eぶらあぼ2017.7月号
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33パスカル・ロジェ(ピアノ) × 束芋(現代美術作家)音楽と映像アートがつむぐ特別な時間文:オヤマダアツシ7/5(水)19:00、7/6(木)13:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/ 音楽とビジュアルのコラボレーションは、今やさほど珍しいことではないだろうが、ビジュアリスティックなフランス近代のピアノ曲と、和のテイストなどを新感覚で磨き上げた映像アートとの組み合わせは、やはり好奇心をくすぐられるものだ。 音楽はドビュッシー、ラヴェル、サティ、そして吉松隆の作品。楽譜に命を吹き込むのは、近代フランス音楽のスペシャリストであるパスカル・ロジェ。一方のヴィジュアルは、浮世絵など日本独特の美的センスを有したアートに新しい光を当て、アニメーションなどの映像を駆使して観る者を別世界へと誘ってくれる美術作家の束芋(たばいも)。音楽の息吹を映像で表現し、その映像によって音楽の中にある異空間が顔を出し…という具合に、相互作用によって生まれる時間こそが新しい作品なのである。 実はこの音楽とビデオ・インスタレーションによる試みは、2012年に初演されたものの、即時完売によって体験できなかった方が続出。5年たった今年、ようやく待望の再演となったものだ。名手によるライヴ演奏を聴きながら幻想的な映像作品を堪能する70分は、1本の実験的な新作映画を観るような感覚かもしれない。その映像と音楽は聴衆の中にある“何か”を刺激し、呼び覚まし、会場を後にするときには街の風景や音が違って感じられるかも。特別な時間を過ごしたい方は、この2日間をお忘れなく。レナード・スラットキン(指揮) デトロイト交響楽団アメリカン・サウンドの魅力を存分に文:飯尾洋一7/16(日)14:00 ザ・シンフォニーホール 問 カジモト・イープラス0570-06-99607/17(月・祝)15:00 文京シビックホール 問 シビックチケット03-5803-1111http://kajimotomusic.com/他公演7/15(土)豊田市コンサートホール(0565-35-8200)、7/19(水)東京オペラシティ コンサートホール(国際音楽祭NIPPON)(カジモト・イープラス0570-06-9960)、7/20(木)福井県立音楽堂ハーモニーホールふくい(0776-38-8282) 1914年設立のアメリカ屈指の伝統を誇るデトロイト交響楽団が、19年ぶりの来日を果たす。指揮は2008年より音楽監督を務めるレナード・スラットキン。オーケストラから最良のサウンドを引き出すことにかけては定評のある名匠だけに、現在のデトロイト交響楽団の実力を知る好機が訪れた。 うれしいのは彼らならではのプログラムが組まれていること。ひとつはオール・アメリカン・プログラム(7/17)。バーンスタインの《キャンディード》序曲、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」、そしてコープランドの交響曲第3番。まさに“ベスト・オブ・アメリカ”とでもいうべき作曲家が並ぶ。とりわけコープランドの交響曲第3番が聴けるのは貴重。アメリカのオーケストラとして、自国が生んだ傑作を世に広めようという気概が伝わってくる。 ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」で共演するのは、ジャズ・ピアニストとして活躍する小曽根真。この曲のソリストにこれ以上ふさわしい人もいない。実はスラットキンは「ニューヨークのブルーノートでも何度も聴いている」というほどの小曽根真ファンなのだとか。 もうひとつのプログラムではバーンスタインとガーシュウィンの同作品に加えて、現代の作曲家C.マクティーの「ダブルプレー」とチャイコフスキーの交響曲第4番が演奏される(7/16)。この楽団の柔軟性とパワーを堪能できそうだ。小曽根 真 ©Yow Kobayashi束芋 ©Kazuto Kakurai「そして月は荒れた寺院に落ちる」の映像より ©Tabaimo courtesy of IMO Studioパスカル・ロジェ ©Nick Granitoレナード・スラットキン ©Niko Rodamel

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