eぶらあぼ2017.7月号
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74トリフォニーホール《ゴルトベルク変奏曲》2017 ピーター・ゼルキン(ピアノ)人生の転機となった“特別な作品”を日本で披露文:笹田和人8/1(火)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ 「終わりのない旅」。鍵盤音楽の最高峰の一つであるバッハ「ゴルトベルク変奏曲」への取り組みを、こう形容するピアニストは数多い。アメリカの名匠ピーター・ゼルキンも、おそらくそうだろう。過去に3度行った録音のそれぞれに異なるアプローチが、それを物語る。そんな彼が、傑作と“今を語る対話”を展開するリサイタルを東京で開く。 音楽史に偉大な足跡を残す大ピアニスト、ルドルフ・ゼルキンの息子にして、ドイツの大ヴァイオリニスト、アドルフ・ブッシュの孫という血筋に生まれたピーター。ミエチスラフ・ホルショフスキやアルトゥール・シュナーベルといった巨匠の薫陶を受け、自らも名ピアニストに。同時代音楽に強い共感を寄せる一方、バッハやベートーヴェンなどの古典においても、卓越した洞察力に基づく、数々の名演を生み出してきた。 中でも、名匠は、「ゴルトベルク変奏曲」にとりわけ深い思い入れを示す。3度目の1994年盤は、父ルドルフに捧げられ、主題にあたるアリアに挟まれた30の変奏が淀みなく流れる一方、見事にシンメトリー構造を浮き彫りにする快演。その父は生前、アンコールでアリアを弾いた際、全曲を弾き切ってしまったとの逸話もあるほど、この作品を愛した。 何より、ピーターにとっては、いったん音楽の道を諦めた20代の頃、バッハこそが、その決意を翻す契機となった作曲家でもある。今回は、日本の聴衆の前で、そんな“特別な作品”である「ゴルトベルク変奏曲」にじっくりと対峙。ここへ、モーツァルトによる「アダージョ ロ短調」と「ソナタ第17番」、深い精神性を湛えた晩期の佳品を添える。©Regina Touhey Serkin10代のためのプレミアム・コンサートはじめての演奏会オペラ~イタリア・オペラ編~若き達人バッティストーニが誘うイタリア・オペラの名作文:加藤浩子9/9(土)15:30 Bunkamuraオーチャードホール問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999/ソニー音楽財団03-5227-5233http://www.bunkamura.co.jp/ http://www.smf.or.jp/ 昨秋東京フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任し、人気沸騰中のイタリア人指揮者、アンドレア・バッティストーニ。9月にはBunkamuraオーチャードホールで、ヴェルディの大傑作《オテロ》を指揮。映像演出付きの意欲的な上演だが、その公演の合間を縫って「若者にオペラを届けたい!」というバッティストーニの夢の企画が実現する。ソニー音楽財団とBunkamuraの主催で行われる「はじめての演奏会 オペラ~イタリア・オペラ編~」だ。 主な対象は、10代(小学1年生~19歳対象)とその保護者。《オテロ》のハイライトに加え、〈誰も寝てはならぬ〉〈乾杯の歌〉などイタリア・オペラ屈指の名曲を、バッティストーニ指揮の東京フィルと、木下美穂子、村上敏明、上江隼人といった日本を代表する歌手で楽しめるのだからなんとも豪華だ。また、10代3000~1500円、保護者5000~3000円というリーズナブルな価格も魅力(大人のみ席7000円)。しかも、バッティストーニ本人による解説つきだ。また、人気アナウンサーで“大”のつくオペラファンとしても有名な朝岡聡が通訳&ナビゲートしてくれるので、オペラがまったく初めてでも心配はいらない。 若者にオペラやクラシック音楽の魅力を伝えることは、バッティストーニのライフワークのひとつ。最近、独自の視点によるクラシック音楽に関する著作も上梓した。若きマエストロの熱のこもったトークと心を揺さぶる演奏に、会場の誰もがオペラの虜になるに違いない。左より:アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文/木下美穂子 ©Yoshinobu Fukaya/aura.Y2/村上敏明/上江隼人/朝岡 聡

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