eぶらあぼ 2017.9月号
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33横山幸雄 ピアノ・リサイタル ベートーヴェン・プラス Vol.430代のソナタ群を様々な幻想曲とともに文:飯田有抄9/23(土・祝)10:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ ベートーヴェンの生誕250年にあたる2020年を目指して、横山幸雄が2013年から開始した『ベートーヴェン・プラス』。ベートーヴェンの作品番号付き全ピアノ作品のみならず、他の作曲家の関連作品も交えて構成されるコンサート・シリーズだ。毎回長時間の公演だが、昨年は「特別演奏会」としてベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲を一気に披露した。 第4回目の今年は「折り返し地点」。難聴による苦悩と葛藤の末に、30代となった俊英が「“世紀の芸術家”へと飛躍していった変遷」を追う。「7つのバガテル op.33」や「2つの前奏曲 op.39」、そしてピアノ・ソナタは名曲「月光」(第14番)と「テンペスト」(第17番)を含む第13~18番を取り上げる。「月光」とは俗称であり、ベートーヴェン自身が付けたタイトルは「幻想曲風ソナタ」であった。そこで今回は、他の作曲家の作品を“幻想曲”つながりで構成している。 幻想曲=ファンタジーとは本来、即興的な書法で創作された自由な形式の楽曲を指す。横山が選んだのはバッハの「半音階的幻想曲とフーガ BWV903」、モーツァルトの「幻想曲 K.397」、ショパンは「幻想ポロネーズ」を含む3作品、そしてシューマンの「幻想曲」だ。バロックからロマン派にいたる「幻想曲」の音楽史も辿れるというわけだ。激動の社会的変革期を生き、新しい音楽様式を切り開いたベートーヴェンの姿とともに、作曲家たちの創造性を映し出すファンタジックな世界を存分に楽しみたい。©ミューズエンターテインメント小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団円熟の名匠と話題のヴァイオリニストの共演文:江藤光紀第841回 定期演奏会Bシリーズ10/24(火)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057(ナビダイヤル) http://www.tmso.or.jp/ 終身名誉指揮者として昨年、都響デビュー40周年を祝った小泉和裕。地方の古民家に居を構え、自然の温もりから育ってくるものを音楽へと注ぎ込む。円熟のタクトからは生気に溢れた音楽が流れ出し、今や小泉は都響だけでなく日本中のオーケストラから求められる名匠となっている。 芸術の秋、10月のB定期で小泉が取り上げるのはフランクの交響曲ニ短調。フランス19世紀後半の交響曲運動が生み出した傑作で、3楽章構成、楽章間を統一する循環主題の使用など当時フランスで流行したスタイルを踏まえているが、同時にオルガニストでドイツ系の血を引くフランクの個性を反映して、渋くがっちりとした音楽に仕上がっている。ここ1年ほどの都響との共演では、小泉はドイツものを軸にロシアもので色を添えるという路線を取ってきたが、その傾向を踏まえながらも少し違った風趣が楽しめそうだ。 前半はアリーナ・イヴラギモヴァをソリストに据えたバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。これまでの来日ではベートーヴェンやモーツァルトのソナタ全曲など大型プロジェクトを筋の通った解釈で聴かせ、多くのファンを魅了してきた。意外なことに今回が在京オーケストラ定期へのソロ・デビューとなる。バルトークの2番は民謡風テイストやロマンティックな管弦楽法が、無調に至るモダンな音楽語法と一体化している。以前は古典的な演目が多かった彼女だけに、小泉&都響との掛け合いに加え、このハイブリッドな音楽をどう攻めるかといったあたりにも注目したい。アリーナ・イヴラギモヴァ ©Sussie Ahlburg小泉和裕 ©Rikimaru Hotta
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