eぶらあぼ 2017.10月号
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46 川崎に新たな音楽芸術の拠点が誕生する。この10月1日にグランド・オープンを迎える川崎市スポーツ・文化総合センター、通称「カルッツかわさき」。同じく市が所有するミューザ川崎シンフォニーホールがコンサート専用であるのに対して、カルッツはより多目的に利用できる、客席数2,013のホール。プロセニアムとオーケストラピットを有する劇場は、オペラ、バレエ、ミュージカルはもちろん、反響板も備えており、コンサートホールとしても活用可能だ。 こけら落としは藤原歌劇団の豪華メンバーと市民合唱団も加わっての『オペラ・ガラ・コンサート』。そして10月22日にはマリエッラ・デヴィーア主演のベッリーニ《ノルマ》を上演する(今回が彼女の日本での最後のオペラ出演)。現在藤原歌劇団の本拠は川崎市内であり、今後も連携が期待できそうだ。 ユニークなのは、同施設の指定管理者として運営・維持管理を担当するアクサス川崎という特別目的会社に、市内に本部キャンパスがある昭和音楽大学が協力団体として参加していること。アートマネジメントコース設置の先駆者として20年以上の蓄積を持つ昭和音大ならではの展開だ。藤原歌劇団も同音大と関わりが深いわけで、市内の音楽・舞台芸術運営ノウハウを結集した態勢と言えるだろう。 「オペラ、バレエ、ミュージカル等、多彩な舞台芸術を楽しんでいただくことのできるオーケストラピットを備えた劇場です。自主事業は、このような特徴を活かした企画を中心に幅広く考えていきたいと思っております。また、市民の皆様の劇場として様々な場面で常に『市民参加』ということも意識していきたいと考えております」(ホール・アーティスティックディレクターの昭和音大教授・岸田生郎) 開館前のカルッツを訪れた。JRと京急・川崎駅の東側(海側)1キロほど、かつて川崎市体育館などがあった跡地。新ホール自体も、大小の体育施設や、会議室等の共用部分がひとつの建物に収められている珍しい施設だ(愛称カルッツは『カルチャー』と『スポーツ』を合成した造語)。施設全体としてはそこが大きな特徴で、音楽表現と身体表現が交差する場と本格的なオペラやステージアートを楽しめる劇場が川崎に誕生!取材・文:宮本 明してのさまざまな可能性を秘めて設計されている。 ホールはシューボックス型で、公称の残響時間は反響板使用時2.2秒(空席)/1.9秒(満席)、反響板なしで1.7秒/1.5秒。3層の客席は、最後部でも舞台との距離が近く、特に舞台ものには有利だろう。特徴的なのは舞台両袖の花道が1階客席の通路とフラットにつながったレイアウト。演者との一体感を強くさせる構造だ。また、客席の1階前方は視界を確保するために列を左右に半席ずつずらしているのだが、両端ぞろいにするために、片端に約1.5倍幅の席を設けて空きスペースを吸収している。座ってみると、なんだかとても贅沢な気持ちでうれしい。 本誌読者の興味の対象としては、今後どんな魅力的なオペラやバレエ、ミュージカルが、どんな特徴・コンセプトで上演されるのかが注目されるし、ミューザ川崎との棲み分けや、逆に積極的なリンクもさまざまに考えられるだろう。コンサート専用ホールと本格的なオペラ・バレエ上演が可能な劇場の両方を持つ自治体は多くないのだから。走り始める新劇場に期待が集まる。川崎市スポーツ・文化総合センター開館記念公演オペラ・ガラ・コンサート 10/1(日)15:00ベッリーニ:歌劇《ノルマ》 10/22(日)14:00カルッツかわさきホール問 「カルッツかわさき」川崎市スポーツ・文化総合センター開館準備室  044-201-2051※「カルッツかわさき」および各公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://acxs-kawasaki.esforta.jp/ホール内観カルッツかわさき川崎市スポーツ・文化総合センター オープン

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