eぶらあぼ 2017.10月号
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67鎌倉芸術館リニューアル記念公演仲道郁代ピアノ・リサイタル PIANO×44台の名器を駆使しての華麗なるステージ文:長井進之介11/25(土)16:00 鎌倉芸術館問 鎌倉芸術館チケットセンター0120-1192-40 http://www.kamakura-arts.jp/ 鎌倉市を代表する芸術施設としてオープンし、今年開館24年を迎える鎌倉芸術館。この1月より大規模改修工事による休館に入っているが、10月にリニューアルオープンする。それを記念したイベントやコンサートが次々と予定されており、中でも注目されるのが、11月に開催される仲道郁代によるリサイタルだ。 今年デビュー30周年を迎えた彼女は、レパートリーをさらに拡大しているだけではなく、室内楽の演奏や教育活動、アウトリーチ活動にも積極的に取り組み、さらに音楽表現と活動の幅を広げている。ヒストリカルピアノにも精通した仲道はピアノという楽器を知り尽くすアーティストでもあるが、そんな彼女を迎えて開催されるのが、鎌倉芸術館の所有する4台のフル・コンサート・グランドピアノをすべて使用してのリサイタルだ。 仲道は開館当時に芸術館のピアノ選定に関わっており、所有ピアノの魅力を最も良く知る存在でもある。使用されるピアノは欧米を代表する、名器スタインウェイ D-274にベーゼンドルファー MODEL290、そして日本が誇るヤマハ CFⅢ-Sにカワイ EX。 プログラムはショパンの練習曲にラフマニノフの前奏曲という、指が鍵盤を縦横無尽に駆け巡る華やかな作品から、ドビュッシーの「月の光」など、響きの多彩さを存分に味わえるものまで多岐にわたる。ますます輝きを増していくピアニストによる豊かなピアノの世界を、リニューアルしてより充実した響きに包まれる会場で存分に楽しんでほしい。ハンヌ・リントゥ(指揮) 東京都交響楽団フィンランド独立100周年に贈る若きシベリウスの大作文:飯尾洋一第842回 定期演奏会 Aシリーズ11/8(水)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ フィンランドが生んだ名指揮者ハンヌ・リントゥが、東京都交響楽団とともにシベリウスの出世作「クレルヴォ交響曲」を披露する。リントゥはこれまでにも日本をたびたび訪れて、母国シベリウスの作品他で好演を聴かせてくれているが、今回は男声合唱と独唱者2名を要する大作「クレルヴォ交響曲」とあって注目が集まる。声楽陣もフィンランド・ポリテク男声合唱団とニーナ・ケイテル(メゾソプラノ)、トゥオマス・プルシオ(バリトン)のフィンランド勢がそろった。実はこの作品を1974年に日本初演したのは渡邉暁雄指揮の都響。オーケストラにとってもゆかりの作品ということになる。 若き日のシベリウスにとって、創作力の源泉となったのは民族主義。ロシア帝国内でフィンランドの自治権が侵食され、フィンランド独立への熱望が高まるなかで、シベリウスは愛国的な感情をよりどころとして作曲に立ち向かった。そして、たびたび作曲の題材として用いたのが、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」である。クレルヴォとはその「カレワラ」の登場人物のひとり。滅ぼされた一族の生き残りクレルヴォは怪力を持つ不死身の子として育ち、放浪の末にそれとは知らずに生き別れの妹と一夜をともにし、やがて破滅へと向かう。 この神話世界の物語に対して、リントゥは「クレルヴォは今日でも世界で起きている暴力や非行の象徴とも言える」と語り、作品の今日性に目を向ける。今この作品を聴く意味を考えさせられる。ニーナ・ケイテル ©Heikki Tuuliトゥオマス・プルシオ ©Eino Pursioハンヌ・リントゥ ©Veikko Kähkönen©Kiyotaka Saito

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