eぶらあぼ 2017.11月号
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182SACDCDCDCDシューベルト:3つのピアノ曲D.946、幻想曲D.940/高橋アキ武満 徹:管弦楽曲集/山田和樹&日本フィルチェンバロとピアノの狭間で ~タンゲンテンフリューゲルで弾く18世紀の鍵盤音楽~/渡邊順生吹奏楽燦選 ザノーニ/大井剛史&東京佼成ウインドシューベルト:3つのピアノ曲、12のドイツ舞曲(レントラー)、ディアベリのワルツによる変奏曲、4手のための幻想曲、「美しい水車屋の娘」(ピアノ独奏版/A.ホルン編)より高橋アキ(ピアノ)コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)武満徹:オリオンとプレアデス、夢の時、系図 -若い人たちのための音楽詩-、ア・ストリング・アラウンド・オータム、ノスタルジア、星・島、弦楽のためのレクイエム山田和樹(指揮)扇谷泰朋(ソロ・ヴァイオリン) 赤坂智子(ソロ・ヴィオラ) 菊地知也(ソロ・チェロ) 上白石萌歌(ナレーター)日本フィルハーモニー交響楽団J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より、半音階的幻想曲とフーガ/C.P.E.バッハ:スペインのフォリアと12の変奏曲、幻想曲「C.P.E.バッハの感情」/ハイドン:ソナタ第23番/モーツァルト:ソナタ ト長調 他渡邊順生(タンゲンテンフリューゲル)P.クレストン:ザノーニ/C.ウィリアムズ:ザ・シンフォニアンズ/J.マッキー:オーロラの目覚め/木下牧子:序奏とアレグロ/I.ゴトコフスキー:炎の詩 他大井剛史(指揮)東京佼成ウインドオーケストラカメラータ・トウキョウCMCD-28346 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCL-00644(2枚組) ¥4200+税コジマ録音ALCD-1168 ¥2800+税ポニーキャニオンPCCL-50016 ¥2500+税高橋アキによるシューベルト第6集は初めてソナタ以外の作品のみで構成。今回は使用楽器と録音会場が変わっているがその効果は大きく、ふくよかで柔らかい音質がいかにもシューベルトにふさわしい。演奏も、例えば冒頭に収められた「3つのピアノ曲」に明らかなように、通例よりもゆったりとしたテンポの中で細部まで血の通った温かみある歌に溢れていて絶品。シューベルトの音楽に潜むデーモンをニューロティックに客体化するのではなく、演奏者が作品を血肉化して自然に振る舞っているようにしか聴こえない匠の技。そして、それがシューベルトの本質と深い所で共鳴しているのだ。 (藤原 聡)山田和樹&日本フィルによる武満作品集は1980年代を中心に7作を2枚に収めた。実演では各曲がマーラーと組み合わされたが、山田の狙いは後期武満の甘美な世界が後期ロマン派と血脈を通じることを示す点にあったのではないか。それほどまでにここで音は柔らかく溶け合い、官能は濃密に歌いあげられる。他に比べればやや鋭角的な演奏とはいえ、そうした特性は出世作「弦楽のためのレクイエム」にすでに見られるのだ、とも。協奏的作品では菊地(チェロ、オリオンとプレアデス)、扇谷(ヴァイオリン、ノスタルジア)といったソロ団員が佳演を聴かせ、近年の日本フィルの充実ぶりもうかがえる。(江藤光紀)歴史的鍵盤楽器の演奏と研究で、楽壇をリードする渡邊順生。今回は、ピアノと全く違う打弦機構を持ち、むき出しの木製ハンマーで不思議な音色を生み出す、タンゲンテンフリューゲル(タンジェントピアノ)に焦点を当てた。その独特の響きによって、バッハ父子やハイドン、モーツァルトと開発の途上に“奏でられたかもしれない”作品には、全く新たな視点がもたらされる。また、普段から清澄な演奏を展開する渡邊だが、今回は努めて恣意的な表現を排しているかのよう。だからこそ聴き手は、未体験の音色を通して、飽くなき理想の響きへの探求の歴史に、思いを馳せることができる。 (寺西 肇)「吹奏楽燦選」シリーズの第4弾。知名度の有無を問わない傑作オリジナル曲を、日本のトップ吹奏楽団が正指揮者のもとでセッション録音した、意義深いアルバムだ。アメリカの4曲、1982〜90年の日本のコンクール課題曲4曲、フランスの2曲をそれぞれ作曲順に配置した構成は、カタログ的にも秀逸だし、演奏はもちろん的確かつ最上。特にマッキーやゴトコフスキー作品の、耳慣れたテイストと異なる音楽は、極めて鮮烈で聴き応えがあり、力みなく運ばれる課題曲も作品としての魅力を再認識させる。知る、見直す、楽しむ…の何れの要素も兼ね備えた好盤。     (柴田克彦)

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