eぶらあぼ 2017.9月号
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60布谷史人(マリンバ) 協奏曲の夕べマリンバの更なる可能性を求めて文:長井進之介9/14(木)18:30 ロームシアター京都問 アスペン03-5467-0081 http://aspen.jp/ 布谷史人はアメリカとドイツで学び、現在はドイツを拠点に国際的な活躍を続けるマリンビスト。数々の国際コンクールを勝ち取ってきたが、特にアストル・ピアソラに関する音楽のみを課題とする、第3回リベルタンゴ国際音楽コンクールのソロ部門において、日本人初、しかもマリンバ奏者として初となる優勝を果たしたことは話題となった。 昨年はピアソラの作品集、クラシックの名曲による編曲作品集のCDを同時リリースし、今年2月にはこれらのレパートリーを引っ提げてリサイタルを開催。ソロ奏者として圧倒的な実力を見せつけたことが記憶に新しい。 9月には「協奏曲の夕べ」と題し、“十八番”のピアソラ作品を含め、超絶技巧満載の作品を京都で披露する。布谷をサポートするのが、この公演のためにチェリストの上森祥平を中心に結成された「関西弦楽合奏団」。セジョルネの「マリンバと弦楽合奏のための協奏曲」では日本を代表する若きオーケストラ奏者やソリストたちによる「関西弦楽四重奏団」も布谷と共にソロパートを務める。 プログラム中での注目は、やはりピアソラの「ブエノスアイレスの冬」だが、リコーダーのために書かれたヴィヴァルディ作品をマリンバでどう聴かせてくれるのか、また合唱作曲家として活躍目覚ましい信長貴富による新曲にも期待が高まる。“歌う”マリンビストの布谷の魅力が満載の作品となることであろう。布谷ならではの選曲が光る公演で、マリンバの更なる可能性に出会えるはず。布谷史人 ©Claudia Hansenトランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017プログラムも演技もいっそうパワーアップ!文:守山実花スヴェトラーナ・ザハーロワ『アモーレ』日本初演 9/26(火)、9/27(水)各日19:00 Bunkamuraオーチャードホール『パ・ド・ドゥ for Toes and Fingers』9/29(金)19:00 Bunkamuraオーチャードホール、10/1(日)18:00 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999(10/1以外) http://www.bunkamura.co.jp/ 昌賢学園まえばしホール027-221-4321(10/1のみ) http://www.maebashi-cc.or.jp/maebashishibun/ 2014年にはじまったトランス=シベリア芸術祭は、ヴァイオリニスト、ワディム・レーピンが「芸術をもうひとつの“旅”と考え、東西の架け橋としたい」と想いをこめ、“シベリア横断”の名を冠したもの。架け橋の東端となる日本で行われた昨年の公演では、レーピンと、そのパートナーで、バレエ界を代表するダンサー、スヴェトラーナ・ザハーロワの共演が大きな話題を振りまいた。 本年はさらにパワーアップした形での上演となる。プログラムは『アモーレ』と『パ・ド・ドゥ』の2つ。日本初演となる『アモーレ』は、3人の現代振付家が“愛”をテーマに振り付けた新作を上演。特に注目したいのは、ボリショイ・バレエ出身のユーリー・ポソホフ振付〈フランチェスカ・ダ・リミニ〉。ポソホフは、レールモントフ原作『現代の英雄』をボリショイ・バレエで初演、ロシア物語バレエの新たな可能性を拡げ、次作『ヌレエフ』も上演前から話題を呼んでいる。禁じられた愛に身を投じ、下界に堕とされていく恋人たちの悲劇を、チャイコフスキーの幻想曲とともに描き出す。前回も参加したボリショイ・バレエのミハイル・ロブーヒンに加え、若きプリンシパル、デニス・ロヂキンが出演するのも楽しみだ。 昨年も上演された『パ・ド・ドゥ』では、白鳥の死にレーピンが奏するヴァイオリンの音がそっと寄り添う〈瀕死の白鳥〉、ザハーロワをめぐる男性ダンサー2人の駆け引きに、舞台上で演奏するレーピンも参戦する〈レ・リュタン〉(振付:ヨハン・コボー)などを上演。目と耳で2人の強いパートナーシップを楽しむこともできる。 進化を続けるザハーロワの世界に期待したい。〈瀕死の白鳥〉より ©Massimo Danza〈フランチェスカ・ダ・リミニ〉より ©Alain Hanel
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