eぶらあぼ 2017.9月号
149/181
158CDCDCDCDドヴォルザーク:スターバト・マーテル/ビエロフラーヴェク&チェコ・フィルモーツァルト ピアノ・ソナタ集 Vol.5/友田恭子『Latina/内なる印象』ラテン名曲集/大木和音モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番・第5番「トルコ風」/豊嶋泰嗣&大阪響ドヴォルザーク:スターバト・マーテルイルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)中村恵理(ソプラノ)エリーザベト・クールマン(メゾソプラノ)マイケル・スパイアーズ(テノール)パク・ジョンミン(バス)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団プラハ・フィルハーモニー合唱団モーツァルト:パイジェッロの歌劇《哲学者気取り》の「主よ、幸いあれ」による6つの変奏曲、ソナタ第2番・第4番・第15番、アレグレットによる5つの変奏曲友田恭子(ピアノ)ドビュッシー:グラドゥス・アド・パルナッスム博士/アルベニス:アストゥリアス/ファリャ:火祭りの踊り/グラナドス:アンダルーサ/スカルラッティ:ソナタ ニ短調K.213/モンポウ:「内なる印象」より/ソレール:ファンダンゴ 他大木和音(チェンバロ)モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番・第5番「トルコ風」豊嶋泰嗣(指揮/ヴァイオリン)大阪交響楽団ユニバーサルミュージックUCCD-1446/7(2枚組) ¥3500+税コジマ録音ALCD-9173 ¥2500+税ana/recordsANCD-10002 ¥2778+税収録:2016年7月、ザ・シンフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00636 ¥3000+税今年5月に亡くなったビエロフラーヴェクの遺作の一枚。十字架上のイエスの死を悼む聖母マリアを描く「スターバト・マーテル」は奇しくも追悼盤となった。第1曲からして、尋常でない緊張感で、しかも繊細な表情がとても美しい。聖母の悲哀が胸に突き刺さる。それを見事に浮かび上がらせる傑作の、指揮者・演奏家たちによる稀有の名演といえよう。第3曲も不滅の名旋律をさりげなく歌い上げて、とてもきれい。終曲において、冒頭の悲しみの減七和音が「天国の栄福」で協和音に変わり回帰する箇所は感動的だ。見事な完結。スパイアーズ、中村恵理をはじめとする独唱陣も素晴らしい。(横原千史)モーツァルトのソナタに精力的に取り組む友田恭子のアルバム第5弾。今回は若きモーツァルトがミュンヘンで作曲した6曲のソナタから第2番および第4番、そして後期の第15番を収録。さらに「『主よ、幸いあれ』による6つの変奏曲」と「アレグレットによる5つの変奏曲」の2つの変奏曲を収めた。随所に友田のモーツァルトに注ぐ愛情が満ち溢れ、気品とユーモアが感じられる。緩徐楽章でスタートする第4番第1楽章はどの一音も心にじわりと染みる。変奏曲からは、モーツァルトがチャーミングな音色で弾きながら得意満面な表情を浮かべた様子なども思い浮かび、幸せな気分にさせてくれる一枚だ。(飯田有抄)チェンバロで、近代スペイン作品を弾く。本場オランダなどで学んだ大木和音の挑戦は、実に興味深い。バロックという時代から切り離すことで、チェンバロに新たな可能性が広がる。スカルラッティにソレールと、バロックの作品も忍ばせる。冒頭には、さりげなくドビュッシー。同じ撥弦楽器のせいか、特にギター音楽的な要素の濃い作品では、違和感がないどころか、よりダイナミック、フレンチの楽器の底鳴りの良さも一役買う。一方で、同じリズムの繰り返しの場面など、ミニマル・ミュージックを聴くような、不思議な感覚にも。取り上げた作品自体にも、新たな地平をもたらす。 (寺西 肇)豊嶋泰嗣の弾き振りによるモーツァルト協奏曲ツィクルス第1弾。冒頭の第1番管弦楽提示部から典雅で美しい。生き生きとした演奏は、モーツァルト若書きの未熟さを微塵も感じさせない。大阪交響楽団から艷やかで充実した響きを引き出している。独奏ヴァイオリンも優雅で爽やかだ。清潔なイントネーションによる模範的なモーツァルトといえる。終楽章もスピード感と切れ味が良く、気品もある。有名な第5番でも独奏の伸びやかな音がよく生かされ、終楽章のトルコ風の楽句でも躍動感に溢れている。第2番緩徐楽章も細かく表情づけられた“歌”が美しく堪能できる。(横原千史)
元のページ
../index.html#149