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48ミヒャエル・ザンデルリンク(指揮) ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団伝統の尊重と演奏の可能性を追求文:飯尾洋一サントリーホール2017 リニューアル記念 Reオープニング・コンサートサントリーホールの新たな幕開けを告げるロッシーニの大作文:朝岡 聡7/2(日)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール7/4(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp/9/1(金)18:00 サントリーホール問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017 http://suntory.jp/HALL/ ミヒャエル・ザンデルリンクが2011年以来首席指揮者を務めるドレスデン・フィルとともに来日する。ミヒャエル・ザンデルリンクといえば旧東独の名匠クルト・ザンデルリンクを父親に持ち、二人の兄トーマスとシュテファンも指揮者というサラブレッド。ドレスデン・フィルは1870年代創立の老舗で、ミヒャエルの言葉を借りれば、「暗くて豊かなドレスデン・サウンド」を持ったオーケストラである。 ドイツの新世代の旗手と歴史あるオーケストラのコンビが、どんなサウンドを生み出すのかに注目したい。ミヒャエルは決して伝統にあぐらをかくタイプの指揮者ではない。以前「伝統とは諸刃の剣」と語っていたように、伝統を尊重したうえで常に作品の演奏の可能性を追求し、慣れ親しんだ名曲に対しても意欲的に取り組む。 今回のプログラムはそんな同コンビの魅力を十分に伝えるものといえる。 2017年8月までの改修工事を終え、サントリーホールの新たな幕開けとなる9月1日に、『Reオープニング・コンサート』が開催される。この日のメインプログラムは、ジュゼッペ・サッバティーニが振るロッシーニ「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」。フル・オーケストラと大合唱、オルガンの響きを楽しめるロッシーニの名作だ。管弦楽は東京交響楽団、合唱は東京混声合唱団とサントリーホール オペラ・アカデミー。 ロッシーニは晩年に、音楽的に自分のものをしっかり書き遺したいという思いがあった。それも流行にとらわれないミサ曲という形式の中で。それが結実しているのが、この「ミサ・ソレムニス」なのだ。 前半はソリストたちの声と合唱の迫力を楽しめるのに対し、後半の中盤、オルガン独奏のある「宗教的前奏曲」からは、落ち着いた神々しさのようなものが感じられ、荘厳ミサ曲の“荘厳”という7月2日の川崎公演は、小川典子の独奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とブラームスの交響曲第1番をメインに据えた王道のドイツ音楽プロ。7月4日の東京公演ではベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と、言葉がよみがえってくる。 来年はロッシーニ没後150年。メモリアル・イヤーに先駆けて、晩年の名作をオリジナルの小編成ではなく、ロッシーニ自身の手によるオーケストラ・バージョンで演奏することは、とても意義がある。オルガンや合唱が加わって、新しいサントリーホールでの“響き”を観客とともに会場全体で包む。こういう場所で演奏されてこそ、「ミサ・ソレムニス」の本当の響きの価値を楽しむことができるといえるだろう。 オペラ歌手から指揮者に転身し、サントリーホール オペラ・アカデミーで若手育成に情熱を注ぐマエストロ・サッショスタコーヴィチの交響曲第5番という、ふたつの「第五」が並べられるのが興味深い。両曲の関係性という点でも示唆的であり、また聴きごたえ十分の交響曲を2曲も聴けるという「お得感」もうれしい。バティーニが、オーケストラとソリストたち、合唱をどのように導いていくのか、こちらもとても楽しみだ。小川典子 ©Milena Mihaylovaジュゼッペ・サッバティーニ ©Suntory Hallミヒャエル・ザンデルリンク ©Nikolaj Lund

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