eぶらあぼ2017.5月号
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72作曲家・加藤昌則クラシック入門講座 クラシックのとびら第1回 室内楽 5/25(木)19:00 第2回 独奏(ソロ) 9/14(木)19:00 文京シビックホール(小)問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp/※講座が入場無料になる「プレミアム・セット券」などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。加藤昌則(作曲/ピアノ)新感覚の音楽レクチャー、いよいよ東京で開講!取材・文:高坂はる香Interview 今、加藤昌則のクラシック入門講座が人気だ。神奈川で始まった講座は、愛知、長野、静岡、三重、富山へ。そしてこの度、ようやく東京でも開催される。 「作曲家として学んできた楽曲についての知識、ピアニストとして音を出したときの演奏効果の理解やステージに立つ心理、その両方を知るからこそ伝えられることがあります。もともと音楽家が身近にいない環境で育ち、何もわからないところから自分で情報を求めて歩んできたので、初心者に何が必要なのかもわかります。それをなるべく楽しく届ける方法を日々考えています。…とはいえ、この講座にこれほどの需要があるとは自分でも驚きです! 最近、講師の仕事は喉が大事だからと、外出時はマスク必須なのです(笑)」 軽妙な話術に加え、なにより新感覚のアプローチとわかりやすさが評判だ。 「例えば第1回のテーマは室内楽。僕自身、10代の頃は室内楽に興味がなかったのですが、自分で演奏するようになり、何がおもしろいのかを理解できた。そのため以前の講座では、楽器が弾けない方たちに出てきてもらい、お互い声をかけずに呼吸で一音を合わせる興奮を体感していただきました。好評でしたね。こういう瞬間がたくさんあるのが室内楽なのだと理解すると、聴き方が変わります。実際、シューベルトやベートーヴェンなどの室内楽作品は特定の演奏者向けに書かれたものも多い。たとえば、メンバーのヴィオラが下手だからそのパートが簡単になっているとか、そんなことをわかって聴くと面白いですよね」 そして第2回のテーマは「独奏」。 「普段伴奏を要するような楽器の“無伴奏”作品は、音楽として成立させることが簡単ではありません。また、奏者が一人で舞台に立つ孤独や、世界観による表現の違いを意識すると、違う聴き方ができるようになるでしょう。講座の内容は近々の演奏会と連動しているので、僕が提示した情報で少しでも感度が磨かれ、生演奏をより楽しんでいただけたら」 そして「ぶらあぼ」読者のようにすでにクラシックに詳しい方なら、クラシックの世界に誘いたい誰かと一緒に受講するのもおすすめだ。 「受講者のレベルがさまざまでも、みなさんに何かを得て帰ってもらうことを心がけています。リアクションを見ながら、内容を調整するんです。寄席に行くのが好きなので、反応を見て話すテクニックを参考にしています。話芸のプロを目指しているわけではありませんが(笑)。現代のクラシック界で活動していて、演奏家から間口を広げる努力が必要だと感じている中、これは自分にしかできないことだと使命感をもって臨んでいます」8/2(水)19:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/東京文化会館《響の森》vol.40 コバケン 真夏のシンフォニーマエストロ渾身の熱き響き文:林 昌英小林研一郎 ©満田 聡 「暑い時には熱いものがいい」という言葉を、音楽で実現してしまう——そんな公演が、夏真っ盛りの8月開催の「東京文化会館《響の森》」である。指揮は小林研一郎で、熱い指揮ぶりと燃える演奏で知られる彼の異名は「炎のコバケン」。演目はベートーヴェンの「エグモント」序曲と交響曲第5番「運命」、ドヴォルザークの交響曲第8番。いっさい涼をとらず、容赦なく熱い曲の代表作がならぶのがいい。そして、この公演タイトルは「コバケン 真夏のシンフォニー」。その公演名に違わず、どれをとっても灼熱の要素満点。 …と、“熱”ばかりを強調してきたが、近年の小林の表現は熱気のなかに味わい、円熟味が増していて、この公演も懐深く厚みのある演奏で作品の真価を伝えてくれるはず。この会場を本拠とする東京都交響楽団も、指揮者の意図を十全に汲み取った演奏に長けており、最良の意味での“熱演”が期待できる。8月こそ熱い演奏を浴びて夏バテも吹き飛ばしたい。水分補給は忘れずに。

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