eぶらあぼ2017.7月号
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180CDCDCDCDパッヘルベルの幻影/佐藤祐介マーラー:交響曲第4番/山田和樹&日本フィルフレンチ・オーボエの飛翔/中村あんり岸田 繁「交響曲第一番」初演/広上淳一&京響パッヘルベル:アポロンの六弦琴/伊藤巧真:散華/中堀海都:パッヘルベルの夢/平山 智:コラール前奏曲「暁の星はいと麗しきかな」佐藤祐介(ピアノ)マーラー:交響曲第4番山田和樹(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団小林沙羅(ソプラノ)C.シューマン:3つのロマンス/ラヴェル(C.シュミット編):「クープランの墓」より/プーランク:オーボエ、ファゴットとピアノのためのトリオ/シューマン:春の夜 他中村あんり(オーボエ)斎藤雅広(ピアノ)霧生吉秀(ファゴット)岸田 繁:Quruliの主題による狂詩曲、交響曲第一番、管弦楽のためのシチリア風舞曲、京都音楽博覧会のためのカヴァティーナ広上淳一(指揮)京都市交響楽団録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9010 ¥2800+税収録:2016.1/30、Bunkamuraオーチャードホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00624 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7838 ¥2500+税収録:2016.12/4、ロームシアター京都(ライヴ)ビクターエンタテインメントVICC-60944 ¥2500+税パッヘルベル晩年の鍵盤作品「アポロンの六弦琴」と、ピアニストの佐藤祐介の委嘱による同作曲家にちなんだ気鋭の現代作曲家の3作品を交互に並べる。ヘクサコードによるパッヘルベル作品はレアな佳作だが(これを選んだ理由はブックレットに記載)、本作品の第1曲目を解体&再構成した静謐な伊藤巧真(たくま)の「散華」、「パッヘルベルになりきり書いて欲しい」と佐藤が依頼したという中堀海都のいささかパロディックな「パッヘルベルの夢」、そしてパッヘルベルも用いたコラール「暁の星はいと麗しきかな」による平山智の同名曲。何がどうお互いに“響き合っている”のかを感知する愉しみ。(藤原 聡)山田和樹&日本フィルのマーラー・シリーズのライヴ録音第3弾。ゆったりしたテンポで運ばれる、4番としてはスケールの大きな音楽であり、“天上”よりも“生の脈動”を感じさせる点が新鮮だ。第1楽章は、落ち着いた流れの中で、しなやかな音楽が展開。明確なリズムと各パートの精妙なバランスも光る。第2楽章は特に聴きもの。各楽器がくっきりと絡み合いながら、陶酔的な美をもたらす。第3楽章は、沈鬱すぎず、雄弁な広がりが現出。第4楽章は第1楽章同様だが、小林沙羅の独唱を含めて表現の幅がより大きい。各ソロも秀逸だし、鮮明な録音も特筆もの。 (柴田克彦)サキソフォニストとして将来を嘱望され、パリ国立高等音楽院に首席入学を果たすも、現地で古典音楽に傾倒、オーボイストへ転向したという中村あんり。そんな異色の経歴が物語る通り、きっと、彼女は自身の感性を大切にする人に違いない。瑞々しい感性がほとばしるデビュー盤。プーランクのソナタやトリオなど、難曲も軽々と吹き切る一方、ちょっとした音の擦れなども、滋味として音楽へ採り込む大胆さも。フランス特有のエスプリやシューマン夫妻の詩情も余さず掬い取り、オーボエは翼を得たかのごとく、大空へと羽ばたいてゆく。共演の斎藤雅広の洒脱な味わいも大きな魅力。 (寺西 肇)ロック・バンド「くるり」のシンガー&ギタリスト、岸田繁が初めて書き下ろした交響曲の世界初演ライヴ。「くるり」は1998年にデビュー。数々のヒットを飛ばし、CMにも彼らの楽曲が使われているので耳にした方も多いかもしれない。岸田はウィーンのクラシック奏者と「くるり」のアルバム『ワルツを踊れ』を制作するなど、クラシックにも造詣が深い。この交響曲では、岸田にインスピレーションを与え続けているであろうクラシック作品のエッセンスを凝縮した楽想が、岸田独自の感性により展開される。5楽章構成で演奏時間50分を超える大作だ。広上&京響の熱演も胸を打つ。(大塚正昭)

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