eぶらあぼ2017.5月号
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53帰国10周年 赤松林太郎ピアノリサイタル ~麗しの五月、つぼみ開く頃~5/24(水)19:00 ヤマハホール問 東音企画03-3944-1581 http://rintaro-akamatsu.com/赤松林太郎(ピアノ)節目のコンサートに“原風景”のシューマンを取材・文:宮本 明Interview 神戸大学で音楽学を学んだのち、パリに渡りエコール・ノルマルでフランス・クリダに師事した赤松林太郎。演奏にも教育にも旺盛な活動を展開し、彼の演奏と人柄に接した人の多くがその圧倒的な存在感と際立った個性を語る、注目のピアニストだ。 10年前にパリから帰国後も、ハンガリーなどヨーロッパと日本を頻繁に行き来して活動しているが、昨年から洗足学園音楽大学の客員教授に就任したこともあり、東京での定期的な自主コンサート開催に本腰を入れ始めた。 「毎回テーマを定めて、自分の生きている様子を音にするというのが私たちの仕事です。丁寧にやっていきたいなと思っています」 5月の帰国10周年リサイタルは、シューマン「春の歌」、ベートーヴェン「テンペスト」、ワーグナー「ジークムントの春と愛の歌」(タウジヒ編)、「イゾルデの愛の死」(リスト編)、シューマン「花の曲」と「クライスレリアーナ」という構成。パリで学んだピアニストによるドイツ・プロだ。 「クリダ先生に師事したのは、やはり先生が最も得意としたリストを学びたかったからですが、同時にジャン・ミコー先生にもついていました。ミコー先生はフランス人でありながら、シャルル・ミュンシュと似てドイツものがメインなのです。だから私も、どちらかというとドイツ音楽にシンパシーがあります」 プログラムのテーマは“シューマンをめぐる情景”だという。法学部に進んで外交官を志すつもりだった赤松を最終的に音楽に専念させた体験が、アルゲリッチやネルソン・フレイレが審査員を務めた2000年のクララ・シューマン国際ピアノ・コンクール第3位入賞だった。そこで弾いたのがシューマンの協奏曲。その意味でシューマンはキャリアの原風景だと語る。 「審査員に、テクニックはパーフェクトだったが曖昧さがないと言われました。ポエジーがなくてメカニカルだということ。その意味を当時の私はわからなかったんです。つまり、シューマンといえばハイネの世界に繋がりますよね。ピアニストがつくる“拍”では表せない、歌っている人の呼吸や時間感覚が必要なんですね。今回はそんなポエジーをプログラムに練りこみたいと思いました。しかもどの曲も、のちの時代に語りかけるポエジーって言ったらいいのかな。私たちに、あるいは私たちの歴史に対して暗示のように働きかけるというプログラム。けれん味はないですが、私が作品に対してじっくりと語りかけるのを、一緒に聴き遂げてほしいと思います」5/13(土)14:00 王子ホール問 スタインウェイ・ジャパン03-5251-6550http://www.steinway.co.jp/スタインウェイ・ジャパン設立20周年記念コンサート新世代とベテランが彩るアニバーサリー公演文:高坂はる香清水和音 ©Mana Miki スタインウェイ&サンズの日本法人として1997年に設立されたスタインウェイ・ジャパン。設立20周年を迎えた今年、5月13日に記念コンサートを行い、そのチケットは一般にも80枚限定で販売される。 当日は第1部に、2011年から開催されている「スタインウェイ・コンクール in Japan」で過去に大賞を受賞した、山口哉、波田紗也歌、堀内龍星というフレッシュな10代が登場。のびのびした個性を尊重する同コンクールで選ばれた彼らならではの、三者三様のキャラクターが光る音楽を届ける。 第2部では、スタインウェイ・アーティストの清水和音が、ショパンのバラード全4曲を演奏。ピアノによる表現を追求したショパンが編む物語詩で、ベテランの腕が、スタインウェイならではの輝かしい音を聴かせる。 この日には、20周年を記念して日本向けに作られた特別なピアノも披露される予定。優れたピアノを供給し続けるスタインウェイ・ジャパンの節目を彩るイベントは、見どころ、聴きどころたっぷりとなりそうだ。

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