eぶらあぼ2017.7月号
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52©Yat Ho Tsang浜離宮アフタヌーンコンサート佐藤俊介(ヴァイオリン) × 鈴木秀美(チェロ) × スーアン・チャイ(フォルテピアノ)6/30(金)13:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/佐藤俊介(ヴァイオリン)オリジナル楽器で蘇るブラームスの新鮮な世界取材・文:寺西 肇Interview 古楽とモダン、両方のフィールドで国際的に活躍する俊英ヴァイオリニスト、佐藤俊介。そんな彼が、妻であり鍵盤楽器の若き名手でもあるスーアン・チャイ、バロック・チェロの先駆者で指揮者としても活躍する鈴木秀美と共演し、オリジナル楽器でブラームスの室内楽に対峙する。オリジナル楽器による演奏が定着した今でも、ロマン派の作品への取り組みは珍しいが、「想定できないこともあって、エキサイティング」と佐藤。貴重な機会となりそうだ。 「よく知られた作品でも、ひとつの疑問を持てば、全く新しいものとして味わう事ができます。半世紀ほど前、アーノンクールら古楽の先駆者が、バロックや古典派のレパートリーで実践していたように…。まだ前例も少なく、研究が進んでいないのですが、そろそろそんな試みが、ロマン派時代の作品で行われて良いのではないでしょうか。時代特有のエッセンス、演奏方法や美学を存分に知れば、作品観は180度変わるかもしれない。できるだけ先入観を持たないように心がけています」 今回、佐藤は一番低いG線以外にピュア・ガット(銀線を巻かない裸のガット弦)を張り、鈴木はエンドピンを持たないチェロを使用。そして、チャイは、ブラームスが使用していたのと同型のJ.B.シュトライヒャーのフォルテピアノ(1871年製)を弾き、現代よりも少し低いa=438Hzの標準ピッチを採用する予定だという。 特にヴァイオリンの技術面で気遣うポイントとして、「レガート、ポルタメント、ヴィブラート」の3点を挙げる。 「例えば、レガートの場合も、バロックならば、音を一つひとつ立たせますが、ブラームスの時代は、幾つもの音をひと弓で弾き切るように、ゆっくりと長い呼吸で演奏します。鍵盤楽器と弦楽器の合奏の際には、音の溶け合いを実感できる。この時代の“木の箱”のようなピアノは、響き方が現代とは違い、楽器間の音量のバランスもとりやすい。音楽的に素直に演奏できるのです」 今回のステージでは、ブラームスが53歳で作曲した、ヴァイオリン・ソナタ第2番とピアノ三重奏曲第3番を大枠として、20代で書いたチェロ・ソナタ第1番などを挟む構成に。 「ブラームスの様々な面を味わえるように選曲しました。特に、ピアノ三重奏曲に関しては、ブラームスが亡くなる直前、イギリス人ピアニストを相手にレッスンをしたのですが、そのときに細かく指示が書き込まれたパート譜が現存しています。今回は、その楽譜を参考に“確信を持って”演奏できます」 佐藤の評価はヨーロッパでも非常に高く、来年6月からは100年近い歴史を誇る古楽演奏団体「オランダ・バッハ協会」の音楽監督への就任も決まった。 「大バッハやそれ以前、そして、それ以後。まるで、立ちはだかるように膨大な声楽作品のレパートリーを勉強する機会を与えられました。当面の目標はそれです。実は、僕の夢は、今回のように、ロマン派の作品をオリジナル楽器で演奏していくことなのです」スーパー・リクライニング・コンサート 第127回中木健二(チェロ) & 永田美穂(ピアノ) デュオ息の合った美しい好演に期待文:林 昌英 リクライニング・シートでゆったり実演を味わえるHakuju Hallの人気シリーズに、7月登場するのは、チェロの中木健二とピアノの永田美穂によるデュオ。中木はパリ国立高等音楽院ほかで学び、2005年ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール優勝をはじめ受賞多数。10年よりフランス国立ボルドー・アキテーヌ管首席奏者を務め、ソリストとしても多彩に活躍中、いま注目の名手である。永田はパリ・エコール・ノルマル音楽院に学び、欧州の名門コンクールで上位入賞を重ね、3年前から7/14(金)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp/永田美穂 ©武藤 章日本でも本格的に活動を開始。フランスで研鑽と演奏活動を重ねてきたふたりは、公私ともにパートナーでもあり、息の合った美しい好演が大いに期待できる。 約1時間のプログラムは、前半は彼らの経験が生きるフランスもので、フォーレ、サン=サーンス、プーランクの抒情的な名旋律で、そのエスプリを聴かせる。後半は、一気に技巧と愉悦が解放されるような名品、メンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第2番で華やかに締める。中木健二 ©Mirco Magliocca

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