eぶらあぼ 2017.11月号
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186CDCDCDアルカン ピアノ・コレクション3「風のように」/森下 唯エルガー:交響曲第1番、ヴァイオリン協奏曲/漆原朝子ブラームス&シューマン:ヴァイオリン・ソナタ集/本吉優子&林 典子アルカン:「すべての短調による12の練習曲」より第1番~第3番・第11番・第12番、悲愴な様式による3つの曲森下 唯(ピアノ)エルガー:交響曲第1番、ヴァイオリン協奏曲漆原朝子(ヴァイオリン)ジョセフ・ウォルフ(指揮)兵庫芸術文化センター管弦楽団ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」シューマン:同第2番本吉優子(ヴァイオリン)林 典子(ピアノ)コジマ録音ALCD-7216 ¥2800+税収録:2017年4月、兵庫県立芸術文化センター(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7846-7(2枚組) ¥3500+税Timbre(Yuko Motoyoshi)YUNO-1705 ¥2000+税森下唯の「アルカン ピアノ・コレクション」第3弾。極めて難易度が高く饒舌なアルカンの音楽であるが、本作でも森下はエッジの効いた演奏で聴き手を惹き付ける。「すべての短調による12の練習曲」のうち第4〜7番(「交響曲」)をシリーズ1枚目に、第8〜10番(「協奏曲」)を2枚目に収録してきたが、今回で残りの5曲を収め完結させた。さらに愛と死をテーマとした「悲愴な様式による3つの曲」では、アルカンのロマン主義的な語り口を濃淡豊かに伝える。第3曲「死せる女」は圧巻。森下自身によるプログラムノートからも作品の魅力がクリアに浮かび上がる。    (飯田有抄)今年4月の兵庫芸術文化センター管定期ライヴ。実演で聴いた感銘が蘇る。エルガーの大曲2曲のうちヴァイオリン協奏曲が感銘深い。漆原朝子の独奏は、清潔な高音と豊かな広がりのある低音が魅力的で、作品の高貴な佇まいを浮かび上がらせる。特に緩徐楽章の繊細な表情づけの夢幻の世界が美しい。終楽章の大きなカデンツァの静かな抒情も聴き所。交響曲第1番では、冒頭の楽想が循環主題となって全曲にわたり変奏されて現れる。指揮者のジョセフ・ヴォルフは構築の要点を押さえて面白く聴かせる。終曲の最後の主題回帰は懐かしささえ感じさせる。見事だ。 (横原千史)共にドイツへの留学経験を持つ2人のデュオ。日本センチュリー響で活躍する本吉優子と、国内外の巨匠たちとの室内楽などで卓越した音楽性を発揮する林典子。今回は、2つの名ソナタを取り上げ、魅力的な響きを構築している。まず、両奏者に共通するのは、フレーズの歌い出しの美しさ。例えば、「雨の歌」の第1楽章、先行するコードで林が創った静謐な雰囲気に、本吉の音色がすっと寄り添う。一方で、シューマン冒頭楽章でのコラールの引用など、本吉はffの場面にあっても、過剰なヴィブラートに頼った力ずくの解決をせず、右手の表現を優先。対する林も、繊細かつ自在なタッチで応える。 (笹田和人)CDピアノ・カラーズ/加藤昌則加藤昌則:「鍵盤のつばさ」テーマ曲、風と海とカッペリの花/ショパン:ワルツ第9番「別れ」/ポッツォーリ:海の反映/ラヴェル:ハイドンの名によるメヌエット/ラフマニノフ(加藤昌則編):ヴォカリーズ 他加藤昌則(ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25943 ¥3000+税作曲家・ピアニストとして幅広い活躍を展開する加藤昌則の魅力が凝縮されたディスクである。ショパンやラヴェル、ラフマニノフといった作曲家の小品をはさみながら、旋律性豊かな自作を配置していくという構成が魅力的で、タイトル通り、様々な“カラー”を見せてくれる。明確なストーリーがあるコンセプト・アルバムではないものの、それぞれに色彩豊かな世界を持っている小品たちを通して聴いていると、まるで絵本の世界へと入り込んでいくような感覚になる。加藤の繊細なタッチ、ニュアンスの多彩なピアノももちろん魅力的だ。         (長井進之介)

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