eぶらあぼ2017.8月号
161/191
168CDCDCDCD日本歌曲選集 写楽の鏡/鴨川太郎&沼田宏行フルート・ソナタ集/萩原貴子&斎藤雅広ジャパン・ナウ/飯野明日香ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」/井上道義&大阪フィル中田喜直:淡雪ふる日に、だからその海をみない/田頭喜久彌:甃(いし)のうへ/橋本國彦:お六娘/山田耕筰:蟹味噌/木下牧子:ロマンチストの豚/大中 恩:サッちゃんの家/小林秀雄:写楽の鏡 他鴨川太郎(バリトン)沼田宏行(ピアノ)プロコフィエフ:フルート・ソナタ/フランク:ヴァイオリン・ソナタ(フルート版)/ライネッケ:フルート・ソナタ「ウンディーネ」萩原貴子(フルート)斎藤雅広(ピアノ)一柳 慧(飯野明日香編):ジャズ ファンタジー/西村 朗:マツヤ(魚)/金子仁美:中世から/細川俊夫:エチュードⅣ/藤倉 大:2つの小品/田中カレン:テクノ・エチュード/湯浅譲二:内触覚的宇宙Ⅱ・トランスフィギュレーション飯野明日香(ピアノ)ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」井上道義(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団ナミ・レコードWWCC-7841 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7840 ¥2500+税カメラータ・トウキョウCMCD-28349 ¥2800+税収録:2017年2月、フェスティバルホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00627 ¥3000+税東京芸大からミラノに学び、オペラや宗教作品の檜舞台で活躍する実力派バリトン、鴨川太郎。日本歌曲の上演にも力を注ぎ、詩人と作曲家、声楽家が一体となって、その可能性を追求する「日本歌曲振興波の会」の理事を務める。当盤では、木下宣子の詩に基づき、小林秀雄がモノオペラ風に仕立てた表題作をはじめ、山田耕筰や中田喜直らの手になる、古今の佳品を収録。鴨川は言葉をしっかり聴かせるにとどまらず、日本語だからこそ孕む、微細な色彩感の違いも、余さず掬い取る。時に、歌舞伎など伝統芸能に倣ったような表現も。ピアノの沼田宏行も、言葉を感じる好アシストだ。 (笹田和人)高い技術と音色の幅広さ、アンサンブルの力量…全てが高いレベルでなければ魅力が失われてしまうソナタが3曲収められた“重量級”のディスクだが、萩原と斎藤の演奏は重々しさを一切感じさせない優雅なもの。発音は明瞭でありながら、絶えずあたたかさを感じさせる萩原の音色が、斎藤の幅広いダイナミクスと多彩なフレージングによるピアノと重なり合って様々な色彩と表情を見せる。シャープで立体感のあるプロコフィエフ、華麗なフランクを経て到達するライネッケでは、二人の誠実な姿勢と透明感のある音色が最大限に発揮され、物語性を力強く描き出している。 (長井進之介)『France Now』に続く飯野明日香によるオリジナリティ溢れる新譜。7つの収録曲中5曲が21世紀に入ってからの作品で、最も古いのが1986年の湯浅譲二作品(これが最も“尖がって”聴こえるのが興味深い)。演奏はどの曲も精度が高いが、飯野の美点は微細な音色のコントロールによるテクスチュアの多彩な色合いの表出にあると思う。その意味では金子と湯浅の両作品が特に秀逸。また、西村作品が要請する磨き抜かれた強靭な技巧の提示、あるいは田中作品でのグルーヴ感と作品の要求する「核」の部分が実に的確に表出されるのが圧巻。 (藤原 聡)井上道義と大阪フィルのショスタコーヴィチ第3弾。筆者は同コンビによる2月の実演に接し、異様な迫力と演奏のクオリティの高さを体験したが、本CDを聴くとその時の興奮が蘇る。この交響曲は、1905年のロシア第1次革命の「血の日曜日」の惨劇を扱っている。十数万人の民衆に軍隊が一斉射撃、容赦の無い殺戮と阿鼻叫喚の地獄絵図、井上&大阪フィルは怖ろしいほどの冷徹さでそれを音化する。何という曲、何という演奏だろう。犠牲者への“レクイエム”は、沈痛な祈りがやがて怒りと叫びの爆発となる。未来への警鐘も感銘深く、胸に迫る。紛れもなく今年のベスト盤の一つといえよう。(横原千史)
元のページ
../index.html#161