eぶらあぼ2017.7月号
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56のバスはまったく違うし、モーツァルトとシューベルトも違うし…。だからバスに注意を注ぎながら聴くだけでも、それぞれの作曲家の特徴が見えてくると思います。そして旋律を弾く時に、バスをいっしょに弾くつもりで演奏する。それがコツですね」 息の合った2人の演奏から聴こえてくるバスの動きに注目しながら、知的かつ音楽的な営みを味わおう。©T.Okura堀米ゆず子 & ジャン=マルク・ルイサダ デュオ・リサイタル10/26(木)19:00 紀尾井ホール問 ヒラサ・オフィス03-5429-2399 http://www.hirasaoffice06.com/他公演 10/20(金)岡山/大原美術館(くらしきコンサート086-422-2140)、10/22(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、10/24(火)河内長野市立文化会館ラブリーホール(小)(音の語らい090-2196-0264)堀米ゆず子(ヴァイオリン)気心の知れた名手2人ならではの、こだわりぬいた音楽取材・文:宮本 明Interview 10月に行なわれる堀米ゆず子とジャン=マルク・ルイサダのデュオ・リサイタル。日本での2人の共演は11年ぶりだという。 「もう30年来の“悪友”です。私の親友のクララという女性が、メニューイン音楽院でジャン=マルクと一緒に勉強していて、彼女に紹介されてパリで会ったのが1982年。一緒に弾くようになったのはその数年後だと思います。素晴らしいですよ。他のピアニストにない独特の響きを持っている。私が共演させていただいたピアニストの中で一番印象に残っているのはルドルフ・ゼルキンとアルゲリッチで、その次がジャン=マルクです。練習して弾きだすと、ああ、ルイサダの音だ! って感じます。やっぱり何か持っているんですね」 海外では比較的頻繁に共演を重ねている。今回弾くのも、すでに2人で何度も弾いている掌中のレパートリー。モーツァルトの「ソナタ ト長調 K.379」とシューベルトの「ソナチネ第2番」の古典音楽から、シューマンとラヴェルの小品をはさんで、フランクのソナタへと向かうプログラムだ。 「彼はモーツァルトやシューベルトを弾く時、頑固な“古典主義”を持っています。パウル・バドゥラ=スコダと仲が良いので、その影響だと思うのですが。原典版の楽譜を使ってどうとか、そういう頭でっかちなことではなく、あくまで彼自身の“古典主義”というものなんですよ」 それゆえシューベルトなどにはとりわけ「うるさい」のだそう。 「シューベルトの“哀愁”を表現するのは難しいですね。歌だからといってべったりはもちろんダメ、寒い風が吹くみたいに弾くことはなかなかできない。ヴァイオリニストにとっても、音と音の間にエモーションがあるというのか、本当にきれいだとはわかるのですが、全然はまらないし、弾きにくいし、音は出ない…。だから今度の紀尾井ホールはいいと思います。響きがないとみじめなんです(笑)」 フランクのソナタは、“近代フランスを代表する名作”と形容されることが多い。 「でも、よく言われるように、“フランス風に軽やかに”というのは少し違うのですね。フランクはオルガニストだったのでバス声部が大事。終楽章のカノンも、旋律を追っかけるだけではうまくいかないのです。シューマンとラヴェルエリック・ホープリッチ(バセット・クラリネット) & ロンドン・ハイドン弦楽四重奏団バセット・クラリネットで聴くモーツァルトの名作文:寺西 肇 歴史的クラリネットの第一人者として活躍し、ホグウッドら古楽界の巨匠たちと幾多の名演を重ねて来たエリック・ホープリッチ。やはり古楽界をリードするロンドン・ハイドン弦楽四重奏団(LHQ)と共演し、モーツァルトの傑作「クラリネット五重奏曲」を魅力的な音色で紡ぎ上げる。 ソリストや室内楽奏者、さらに、貴重なオリジナル楽器の収集家や研究者としても知られる名匠。今回は、普通の楽器よりも長3度低い音域まで出せる「バセット・クラリネット」を使用。これは、モーツァルトが五重奏曲や協奏曲を献じた名手、アントン・シュタード9/27(水)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171http://www.yamahaginza.com/hall/ラー(1753~1812)が愛用した楽器が描かれた版画を基に、ホープリッチ自身が製作したレプリカだ。 一方、共演のLHQは、イギリス古楽界の名手たちにより、2000年に結成。この日のステージでは、ベートーヴェンの第6番とハイドンの第67番「ひばり」、2つの弦楽四重奏曲の佳品も、緻密なアンサンブルで披露する。ロンドン・ハイドン弦楽四重奏団 ©Giorgia Bertazziエリック・ホープリッチ ©J.Armour

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