eぶらあぼ2017.7月号
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65音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ 21 ハーゲン・クァルテット世界最高峰のアンサンブルの現いま在を聴く文:飯尾洋一 現代を代表するクァルテットのひとつ、ハーゲン・クァルテットが神奈川県立音楽堂に登場する。ハーゲン・クァルテットは1981年にハーゲン家の4人の兄弟姉妹によって結成された。その後第2ヴァイオリンの交替を経ながらも、一貫して最高水準の団体として意欲的な活動を展開し、今や円熟の境地にあるといってよいだろう。 プログラムも魅力的だ。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番、シューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」という3曲が並ぶ。ショスタコーヴィチ作品のなかでも、ひときわ歪んだユーモア、アイロニーを含んだ第3番に、ベートーヴェンが最後に書いた内省的な第16番が続き、最後は暗い情熱を湛えたシューベルトの「死と乙女」で終わる。プログラム全体に通底するのは悲劇性と自問自答するような内観と7/2(日)14:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-ongakudo.com/※ハーゲン・クァルテットの全国公演については、下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.japanarts.co.jp/でもいえるだろうか。ベートーヴェンが弦楽四重奏曲第16番の自筆譜に書き込んだ「かくあらねばならぬか?」「かくあるべし」という有名な言葉が、そのままプログラム全体を表すキーワードになっているようにも思える。 ハーゲン・クァルテットは4人すべてがストラディヴァリウスを使用するクァルテットでもある。2013年半ばより、「パガニーニ・クァルテット」と呼ばれる4挺セットの名器を日本音楽財団より貸与されている。名器の音色をたっぷり聴けるという点でも興味深い。 ©Harald Homann第39回定期演奏会7/15(土)16:00 いずみホール問 いずみホールチケットセンター06-6944-1188 http://www.izumihall.jp/ いずみシンフォニエッタ大阪の演奏会は毎回楽しみにしている。年2回の公演で、新作と現代音楽の話題作が生きのいい優れた演奏で披露されるからだ。今回のテーマは「超絶のコンチェルト─めくるめく競演─」。いずみシンフォニエッタは猛烈な技巧もモノともしない中堅若手のソリスト集団だが、その管楽器の独奏者が協奏曲で妙技を聴かせてくれる。 まずユン・イサンの「クラリネット協奏曲」を上田希の独奏で。上田のしなやかな感性が、激しく重いこの曲からいかなる精神世界を描いてみせるか。次は松本直祐樹の新作「トロンボーン協奏曲」。自身でトロンボーンも吹く俊英作曲家は、現代作品の初演を多く手がけてきた名手、呉信一の果敢なアプローチを得て、間違いなく新たな世界を切り開いてくれるに違いない。そして映画音楽で有名なジョン・ウィリアムズの「オーボエ協奏曲」は、甘美で抒情的な旋律を吹かせたら右に出る者のない古部賢一が楽しませてくれるだろう。 今回の指揮者は、今年の4月に広島交響楽団音楽総監督に就任した下野竜也。もともと現代音楽のスペシャリストで、いずみシンフォニエッタとも相性がいい。最後は下野の提案の“怪作”ハインツ=カール・グルーバー「フランケンシュタイン!!」。下野が読響と上演した際の独唱者で作曲者から指導も受けたバリトン宮本益光が、オモチャの楽器も使いながら、ユーモアとギャグ満載の抱腹絶倒のステージで大いに笑わせてくれるだろう。下野竜也(指揮) いずみシンフォニエッタ大阪“凄腕”奏者たちが挑むオリジナリティ溢れる協奏的作品文:横原千史左より:下野竜也 ©NaoyaYamaguchi(Studio Diva)/上田 希 ©you/呉 信一/古部賢一 ©土居政則/宮本益光

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