eぶらあぼ2017.8月号
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164CDCDCDCDリスト:ピアノ・ソナタ 他~古典に導かれる現いま在のまなざし/藤井一興モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのための作品全集 Ⅰ/漆原啓子&ヤコブ・ロイシュナーJ.S.バッハ オルガン小曲集~スイス・ポラントリュイのアーレント・オルガン Ⅴ~/椎名雄一郎ヴァン・デル・ロースト&シエナ・ウインド・オーケストラJ.S.バッハ:イタリア協奏曲アルベニス:ラヴァピエスリスト:ソナタ ロ短調藤井一興:玉虫厨子を観る月映える夕藤井一興(ピアノ)横坂 源(チェロ)モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタK.296,K.301~306、「羊飼いの娘セリメーヌ」の主題による12の変奏曲K.359、「泉のほとりで」の主題による6つの変奏曲K.360漆原啓子(ヴァイオリン)ヤコブ・ロイシュナー(ピアノ)J.S.バッハ:オルガン小曲集 BWV599-644(待降節と降誕節、新年、マリアの潔めの祝日、受難節、復活節と聖霊降臨節、教会で歌われるコラール)椎名雄一郎(オルガン)ヤン・ヴァン・デル・ロースト:ナマセ・ラプソディ、カンタベリー・コラール、交響詩「スパルタクス」、グロリオーゾ~グランド・オーヴァチュア~ 他ヤン・ヴァン・デル・ロースト(指揮)シエナ・ウインド・オーケストラ収録:2017年3月、東京文化会館(小)(ライヴ) 他マイスター・ミュージックMM-4011 ¥3000+税日本アコースティックレコーズNARD-5055/6(2枚組) ¥3500+税コジマ録音ALCD-1164 ¥2800+税収録:2017年2月、文京シビックホール(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25932~3(2枚組) ¥3000+税J.S.バッハから、3月のリサイタルで初演した藤井一興の新作までを収めたアルバム。バッハのイタリア協奏曲は柔らかく輝く音で、アルベニス「ラヴァピエス」は一段と透明感のある音で奏される。リストのロ短調ソナタは、作曲家が楽譜に置いた一つひとつのハーモニーや間合いの意味を丁寧に確かめるように進み、藤井が今この曲に向き合おうとする想いが伝わる演奏。気鋭チェリスト横坂源との共演による新作「玉虫厨子を観る月映える夕」は、チェロが多様な質感の音を鳴らし、それがピアノと混ざりあって色彩の刻々とした変化を表現。藤井の繊細な感性が発揮される1枚。 (高坂はる香)いよいよ円熟味を増してきた漆原啓子と、ドイツの名匠ヤコブ・ロイシュナー。2009年以来共演を重ねて気心知れたデュオによるモーツァルトは、どんなフレーズにも考え抜かれたニュアンスが付けられ、常に節度と軽さを保ちつつ、音楽はあくまでのびやかで美しい。快速な音楽の絶妙な愉悦感、緩徐部分における深みと気品は、一朝一夕には到達しえない次元だ。ホ短調のK.304第2楽章で突如現れるホ長調の中間部や、K.306の緩徐楽章など、モーツァルト芸術の真髄とも言える絶美の場面で、ここまで自然体な流れに憧憬の念が込められた演奏もめったになく、何度聴いても味わい深い。 (林 昌英)バッハのオルガン作品へ鮮烈なアプローチを続ける椎名雄一郎。今回は、バッハ時代の銘器を原型に、現代の名工ユルゲン・アーレントが製作した楽器を駆り、初心者の教育を目的として、バッハが書いた「オルガン小曲集」に対峙した。教会暦の機会ごとに纏められた33曲に、普段の教会で歌われるコラールを加えた計45曲からなり、随所にヌメロロジー(特定の数字に意味を与える一種の暗号)の網が張り巡らされ、各曲はシンプルながら、楽想や和声は実に多彩。椎名は、これら微妙な色合いの変化を逃さず、的確なレジストレーションと、折り目正しく、清潔感あふれる快演で魅せる。(寺西 肇)吹奏楽界で名高いベルギーの作曲家ヴァン・デル・ローストが自作を指揮した、シエナ・ウインド・オーケストラの定期公演のライヴ録音。これは、楽曲の質の高さを改めて実感させられる、聴き応え十分の内容だ。デ=メイやバーンズとの共演でも示したシエナの柔軟な対応力が存分に発揮され、充実したサウンドによる密度の濃い演奏が終始展開される。特に世界初演の委嘱作「グロリオーゾ」は、指導者や愛好家必聴。このほか、ドラマティックな交響詩における緊密な表現が耳を奪い、代表曲「カンタベリー・コラール」の美しくコクのある響きも静かな感動を呼ぶ。  (柴田克彦)

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