eぶらあぼ2017.7月号
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182CDCDSACDCDめぐる季節と散らし書き 子どもの音楽/高橋悠治ムソルグスキー:展覧会の絵/松田華音マーラー:交響曲第2番「復活」/ユロフスキ&ロンドン・フィルアルバムの一葉/小髙根眞理子パーセル:組曲第7番ニ短調/L.クープラン:シャコンヌ ト短調/高橋悠治:散らし書き/ジョン・ケージ:四季(ピアノ版)/バルトーク:10の易しい曲/サティ:コ・クオが子どもの頃(母のしつけ)/ウェーベルン:子どもの曲 他高橋悠治(ピアノ)プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」から10の小品ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」松田華音(ピアノ)マーラー:交響曲第2番「復活」ウラディーミル・ユロフスキ(指揮)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団・合唱団アドリアーナ・クチェロヴァ(ソプラノ)クリスティアンヌ・ストーティン(メゾソプラノ)クライスラー:フランクールのスタイルによるシチリアーノとリゴードン/ワーグナー:アルバムの一葉(ロマンス)/R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:無伴奏ソナタ第2番 他小髙根眞理子(ヴァイオリン)長尾洋史(ピアノ)収録:2017.2/24、浜離宮朝日ホール(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4010 ¥3000+税ユニバーサルミュージックUCCG-1768 ¥3000+税収録:2009.9/25-26、ロンドン(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25935~6(2枚組) ¥3000+税ディスク クラシカ ジャパンDCJA-21038 ¥2500+税ふらりと入ってきた風来坊が、指先から気まぐれのように紡ぎ出すその音符に乗せられて、聴き手は時代も地域も自在に飛んでいく。パーセルとクープランはテンポがいい感じで揺れていて、何とも心地よい。でもこれにチューニングしてしまったら、あなたは術中にはまっている。高橋の「散らし書き」は書法はまるで違うのに、同じように揺れている。ケージの「四季」はシンプルでクリア。そこからバルトークが民族音楽に注いだ眼差しを抜けて、サティ、ブゾーニ、ストラヴィンスキーが子どものために書いたシンプルな世界へとたどり着く。しかし最後はやはりウェーベルンで“脱臼”だ。不思議な音楽会の記録。(江藤光紀)6歳でロシアに渡り、18歳でドイツ・グラモフォンから鮮烈なデビューを果たした松田華音。約2年7ヵ月の時を経て、待望のセカンドアルバムがリリースされた。得意のロシアものを選曲。プロコフィエフの「『ロメオとジュリエット』より10の小品」は歯切れ良いタッチで物語性豊かに表現される。ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は明暗の機微をすっきりと鮮やかに伝える。端正ながら勢いのある演奏は、ジャケットに映し出された松田の真っ直ぐな視線そのものだ。申し分ないテクニックに裏付けされた凛々しい美学を感じさせる、完成度の高い一枚。(飯田有抄)輸入盤では既発売のユロフスキ&LPOの「復活」が国内盤(SACDハイブリッド仕様)で登場。これは表現のコントラストが非常に大きいユニークな名演である。第1楽章冒頭での速いテンポによる非常に攻撃的なトレモロと低弦のアタック、展開部の「モルト・ペザンテ」以降の極度に遅いテンポによる巨大な表現。対照的に第2楽章の穏やかさ。テンポの遅さも際立つ(特にピチカートによる主部の3度目の回帰以降)。第3楽章冒頭でのティンパニ強打も凄まじいが、終楽章がまた緩急自在な表現で唸らされる。ややあざといまでにマーラーの分裂的な様相を提示してくるのだ。(藤原 聡)艶やかな音色や優雅なヴィブラート、自然なポルタメント遣いが、かつての巨匠ヴァイオリニストたちを想起させる。小髙根眞理子は、ウィーン国立音楽大学で名匠ギュンター・ピヒラーに学び、帰国後は「東京ゾリステン」に在籍する一方、ソロや室内楽でも活躍。当盤には、イザイの無伴奏やR.シュトラウスの名ソナタの熱演に加えて、19世紀ドイツのヴァイオリニスト、アウグスト・ウィルヘルミがワーグナーのピアノ作品から編曲したタイトル曲はじめ、現在ではステージで聴く機会の減った小品も。その滋味あふれる好演は、小髙根から過去の巨匠たちへのラブ・レターにも思えてくる。(笹田和人)

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