eぶらあぼ2017.7月号
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25霧島国際音楽祭は“アジアのポート”として良い音楽を発信し続けます取材・文:山田治生 写真:藤本史昭 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターであったゲルハルト・ボッセの提唱で始められた霧島国際音楽祭は、今年で38回目を迎える。マスタークラスとコンサートからなり、その講師には世界的なアーティストが招かれ、受講生も日本だけでなくアジアを中心とした海外の若手演奏家も集う、本当の意味での国際的なフェスティバルに発展した。 指揮者・海老原光は、2011年からこの音楽祭に参加している。彼は鹿児島市出身。鹿児島ラ・サール中学・高校で学び、東京芸術大学を卒業した。 「昔は霧島高原だけで行われている音楽祭というイメージだったのですが、ここ10年くらい、鹿児島市の人たち、子どもたち、アーティスト、オーケストラとの結びつきが強くなり、市内の演奏会場が増え、県全域の人たちが“自分たちの音楽祭”と認識してくれるようになりました。毎年、アーティストたちが鹿児島に帰ってきてくれるようで、彼らにとってもこの音楽祭が故郷のようになっているのが鹿児島出身者としてはうれしいですね」 海老原の音楽活動の原点は鹿児島にある。地元のMBCユースオーケストラでヴァイオリンを弾いていた。このユースオーケストラでは5年先輩に下野竜也がいて、下野はトランペットを吹いていた。 「下野さんは、昨年、キリシマ祝祭管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲全曲演奏を完結させ、一旦音楽祭を“卒業”という感じですが、鹿児島の方ですから、音楽祭との関係はずっと続いていくと思います」 今年、海老原は、8月3日の姶良市文化会館 加音ホールでのコンサートで指揮とトークを務める。曲はヴィヴァルディの「四季」(全曲)ほか。川久保賜紀、成田達輝、神谷未穂、リ・イーチンがソロを弾く。オーケストラは、ヴィオラの篠﨑友美、チェロの西谷牧人、コントラバスの吉田秀ら音楽祭メンバーと地元の音楽家たちとで特別に編成される。 「川久保さん、成田さん、神谷さん、リさんの4人という、この機会じゃないと集まらないフェスティバルならではのソリストたちです。トークを入れると客席との距離を縮めることができるので、曲目解説をしたり、ソリストたちにインタビューをしたりしようと思っています」 音楽祭のメインというべき、キリシマ祝祭管弦楽団の演奏会を、今年は秋山和慶が振る(8/2)。プログラムは、シューマンのチェロ協奏曲(独奏はこの音楽祭の音楽監督である堤剛)、ブラームスの交響曲第2番ほか。 「今年は、初めて、秋山先生がいらっしゃるので、新しい形でのキリシマ祝祭管弦楽団が楽しみです。弦楽器はコンサートマスターや首席奏者揃い。うしろのプルトまで全員が全力で弾く凄いオーケストラです」 「他にも、テノールの錦織健さんのリサイタルや、ピアノの三舩優子さんがシルク・ドゥ・ソレイユにいたフィリップ・エマールさんとパントマイムや朗読を交えた素敵なプログラムを披露するのも楽しみです。鈴木優人さんのザビエル教会でのコンサートも忘れてはいけません。鹿児島は、フランシスコ・ザビエルが上陸して日本に最初にキリスト教が伝わった街なのです」 また、世界的ソプラノ、アンドレア・ロストがコンサートで歌い、マスタークラスの講師を務めるのも注目される。 「ロストさんは、2年前も音楽祭に来てくださったのですが、今回初めてマスタークラスをひらきます。10年ほど前、アンナ・トモワ=シントウさんが来ていた頃の、“声の霧島”の伝統が復活するのか期待しています」 エリソ・ヴィルサラーゼやダン・タイ・ソンは一昨年に続いて、コンサートとマスタークラスで活躍する。 「ヴィルサラーゼさんやダン・タイ・ソンさんもいらっしゃいますが、韓国や中国のアーティストもたくさん参加するのがこの音楽祭の特徴となっていて、霧島はアジアの“音楽ポート”の一つとして発信を続けています。中心会場である、『みやまコンセール』の建物は、船をイメージしていて、霧島からアジアへ、世界へと船出していくという意味がこめられています。霧島国際音楽祭は、ここに来ればいつも良い音楽が聴けるという安心感と、新しいものに出会えるという意外感のバランスがすごく良いと思います」第38回 霧島国際音楽祭7/19(水)~8/6(日) 霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)、宝山ホール 他問 ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530※音楽祭の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.kirishima-imf.jp/Information

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