めて知らしめた。それゆえ「第九」演奏の手兵=日本フィルとの公演は、今回も見逃せない。 もう一人、大井剛史の登場も要注目。1974年生まれの彼は、2008年ペドロッティ国際指揮者コンクールで第2位を獲得後、ニューフィル千葉(現・千葉響)や山形響のポストを歴任し、現在佼成ウインドの正指揮者を務めている。彼の強みは、オペラ、バレエや内外の舞踊公演での豊富な経験。よって生まれる劇的で生命力溢れる音楽は、さらなる開花を予感させる。今回の「第九」が飛躍の契機となる可能性も十分だけに、この公演にも熱視線を注ぎたい。 前半の演目も興味深い。コバケンの公演では、石丸由佳のオルガン独奏でバッハの「トッカータとフーガ 二短調」等が披露され、各会場のパイプオルガンの名器の響きを堪能させる。大井の公演は「ジークフリート牧歌」。「第九」の復活演奏を行って普及の礎を築いたワーグナーの作品を置いた意味あるプログラミングだ。なお歌手陣には日本を代表するスターがズラリ。日本フィルもますます重層感を増しているだけに、今年も期待は大きい。大井剛史 ©K.Miura第23回藤沢市民オペラ プッチーニ:歌劇《トスカ》生まれ変わった藤沢市民オペラが《トスカ》に初挑戦!文:宮本 明11/19(日)、11/23(木・祝)、11/25(土)、11/26(日)各日14:00 藤沢市民会館問 藤沢市みらい創造財団 芸術文化事業課0466-28-1135 http://f-mirai.jp/ 1973年に始まった藤沢市民オペラは、市民参加型オペラの草分け。福永陽一郎(1926~90)や畑中良輔(1922~2012)ら、アマチュアの合唱指導にも積極的に尽力した名伯楽のもと、地元アマチュアの合唱とオーケストラ、日本を代表するオペラ歌手たちが結集して、2013年まで、40年間に22の舞台を生み出してきた。そして15年からは3年を1サイクルとする新たな枠組みに方向転換。1年目は外部オペラ・カンパニーの招聘、2年目は市民も参加しての演奏会形式オペラ上演、そして3年目に従来と同様のフル演出によるオペラ上演と、毎年欠かすことなく、変化のあるオペラ公演を楽しめるシステムになった。その最初の3年間は芸術監督に園田隆一郎を迎え、16年2月に藤原歌劇団のプッチーニ《蝶々夫人》、同年10月に演奏会形式のロッシーニ《セミラーミデ》(これが実質的な日本初演!)を上演。オペラ・ファンや専門家たちも絶賛するハイレベルな公演となった。 そしていよいよこの11月に、第23回公演としてプッチーニ《トスカ》が上演される。指揮は芸術監督の園田、演出・粟國淳。歌手陣はダブル・キャストで、トスカが砂川涼子/佐藤康子、カヴァラドッシが村上敏明/笛田博昭、スカルピアが大沼徹/黒田博ほか、充実の陣容だ。藤沢市民オペラの新たなチャレンジに最初の答えが出る瞬間。ぜひ自分の目と耳で確認したい。小林研一郎 ©浦野俊之左より:園田隆一郎 ©Fabio Parenzan/砂川涼子/佐藤康子 ©Yoshinobu Fukaya/村上敏明/笛田博昭 ©Taikan Usui/大沼 徹/黒田 博

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