eぶらあぼ2017.8月号
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3030 文字どおり五大陸を股に掛け、各地の音楽祭やオーケストラから歓待される福間洸太朗。独自のアイディアとコンセプトでしっかりと組み上げる彼のソロ・リサイタルは、常にピアニストとしての信念に貫かれ、聴衆の感動を呼び起こす。今年のリサイタルのために構想した主題は「鳳凰がみたもの」。謎めいていて、格調高いタイトルだ。 「このリサイタルは2つの作品を核としています。ショパンのピアノ・ソナタ第3番とストラヴィンスキーの『火の鳥』です。今回サントリーホールで初めてリサイタルができると決まったとき、まずこの2曲を中心にしようと考えました。どちらも波乱に飛んだドラマの末に、最後は希望の光が射してポジティブなエネルギーを与えてくれる作品。その響きが、人々に幸運をもたらす伝説の鳥『鳳凰』のように飛翔して大ホールの広い空間を飛び回る。お客様は鳳凰とともに数々のドラマを見守り、そして鳳凰のもたらす奇跡を体感する。そんなイメージのもとに、各曲のプログラミングをしました」。凛々しい表情で、福間はそう語る。 幕開けはリストの「オーベルマンの谷」。 「リストが題材としたセナンクールの小説では、主人公が社会の荒波に負けて自殺を図ります。リストも華やかなピアニスト活動に終止符を打って指揮者に転向するなど、思い悩んだ時期があった。ただ、リストは悲劇の描写に留めず華やかな長調で終わらせた。希望の光を与えるリストの芸術家としての姿勢に胸を打たれます。私自身、演奏家として今とても充実していますが、時には周囲からの多様な求めに対し、自分に何ができるかと迷うこともあります。社会的な問題や人の痛みなどのわかる人間でありたいのですが、その先に希望やエネルギーをもたらせるような存在になりたい」とリストへの共感を寄せる。 「ショパンのソナタ3番は、ショパンが34歳、つまり今の私の年齢で書いた作品です。私が初めてこの作品を弾いたのは17歳。当時は音符を追うだけで精一杯でした。先生にも『30代半ばでまた弾いてほしい』と言われました。今あらためて楽譜を読み直してみると、1楽章だけでもショパンがかなり斬新な試みをしていること、挑戦的な調性関係を設定していることに気づきますし、ショパンの手稿譜からは微妙なニュアンスを感じ取ることができます」 後半はロシアもので聴かせる。 「ロシアのピアニストに比べると私は細身ですから、ロシア作品を弾く上で随分と身体の使い方を研究してきました。重心を意識するだけでも、音の飛ばし方を変えることができるのです」 ラフマニノフは前奏曲「鐘」と「13の前奏曲」から第12・13番を組み合わせた。 「3曲はそれぞれ、重々しさ、サラサラとした流れ、華やかさという曲想で、この3つを合わせて一つのソナタのように見立てることもできます」 スクリャービンはここ数年で「好きな作曲家TOP3に入った」という。 「彼の音楽はロマンティシズム、色彩感、ロシアならではの重厚さ、そして神秘といった私の好きなエレメンツをすべて併せ持っています。いつかソナタの全曲録音などしてみたいですが、今回は第5番を取り上げます。描かれている世界観のスケールがとても大きく、飛翔を感じさせる場面も多いですね」 締めくくりは「火の鳥」。アゴスティによるピアノ編曲版は「かなりアクロバティックな動き」を求められる。 「オーケストラ版とは実際の音の配置などが違っているけれど、ピアノ作品としての完成度の高い素晴らしい編曲です。私自身もオーケストラ曲をピアノ用に編曲しますので、ピアノならではのアイディアやセンスの面白さを感じながら演奏できる作品です」 演奏曲目の聴きどころを予習できる自作ビデオが好評で、今回もYouTubeから配信したいと意欲を見せる。秋には新しいショパン・アルバムもリリースの予定。30代半ばにあって、さらに高みへと飛翔する福間の活動から目が離せない。人々に幸運をもたらす「鳳凰」の飛翔をイメージしてプログラミングしました取材・文:飯田有抄 写真:藤本史昭Information福間洸太朗ピアノリサイタル ~鳳凰がみたもの~曲目 リスト:オーベルマンの谷(『巡礼の年第1年スイス』より)/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番/ラフマニノフ:前奏曲嬰ハ短調「鐘」、13の前奏曲 op.32より第12番・第13番/スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番/ストラヴィンスキー:火の鳥(アゴスティ編曲)10月11日(水)19:00 サントリーホール問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337 http://miy-com.co.jp/他公演 10/8(日)名古屋/しらかわホール(中京テレビ事業052-588-4477) 10/9(月・祝)大阪/いずみホール(キョードーインフォメーション0570-200-888)
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