eぶらあぼ 2017.9月号
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62ベートーヴェン 3つの弦楽三重奏曲 op.9 全曲演奏会9/24(日)16:00 宝塚ベガ・ホール問 KCMチケットサービス0570-00-8255 http://www.kojimacm.com/山智子(ヴィオラ/ロータス・カルテット)弦楽三重奏には若きベートーヴェンの覇気を感じます取材・文:宮本 明Interview シュトゥットガルトを拠点に活動するロータス・カルテット。25年にわたって活動を続ける息の長い弦楽四重奏団だ。その中の3人による弦楽三重奏を聴く希少な機会が、宝塚ベガ・ホールで1日だけ訪れる。ヴィオラの山智子に話を聞いた。 「十数年前に2回ほど、3人だけで弾いたことはありました。結構手応えはあって、かなり楽しめたんですけど、そのときは三重奏を続けていく気持ちにはならなかったですね。そのあとも年に1度ぐらい、小品を3人で弾くこともありますが、レパートリーがクァルテットとは比べられないほど少ないですから」 今回はセカンド・ヴァイオリン(=マティアス・ノインドルフ)を除くメンバー3人が、9月のいずみシンフォニエッタ大阪の演奏会に客演首席奏者として呼ばれたために急遽実現した。小林幸子(ヴァイオリン)、山智子(ヴィオラ)、齋藤千尋(チェロ)の3人は、ロータス・カルテットの古くからのメンバーだ。曲目はベートーヴェンの作品9の3曲の弦楽三重奏曲。1797年から翌年にかけて作曲された、ウィーン時代初期の作品である。 「普段は四重奏ばかりなので、まだ作品9全部を弾いたことはないんです。逆に言えば、お客さまにとっても、こういう機会はなかなかないということでしょうか。3曲目のハ短調だけは前に3人で弾いています。作品18の6曲の弦楽四重奏曲でいうと第4番に当たる感じで、カチッとしていて、これが一番入りやすいですよね」 (習作を除けば)最初の弦楽四重奏曲である作品18はこの作品9に続いて書かれた。四重奏のほうが生涯にわたって書き続けられてベートーヴェンの全創作を代表するジャンルになったのと対照的に、三重奏曲はこれが最後。独特の存在感を放つジャンルなのだ。 「ヴィオラ奏者の立場から見て、四重奏曲とはまったく違うキャラクターなんです。ソロを弾いたと思ったら、真ん中で伴奏形を一人で弾かなければならなかったり、チェロと一緒にバスを弾かされたり、とにかくあちこちに行かなくてはならない。だから最初にこの三重奏曲を聴いた時は、すごく難しいと思いました。ベートーヴェンって、いろんなことを書くんだな、奏者にいろんなことをやらせるんだなぁと。若さと意気込みをそのまま書いたみたいな、彼の頑張りが見える曲だと思います」 ちなみに、4人で弾く時と一番違うことは? と尋ねると、「うーん。あえて言うと、練習がドイツ語か日本語かですね(笑)」。 当然だけれど、音楽と向き合う姿勢は、四重奏でも三重奏でも変わらない。ベートーヴェン好きにとって必聴のコンサートとなりそうだ。BACH DANCE・MUSIC・PAINT 廣田あつ子 × 加藤訓子 × 広田 稔バッハが生み出す多層的な空間文:高橋森彦 「バッハを奏で、バッハを舞い、バッハを描く。」が謳い文句だ。パーカッショニスト加藤訓子が2017年にリリースしたニューアルバム『BACH』をもとに各界注目のアーティストが「バッハ」をテーマにした舞台に挑む。 加藤は国内外で活動し、スティーヴ・ライヒの「カウンターポイント」シリーズを打楽器に編曲したソロアルバムを発表するなどパーカッションの第一人者として名高く、池田芙美代、中村恩恵、黒田育世らダンスのクリエイターとも共演を重ねてきた。今回は自身のア9/22(金)~9/24(日) 東京芸術劇場 シアターイースト問 kuniko kato arts project 080-5075-5038 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296http://www.geigeki.jp/ルバムをモティーフに創造する新機軸で、気鋭のダンサー、振付家の廣田あつ子の振付を得て、穴吹淳、田澤祥子、中島瑞生、赤井綾乃というベテランから若手までの俊英ダンサーが集う。そして、洋画家・広田稔がライブペインティングとして参加し、音楽とダンス、美術が劇場空間で折り重なって溶け合う。 「バッハ」をキーワードに廣田×加藤×広田が生み出す新たなる世界を楽しみにしたい。
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