eぶらあぼ 2017.9月号
151/181
160SACDCDCDCDモーツァルト:ピアノとヴァイオリンのための作品全集Ⅱ/漆原啓子&ヤコブ・ロイシュナープレイズ・ショパン/實川 風チャールダーシュ/赤坂達三高橋アキ プレイズ ハイパー・ビートルズ volume Ⅰモーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタK.372・K.376~380・K.402~404漆原啓子(ヴァイオリン)ヤコブ・ロイシュナー(ピアノ)前奏曲第15番「雨だれ」、スケルツォ第2番、幻想即興曲、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、ポロネーズ第6番「英雄」 他實川 風(ピアノ)メサジェ:コンクールの独奏曲/カユザック:カンティレーヌ/カミュ:バディヌリ/ボザ:ブコリック/テンプルトン:ポケット・サイズ・ソナタ第2番より/チャールダーシュ 他赤坂達三(クラリネット)寺嶋陸也(ピアノ)斎藤 順(コントラバス)ゴールデン・スランバー(武満徹編)、夜の光(P.ノアゴー編)、イエスタデイ(三宅榛名編)、ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット(J.テニー編)、ビコーズ(西村朗編) 他高橋アキ(ピアノ)日本アコースティックレコーズNARD-5057/8(2枚組) ¥3500+税アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1040 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4014 ¥2800+税カメラータ・トウキョウCMCD-28345 ¥2800+税日本人初、史上最年少でのヴィエニャフスキ国際コンクール優勝から30年余り。数々の檜舞台での活躍を経て、漆原啓子の紡ぐ音楽は円熟の域へ達した。フライブルク出身のピアノの名手、ヤコブ・ロイシュナーと臨んだ、3組のアルバムに分けてのモーツァルト・ソナタ全集の第2弾。漆原は裏拍の処理やヴィブラート用法など、時代に応じた様式感を踏まえつつ、モダン楽器の伸びやかさや表現の幅の広さを十分に生かす。一方のロイシュナーも、フォルテピアノを意識した粒立ちの良いタッチと、音の広がりを両立。端正さと丁々発止のスリリングさが同居する、極上の名演に仕上がっている。 (笹田和人)一昨年ロン=ティボー=クレスパン・コンクールで第3位に入賞、現在グラーツ国立芸大に留学中の實川風による新譜は、オール・ショパン。1曲目の「雨だれ」は、爽やかに始まるが曲に深く秘められた強い感情が次第に表出するような展開を見せ、聴きごたえ充分。スケルツォ第2番や幻想即興曲、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は清潔感のある音と品のある表現で、聴いていると気持ちがすっきりとする。曲ごとに落ち着いて物語を語り、同時につながりも美しく構成されているので、名曲集でありながら一つの流れが感じられる聴き心地のよいアルバムだ。(高坂はる香)日本を代表するクラリネット奏者が、欧州のコンクールで入賞して帰国後間もない1993年に録音したデビュー盤。本作は、「各作品の調性に合わせ、より細かなリマスター作業を施して」リニューアルし、人気奏者の当時の姿を清新なサウンドで再確認できるディスクとなっている。演奏自体は、しなやか且つ鮮やかで、才気とセンスの良さが横溢。フランスものを中心に、東欧の民俗ものが変化をつけ、聴き応えある本格作の後に軽妙な音楽が続く…といった構成も秀逸で、数曲に加えられたベースも効果を発揮している。赤坂及びクラリネットの魅力を満喫できる好盤。(柴田克彦)鶴首して待った、との形容が相応しい高橋アキの『ハイパー・ビートルズ』再録音。今回は内外15人の作曲家による編曲集。演奏者自身がブックレットにて旧録音の入手難について言及しているが、本作は単に“失われたカタログの穴埋め”ではもちろんなく、演奏内容もまた確実に深化している。「ゴールデン・スランバー」や「ドゥ・ユー・ウォント〜」といった抒情的な曲では情感の深みが増し、「夜の光」、「ビコーズ」などの技巧的な曲においての切れ味の鋭さはいささかも衰えていない。音質もまた優れており、柔らかな音像ながら芯のあるタッチをも明確に表出して秀逸。早くも続編に期待。(藤原 聡)
元のページ
../index.html#151