eぶらあぼ 2017.10月号
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85鈴木秀美 J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 全曲演奏会バッハの名手が“聖典”と改めて深く向き合う文:寺西 肇第1回 11/3(金・祝)14:00 第2回 11/10(金)19:00浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/特別講座 J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」の魅力10/7(土)13:00 朝日カルチャーセンター新宿教室問 朝日カルチャーセンター新宿教室03-3344-1945http://www.asahiculture.jp/shinjuku/ 「過去の作品を楽しむなら、それぞれの作品がいつも新鮮に響くように私達は出来る限りの努力をするべきである」。世界的なバロック・チェロの名手で、卓越した指揮者としても活躍、そして楽壇随一の名文家として知られる鈴木秀美。最新エッセイ集『通奏低音弾きの言葉では、』(アルテスパブリッシング刊)の中で、こう述べている。そんな名手が、「チェリストの聖典」こと、バッハの「無伴奏チェロ組曲」全6曲に再び対峙する。 18世紀オーケストラや、兄で鍵盤楽器奏者の雅明が主宰するバッハ・コレギウム・ジャパンなど、主要な古楽団体に参加する一方、自身もオーケストラ・リベラ・クラシカを設立し、指揮者として活躍。そして、ソリストとしても精力的に活動する中、常に軸に据えて来たのが、バッハの「無伴奏チェロ組曲」全6曲であった。2009年には、全6曲の楽譜の校訂を自ら手掛け、詳細な解説を付して出版(『無伴奏チェロ組曲』東京書籍刊)。幾度もステージで取り上げ、レクチャー(公演にあわせて10/7に開催)も重ねているが、決してルーティンに陥らず、瑞々しい響きを紡ぎ続けている。 浜離宮朝日ホールで12年ぶりとなる鈴木の「無伴奏組曲」全曲演奏は、第1回(第1、3、5番)と第2回(第2、4、6番)、2つのステージに分けて。鈴木は言う。この作品を演奏する際には「この組曲が言葉として語られ、見え隠れする声部の織り成す綾が楽しめるようにするためには、時に“反チェロ的”な奏法が必要だ」。こうして、彼のチェロが饒舌に語り出す瞬間を、ぜひ体感してみたい。©K.Miuraエベーヌ弦楽四重奏団クァルテットの新たなスタイルを追い求める個性派集団文:片桐卓也CLASSIC Program 10/7(土)17:00CLASSIC+JAZZ Program 10/10(火)19:00(完売)Hakuju Hall 問 メロス・アーツ・マネジメント03-3358-9005他公演(CLASSIC+JAZZ Program)10/8(日)びわ湖ホール(小)(077-523-7136)、10/9(月・祝)フィリアホール(045-982-9999)、10/12(木)高崎シティギャラリーコアホール(027-328-5050)、10/14(土)松本市音楽文化ホール(0263-47-2004)、10/15(日)小金井 宮地楽器ホール(042-380-8099)※今回のツアーには、両手首の腱炎のため来日できなくなったヴィオラ奏者のアドリアン・ボワソーに代わり、室内楽奏者として活躍するマリー・シレムが参加します。 その登場は、一種の衝撃であった。本格的なクラシック音楽に取り組む弦楽四重奏団が、次の瞬間にはジャズやロックを弦楽四重奏で、あるいは歌(コーラス)で披露する。それがフランスから登場したエベーヌ弦楽四重奏団である。すでに来日を重ねているので、その変貌を目の当たりにした方も多いだろうが、何度聴いても、彼らの演奏は楽しいし、素晴らしい。 今年はHakuju Hallで2回のコンサートを行う。10月7日の「クラシック・プログラム」では、ハイドン「五度」、フォーレ、ベートーヴェン「大フーガ付き」、10月10日の「クラシック+ジャズ・プログラム」では、前半にモーツァルト「K.421」とベートーヴェン「セリオーソ」、後半にはセロニアス・モンク「ラウンド・ミッドナイト」、ヴィクター・ヤング「星影のステラ」、チャールズ・ミンガス、ブラッド・メルドーなどの作品が演奏される。 どちらを選ぶかは悩ましい問題なのだが、個人的には「クラシック・プログラム」を選びたい。というのも、なかなか実演で聴くことが出来ないフォーレの弦楽四重奏曲(op.121)が入っているからだ。すっかり手の内に入ったエベーヌのフォーレの演奏は、なかなか日本では到達できないレベルである。また後半がベートーヴェンの「大フーガ付き」という大作になっていることも良い。もちろんジャズも聴きたい、という方は両日、どうぞお出かけ下さい。©Julien Mignot

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