eぶらあぼ2017.8月号
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54©岩切 等白石光隆 ピアノリサイタル Vol.309/6(水)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp/白石光隆(ピアノ)30回は“節目”ではあるのですが“通過点”でもあります取材・文:長井進之介Interview 美しい音と生き生きしたリズム感を最大限に活かし、ソロにアンサンブルにと幅広く活動を展開するピアニスト、白石光隆。多忙な日々を送る中、1年間の活動の集大成として毎年定期的に開催するソロリサイタルが第30回という節目を迎える。 「ピアニストとして活動させていただく中で、環境はだいぶ変化してきました。このリサイタルを私の中の“変わらないもの”として大切に続けています。ですから、今回はもちろん“節目”ではあるのですが、“通過点”でもあります」 今回のプログラムはバッハにフォーレ、ベートーヴェンにシューマン、そしてプロコフィエフなど多岐にわたる時代の作品が選ばれた。 「毎回リサイタルはたくさんの方に楽しんでいただけるような選曲を心がけつつ、挑戦の意味も込めて基本的には“初出し”の曲を演奏しています。今回は以前から弾いてみたかったフォーレの『主題と変奏』とシューマンの『謝肉祭』を中心に組みました。試行錯誤しているうちに、前半は変奏曲やソナタなど形式の整った作品、後半は標題的な作品ということでまとまりました」 フォーレの「主題と変奏」は、教会音楽として書かれたものではないが、最初に弾かれるバッハのコラール(ケンプ編「目覚めよと呼ぶ声あり」)からのつながりもあり、やや内省的な作品の雰囲気からは信仰心に近いものが感じられる。 「『主題と変奏』はテーマに11の変奏が続きますが、最後は嬰ハ長調となり、シャープが7個もつきます。私は調号が増えるほどに現実から遠いものを感じます。ぜひ聴いてくださる方にも非日常の世界に浸ってもらえればと」 後半にプロコフィエフの「悪魔的暗示」が置かれたことで、プログラムに“形式”と“標題”とは別に、“神”と“悪魔”という対比もできた。 「最初は『《シンデレラ》からの6つの小品の〈ワルツ〉』から舞踏的な要素の強いシューマンの『謝肉祭』につなげようと思っていたのですが、プロコフィエフの亡命前と亡命後の対比も描きたかったので間に『悪魔的暗示』も入れました」 白石がこれだけの多彩なレパートリーを演奏できたのには、楽譜と向き合う時間を大切にしてきたことが大きい。 「演奏をするにあたっては、楽譜に書かれていることやその美しさをお客様にわかりやすくお伝えすることを大切にしています。そのためにはただ弾くだけではなく、じっくりと読み解く作業がとても重要になります」 白石光隆の“節目”となるリサイタル。多彩な選曲とそこに生まれる対比を堪能しながら、彼の止まらない“挑戦”を見届けたい。田尾下哲シアターカンパニー オペラ《セヴィリアの理髪師の結婚》戯曲とオペラ、両方の魅力を味わう文:唯野正彦 昨春突如として現れクラシック音楽界を騒然とさせたオペラ《セヴィリアの理髪師の結婚》が今夏、待望の再演を果たす。 「劇作家ボーマルシェの連作にもとづいたロッシーニ《セヴィリアの理髪師》とモーツァルト《フィガロの結婚》。この2つのオペラを関連づけ、上演機会が極めて少ない原作の戯曲に改めて光を当てつつ、オペラとしての音楽の魅力もあわせて表現」したいと考えた演出の田尾下哲と家田淳は「伯爵夫人ロジーナが3年前の出来事を回想する形で、《フィガロの結婚》のストー8/26(土)18:00、8/27(日)16:30 イタリア文化会館アニェッリホール問 田尾下哲シアターカンパニー03-6419-7302 http://tttc.jp/sevilla2017/昨年の公演よりリー中に《セヴィリアの理髪師》のエピソードを織り込む」一つの新しい作品を創り上げた。大事なアリアはそのままに、曲と曲の間の芝居部分は、家田が原作をベースに台本(日本語)を書いた。音楽監督は根本卓也。 昨年の公演では、新国立劇場研修所出身の期待の若手を中心に起用したが、今年はさらに、ベテランの黒田博以下、与那城敬、大沼徹、醍醐園佳、嘉目真木子らも加わって一層の充実を図る。

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