eぶらあぼ 2017.11月号
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41エマニュエル・クリヴィヌ(指揮) 読売日本交響楽団 「第九」フランスの名匠が目指す新時代の「第九」文:飯尾洋一12/17(日)、12/23(土・祝)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール12/19(火)、12/20(水)各日19:00 サントリーホール12/21(木)19:00 大阪/フェスティバルホール12/24(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/※12/17、12/23、12/24公演は完売。 もうすぐ「第九」の季節がやってくる。暮れの風物詩として、「第九」は毎年でも聴きたい作品であるが、だれが指揮をするかは気になるところ。今年、大いに話題を呼びそうなのは読売日本交響楽団を指揮するエマニュエル・クリヴィヌではないだろうか。 クリヴィヌは1947年生まれのフランスの指揮者。日本では比較的早くから録音を通じてその名が知られているベテランである。リヨン国立管弦楽団の音楽監督を務め、演奏水準を飛躍的に向上させて名声を高めた。今年9月には、フランス国立管弦楽団の音楽監督に就任している。おもしろいのは、2000年代に入ってからピリオド楽器のオーケストラであるラ・シャンブル・フィルハーモニークを創設して旋風を巻き起こしたところ。すでにモダン・オーケストラで実績豊富な指揮者としては珍しいケースだろう。近年、クリヴィヌはラ・シャンブル・フィルハーモニークとともにベートーヴェンの交響曲全集をNaïveレーベルに録音し、清新な演奏で大きな話題を呼んだ。 そんなクリヴィヌが読響と共演する「第九」。はたしてどんな演奏になるのだろうか。クリヴィヌの目指すスタイルと、オーケストラが持つスタイルのぶつかりあいは、きっと興味深い結果をもたらすはずである。 インガー・ダム=イェンセン、清水華澄、ドミニク・ヴォルティヒ、妻屋秀和という万全の独唱陣に加えて、定評ある新国立劇場合唱団が共演するのも心強い。やはり合唱あっての「第九」。盛大な「歓喜」で一年を締めくくりたい。読売日本交響楽団 ©読響ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団ファイナル・ステージもマエストロならではのプログラムで文:飯尾洋一第845回 定期演奏会 Bシリーズ12/16(土)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 東京都交響楽団で8年間にわたって首席客演指揮者を務めてきたヤクブ・フルシャ。そのステージの掉尾を飾るのはマルティヌーとブラームスを組み合わせた意外性のあるプログラムだ。 マルティヌーの交響曲第1番とブラームスの交響曲第1番というダブル「第1番」プロは、この指揮者ならでは。フルシャは母国チェコを代表する20世紀の作曲家マルティヌーにとりわけ力を注いできた。この交響曲第1番は1942年の作品。つまり、ナチス侵攻を逃れてマルティヌーがアメリカに渡った翌年に書かれている。したがって、そこに悲劇的な色調を聴きとることも可能だろう。一方で、作品からはマルティヌーならではの躍動感やダイナミズム、機知も感じられる。実演で聴ける機会は貴重だ。 一方、ブラームスの交響曲第1番は名曲中の名曲。現在、ドイツのバンベルク交響楽団の首席指揮者を務めるフルシャにとって、ブラームスもまた重要なレパートリーとなっていることだろう。フルシャは「自分とブラームスの関係はゆっくりと成熟してきた」と語っている。当初はエモーショナルな面に焦点を当てていたが、次第に曲の論理的な構造へと関心が向くようになったというのだ。考え抜かれた解釈を聴かせてくれるにちがいない。 欧州で躍進著しいフルシャだが、都響でのポストは本人のキャリアにも大きな意味があったはず。記憶に残るラスト・ステージになるのでは。ヤクブ・フルシャ ©堀田力丸エマニュエル・クリヴィヌ ©Julien Becker

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