eぶらあぼ2017.7月号
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32©Marco Borggreve今井信子・夢 第5回 ヴィオラ・クァルテット9/24(日)14:00 紀尾井ホール問 AMATI 03-3560-3010 http://www.amati-tokyo.com/他公演9/16(土)岡山/大原美術館(くらしきコンサート086-422-2140)9/18(月・祝)飯田文化会館(0265-23-3552)9/19(火)大阪/ザ・フェニックスホール(06-6363-7999)今井信子(ヴィオラ)ヴィオラだけのアンサンブルによる音色の妙取材・文:オヤマダアツシInterview シンプルながら、深い世界を想起させるシリーズ・タイトル『今井信子・夢』。これまでも『ヴィオラスペース』をはじめ多くのエキサイティングな企画でヴィオラの可能性を追求してきた今井信子だが、このシリーズもまたチャレンジングなプログラムを続けてきた。シューベルトの「冬の旅」を、俳優・小澤征悦の語りを交えて演奏した前回(第4回)が記憶に残っている方もいらっしゃるだろう。 「シリーズ名が『夢』ですから、私が企画をして、わがままを実現しているようなコンサートなのです。楽器を弾いていることが楽しくて仕方がありませんし、それが仕事のモチベーションになっていますので、まだまだいろいろなアイディアを実現していくつもりです」 全10回が予定されている『夢』シリーズの5回目は、今井と3人の仲間たちによるヴィオラだけのアンサンブルだ。多くのヴィオリストを知り、多くの生徒をもつ今井が「この3人なら!」と選んだ顔ぶれだ。 「それぞれの個性も違いますけれど、この4人で演奏したら理屈ではなく絶対にうまくいくし、楽しいだろうなという確信がありました。ニアン・リウは上海でヴィオラのフェスティバルをやっている、今や中国ヴィオラ界のリーダー的存在。ファイト・ヘルテンシュタインとウェンティン・カンは私の生徒でしたが、常に意欲的でプロフェッショナル。繊細な音が素晴らしいファイト、芯が強い音楽をするウェンティンという対比なども含め、この4人だからこそ生まれる音楽があるはずです」バルトークの音楽はハンガリー言語そのもの 今や世界中で弾かれるようになった野平一郎編曲によるJ.S.バッハの「シャコンヌ」(ヴィオラ四重奏版)、アレンジャーとしても注目されるヴィオリスト、小早川麻美子の編曲によるピアソラ「タンゴの歴史」(抜粋)やダウランド「もし私の訴えが」など、プログラムは多彩。 その中でも注目したいのが、バルトーク「44の二重奏曲」だ。今井とウェンティン・カンはブダペストでバルトークの民族的な側面に触れ、彼の音楽に対する印象も演奏も大きく変わったとのこと。 「特に2つのヴァイオリンのために書かれたこの作品を勉強したかったのです。バルトークが録音した農民たちの歌を聴かせていただいたり、ムジカーシュというグループのメンバーと交流しながら、やはり彼の音楽は頭に強いアクセントがあるハンガリーの言語そのものだと確信し、それを誇張せずに演奏することであの味わいが出るということもわかりました。ヴィオラで演奏する場合、通常は原調から5度下げて演奏しますけれど、今回は原曲の本質を損なわないよう移調せずに演奏します」 今井はこのような小品に魅力を感じるという。 「私自身はこういった、歌い回しが洒落ていたり、独特の甘さや静けさがあったり、センチメンタルだったり、いろいろな感情を表現できる小品などが好きですね。甘くて切ないクライスラーの曲などにも魅力を感じますし、ヴィオラの多彩な音色をみなさんに聴いてもらえるような素敵な曲を、これからも探していきます。何が出てくるかを楽しんでいただける、玉手箱みたいなシリーズですから」 4人のヴィオリストが、組み合わせを変えるなどして演奏する今回のコンサートは、音色の妙をじっくりと味わえる大切な時間になるはずだ。

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