eぶらあぼ 2017.10月号
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53フェスティバルシティ・オープン記念 第55回大阪国際フェスティバル2017アンドリス・ネルソンス(指揮) ボストン交響楽団新時代の巨匠が名門楽団を率いて待望の来日文:江藤光紀11/4(土)16:00 フェスティバルホール問 フェスティバルホール チケットセンター06-6231-2221 http://www.festivalhall.jp/ アンドリス・ネルソンスがボストン交響楽団の音楽監督となって3年が過ぎたが、彼らの来日は今秋の目玉公演の一つ。就任早々契約延長が発表され、ショスタコーヴィチの交響曲全集はリリースする先からグラミー賞を受賞するなど、密度の濃い協働を発展させているからだ。 ネルソンスは世界トップ・オーケストラへの定期的な客演に加え、今シーズンはさらにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任するなど、30代にして“俊英”から“巨匠”へと名実ともに成熟しつつある。高い集中力を保ちオーケストラをダイナミックに鳴らすだけでなく、時には意表を突く解釈を聴かせるなどイマジネーションも豊か。まだ大きく変わる可能性も秘めているので、名門ボストン響(音楽監督に率いられての来日は小澤征爾以来18年ぶり!)との現在をこの機会にぜひ耳に刻み付けてほしい。 大阪公演では地元ボストンで進行中のショスタコーヴィチ・ツィクルスから、交響曲第11番「1905年」が演奏される。ロシア帝政軍による労働者弾圧、いわゆる「血の日曜日」事件を描いた大作で、軍が民衆に発砲する緊迫した場面や、死者への濃厚な哀歌が描き出される。不確実性を増す世界情勢をどこか連想させるこの曲に、彼らが込めるメッセージをしっかり受け止めたい。 前半に演奏されるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、甘美な音色でしなやかに旋律を紡ぎ出すギル・シャハムのソロで。ネルソンスの鮮やかなリード、しっとりした弦を中心とするノーブルなボストン響のサウンドを背景に、シャハムのヴァイオリンもひときわ輝きを増すことだろう。クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス 2017最先端の音楽プロジェクトが始動!文:片桐卓也11/3(金・祝)15:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ 指揮者を輩出するヤルヴィ家の中の“若者頭”とも言うべきクリスチャン・ヤルヴィが、すみだトリフォニーホールで『クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス 2017』を開催する。これは単年の企画ではなく、今後複数年にわたって継続される企画だが、その第1回目は、ピアノのフランチェスコ・トリスターノをゲストに迎える。 クリスチャン・ヤルヴィと言えば、もちろん指揮者として活躍している一方で、現在世界をリードする数々の作曲家たち、たとえばスティーヴ・ライヒ、マックス・リヒターなどとのコラボレーションで話題を集めている。彼自身のアンサンブルである「アブソリュート・アンサンブル」の活動は、最先端の音楽に敏感な若者たちの幅広い支持を得ている。ピアニストのトリスターノに関しても、日本での演奏活動で、その幅広い音楽性がクラシックの枠を超えた共感を呼んでいる。 今回の話題は、そのトリスターノの新作であるピアノ協奏曲「アイランド・ネーション」が日本初演されることだろう。これはクリスチャンが直接トリスターノに依頼した作品であり、その両者による日本初演は聴き逃せない。その他、クリスチャン作曲による父ネーメ・ヤルヴィの生誕80年を祝うコラールが日本初演され、さらにワーグナー(デ・フリーヘル編)の「オーケストラル・アドヴェンチャー《ニーベルングの指環》」も演奏される。オーケストラは新日本フィル。11月3日はすみだトリフォニーホールに駆けつけよう。フランチェスコ・トリスターノ ©Marie Staggat/DG左より:アンドリス・ネルソンス ©Marco Borggreve/ギル・シャハム ©Luke Ratray/ボストン交響楽団クリスチャン・ヤルヴィ ©Peter Admik

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