eぶらあぼ 2017.10月号
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80©Hirofumi Isakaマキシミリアン・ホルヌング(チェロ)&河村尚子(ピアノ) デュオリサイタル10/11(水)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/他公演10/9(月・祝)山形/白鷹町文化交流センターあゆーむ(0238-85-9071)10/12(木)京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(075-711-3231)河村尚子(ピアノ)室内楽の聖地で絶賛されたスーパーデュオ取材・文:柴田克彦Interview 国際的な実力派ピアニスト、河村尚子は、この10月にドイツの俊才チェリスト、マキシミリアン・ホルヌングとデュオ・リサイタルを行う。彼は23歳でバイエルン放送響の第1首席奏者に就任し、2013年以降はソリストとして活躍。ソニーからリリースされたCDでも高い評価を得ている。 「3年前の日本ツアー以来、年10回以上共演しているメイン・パートナー。彼は情熱をもちながら自然に流れるように演奏し、歌心をとても大事にしています。それに本番での自由さを求めますので、私もやりたいことができると同時に、彼に応えてあげたくもなります」 今回は、ブラームスの2つのチェロ・ソナタを軸に“歌心”が生きるプログラムが組まれている。 「ブラームスの2番は彼の十八番。チェロでは弾かれないマーラーの歌曲集『さすらう若人の歌』、シューマンの中ではあまり演奏されない『5つの民謡風の小品集』が入っていますので、オリジナリティもあります」 中でも珍しい「さすらう若人の歌」(ホルヌング編曲)が目をひく。 「マーラー自身が書いたピアノの伴奏でチェロが歌うかたち。構成自体は原曲と同じです。チェロは声と音域が似ていますし、ヴィブラートなどを用いて、歌に近い感じを出すことができます。それに私は学校でマーラーの交響曲第1番(この歌曲集と素材が共通)を勉強していたとき、『さすらう~』の管弦楽版をよく聴いていました。素晴らしい曲なのでいつか弾きたいと思っていましたし、ピアニストはマーラーを演奏する機会がないので、弾けるのはとても嬉しいですね」 ブラームスのソナタは、共にチェロの看板曲だ。 「1番は、情緒的で暗い雰囲気の音楽ですが、バッハの『フーガの技法』のテーマに基づいた終楽章が聴きどころ。2番はパッションに溢れた曲で、感情が爆発するようなパッセージが沢山入っています。また1番は古典的で音楽の厳しさがあり、2番はもう少し解放されているといえるでしょうか」 彼女は、2番の第2楽章が「憧れの曲だった」という。 「子どもの頃にCDで聴いて、ピアノが弾くテーマを伴奏しながらどんどん豊かになっていくチェロのピッツィカートの響きに憧れました。楽章全体も情熱的かつ感傷的で、両楽器の掛け合いが見事だなぁと、弾きながらいつも感じています」 彼女はまたチェリストとの共演が多い。 「チェロは低域が聴こえにくくなるので、そのぶんピアノは柔らかく控えめに弾くなど、ソロや他の室内楽とは気遣いに違いがあります。でもその音色やピアノで歌うのが難しい中低域の歌は魅力ですね」 本ツアーは、「安心感があって好き」と語る紀尾井ホールなど3公演のみ。“室内楽の聖地”、ロンドンのウィグモア・ホールでも絶賛されたデュオを、お見逃しなく!テイツィアーナ・ドゥカーティ(ソプラノ) オペラコンサート《トスカ》ハイライトなどを至宝の美声で文:笹田和人 名だたる声楽コンクールで「出場すなわち優勝」と言われるほどの輝かしい実績を重ね、ヨーロッパ中の檜舞台で活躍するソプラノのテイツィアーナ・ドゥカーティ。日本の音楽ファンの前に再び降り立ち、イタリア伝統のベル・カントと幅広い表現力を備えた、至宝の美声を聴かせる。 今回は、昨年4月の熊本地震で被災した、平成音楽大学を支援するステージに。九州唯一の音楽単科大学の同校は甚大な被害を受けたが、地震の翌月には全授業を再開。ドゥカーティは10/20(金)19:00 紀尾井ホール問 テイツィアーナ・ドゥカーティ後援会  080-2744-1015(岩永)2015年に同校の主催により、熊本県立劇場で開かれた「華麗なる音楽の祭典」に出演。その縁で、今回の収益金を復興のために寄付する。 ピアノの山口研生と、やはり11年に「華麗なる~」へ出演した、バリトンの井上雅人が共演。プッチーニ《トスカ》のハイライトをはじめ、サン=サーンス《サムソンとデリラ》から〈私の心はあなたの声に花開く〉などオペラの名シーンをたっぷりと。さらに、山口がソロで、タールベルク「ランメルモールのルチアによる幻想曲」も披露する。

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