eぶらあぼ2017.8月号
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48荒井英治(ヴァイオリン) × 清水和音(ピアノ)9/23(土・祝)15:00 王子ホール問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337 http://miy-com.co.jp/荒井英治(ヴァイオリン)節目の年に紡ぐ“言葉のない歌”取材・文:山田治生Interview ヴァイオリニストの荒井英治が久々に本格的なリサイタルをひらく。共演は清水和音。 「清水さんとは90年代後半にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第3番・第7番などを共演して、良い感触を持ちました。そして今回、再び、一緒に音楽ができればと希望したのです。前回は、彼に自分とは違う音楽性を感じて、演奏している時はストレートに“幸せな気分”というものではなかったのですが(笑)、後で記録用の録音を聴くと素晴らしい演奏だったんですよ。ヴァイオリンとピアノがケンカするわけではなく、それぞれの世界を描く。個性相並ぶ、ヴァイオリン・ソナタとしての面白さがあったのです。今回、彼と演奏したら、以前より楽しい時間を過ごすことができると思います。彼は確固たる世界を持っていますが、その音楽は決して恣意的ではない。自分の技を誇示しないところが素晴らしい。ピアノや音楽に対する関わり方が自然で、共演者として心地よいですね」 荒井といえば、現代音楽に積極的というイメージがあるが、今回は完全な19世紀のドイツ&オーストリア・プログラム。 「日頃、学校のレッスンで、ブラームスのソナタを僕がピアノで伴奏することもあり、以前よりもブラームスの作品を心情的に理解できるようになりましたね。ベートーヴェンの第6番は、抒情的で歌曲のような歌がある。技を持っていると、歌うということも技で処理しがちになってしまいますが、作曲者のイデーやイメージに近づいて、本当に歌を引き出したいと思っています。また、シューマンの『3つのロマンス』もヴァイオリン曲として弾きたくないのです。オーボエの音色やフレーズ感を大切にして、“言葉のない歌曲”として取り組みたい。シューベルトの『幻想曲』は1985年の最初のリサイタルで弾いて以来です」 今回、実は荒井にとって還暦を祝う演奏会でもある。 「以前よりも、シューベルトやシューマンが近い存在に思えてきたし、ここらで一つ、こういう曲を演奏したいと気持ちが固まったんですね」 26年間コンサートマスターを務めた東京フィルを一昨年退団し、現在は東京音楽大学教授を務めている。 「今は東京音楽大学での仕事がメインです。自分の活動の半分以上を教えることにあてています。一人ひとりレッスンをして個として学生と向き合うのは楽しい。自分でも発見することが多いのです。学生には、生きる上での指針や基礎となるものを持ってもらえればと思います。オーケストラでの演奏は、日本センチュリー響の首席客演コンサートマスターを引き続き務めて、年に10本位出ています。あとモルゴーア・クァルテットも今年で結成25周年なんですよ」 荒井のこれからの活動にますます目が離せなくなってきた。クレア・フアンチ(ピアノ)新時代の到来を告げるピアニズム文:高坂はる香 16歳で参加し奨励賞を受賞した2006年の浜松コンクール以来、10年マイアミ全米ショパンコンクール優勝など数々のコンクールで活躍。カーティス音楽院とハノーファー音楽大学で学んだ中国系アメリカ人ピアニストのクレア・フアンチは、若手に注目している日本のピアノファンの間ではおなじみの存在だ。10歳で当時のアメリカ大統領ビル・クリントンに演奏を披露したという神童エピソードを持つ彼女も、今や20代後半。スカルラッティのソナタ集の録音で高い評価を得るなど、自9/28(木)19:00 Hakuju Hall問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp/©Mateusz Zahoraらの音楽性を生かした活動で邁進している。 今回演奏するのは、ベートーヴェンの月光ソナタやスクリャービンのソナタ第2番、そして得意とするショパンから「24のプレリュード」など、濃い内容のプログラムだ。持ち前のみずみずしいタッチと自由な感性、多様な音色を披露する、幅広い作品が揃う。 これまでにもたびたび来日しているが、ソロ・リサイタルを聴ける機会は多くなかった。このチャンスに生の音を味わっておこう。

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