eぶらあぼ2017.7月号
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36パイプオルガンとオーケストラの饗宴ティエリー・エスケシュ(オルガン) 井上道義(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢4ホールで体感するOEKとオルガンの華麗なるサウンド文:笹田和人7/18(火)19:00 石川県立音楽堂(076-232-8632)、7/20(木)19:00 那須野が原ハーモニーホール(0287-24-0880)、7/21(金)19:00 松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)(0263-47-2004)、7/23(日)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール(044-520-0200)http://www.oek.jp/ 加賀百万石の城下町・金沢が誇るコンサートホール、石川県立音楽堂の象徴と言える存在が、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)とオルガン。この2つを組み合わせて、古都から21世紀の響きを創造、発信してゆく一大プロジェクト『パイプオルガンとオーケストラの饗宴』が、いよいよ開催される。  日本で初のプロ室内オーケストラとして、1988年に設立されたOEK。スタート時は岩城宏之、現在は井上道義が音楽監督を務め、今や年間約100公演を行い、国内外の注目を集める存在へと成長した。一方、県立音楽堂のオルガンは、ベルリン・フィルハーモニー・ザールの楽器も手掛けた、独カール・シュッケ社製。地元の伝統工芸である輪島塗が演奏台の各所に施され、5143本のパイプから圧倒的なサウンドを生み出す。 プロジェクトの核は、OEKの今期の「コンポーザー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた、フランス人オルガニストで作曲も手掛ける、ティエリー・エスケシュへの委嘱作「オルガン協奏曲」の世界初演。エスケシュ自身がソリストとして井上指揮のOEKと共演、極彩色の響きのタペストリーを織り上げる。そして、エスケシュは、自在な即興演奏も披露。さらに、この新作を携えて古都を飛び出し、栃木・長野・川崎と3ヵ所で真価を問う。 また、これらのステージでは、OEKが誇る首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタをソリストに据えてのサン=サーンスの協奏曲第1番、シューベルトの交響曲第7番「未完成」を併せて披露。「進取の古都」ならではの風土が紡ぎ上げた、大胆かつ繊細な「21世紀の響き」の魅力を、余すことなくアピールする。外山雄三(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団日本の音楽界を牽引する名匠が“古巣”に登壇文:江藤光紀第332回 定期演奏会 みなとみらいシリーズ9/9(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 http://www.kanaphil.or.jp/ N響をはじめとする国内のあらゆるオーケストラを振り、要職を務めてきた外山雄三は、作曲家としても戦後復興期より間宮芳生、林光と「山羊の会」を結成するなど、日本の伝統音楽に着目したオーセンティックな作品を書き続けてきた。作品も相当な数に上り、代表作「管弦楽のためのラプソディー」は国内オケの海外公演では定番曲だ。指揮・作曲両面で戦後日本の音楽界を牽引してきた重鎮も80代半ばとなったが、なお委嘱を受け各地の楽団も振るバリバリの現役なのだから、本当にタフである。 外山は神奈川フィルでも1992年から96年にかけて第2代音楽監督を務めている。今回、古巣への登壇に外山が選んだプログラムは自作で幕を開ける。戦前から続く長野のオケ、諏訪交響楽団の創立90周年を祝い2014年から15年にかけて書かれた「オーケストラのための“玄奥”」の、首都圏でのお披露目だ。外山の最近の心象風景を伝えるこの近作にも、日本の伝統音楽のテイストが盛り込まれているようだ。 ここから内省的なウィーンの風格を湛えたシューベルトの「未完成」、さらに雄渾な筆致で書かれたプロコフィエフの大曲「交響曲第5番」へと続く。妥協しないリハーサルで作品を練り上げていくのが外山の音楽作りの特徴だが、作曲家としての眼や地に足を付けた日本的ともいうべきリズム感覚から、よく知られた曲でも作品観を変えてしまう独特なアプローチになることも珍しくない。若いメンバーも多数加入し、熱い演奏で支持を集めている神奈川フィルが、外山の要求にどう応えていくのかも注目だ。外山雄三 ©S.Yamamoto左より:井上道義/ティエリー・エスケシュ ©Hughes Laborde/ルドヴィート・カンタ

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